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  3. 国民皆保険制度は本当に崩壊するのか?

先日、「自費リハ」等を含む公的保険外・医療周辺サービス実態についての調査報告書が日本医師会総研より提出され¹⁾、ヘルスケア領域やセラピストの一部で話題になりました。私の知人には「日本の保険制度(国民皆保険制度)は無くなると思うんです!だから準備をして保険外に行きます!」と宣言して準備を始めた人もいます。

しかし、そもそも国民皆保険制度は本当に崩壊するのでしょうか?その定義は何なのでしょうか?今回は主に国民皆保険制度に関して、これまでの政策や事実を整理してみましょう。

目次

    国民皆保険制度は本当に無くなるのか?

    私は「国民皆保険制度が無くなるという状態」を「国民皆保険制度が崩壊し使えなくなること」と捉えています。このように考えた場合、冒頭で述べた「日本の国民皆保険制度は無くなると思う」という知人の意見について、現状では賛成できないスタンスをとっています。

    確かに、国民皆保険制度に課題はあるものの、すぐに無くなるとは言い切れないし、実はこのテーマに関しては以前から扱われているテーマでもあります。今回は私の考える国民皆保険制度(無くなるとは考えていない理由)に対して3つの理由を挙げ解説します。

    【理由1】そもそも医療崩壊と国民皆保険制度の崩壊は異なる

    以前のコラム【医学×経済学×経営学の視点から『医療はサービス業なのか?』を考える】 で解説したように、医療とは提供体制やシステム全体を指すというものでした。それに準ずると、医療崩壊とは「医療の提供体制が崩れること」であり、国民皆保険制度の崩壊と密接に繋がる部分はありつつも、完全一致するものではありません。

    例えば、新型コロナウイルスで外来診療が出来ない状況や、過疎地で医師が不在となっている地域は医療崩壊と呼べる状況でありますが、国民皆保険制度の崩壊とは少し違うと考えます。現に、そのような状態であっても、国民皆保険制度自体は存続しているわけです。

    【理由2】過去に提唱された崩壊理論が背景にある

    国民皆保険制度の崩壊について公の場で初めて話題に挙げられたのは、おそらく1983年(昭和58年)に当時の厚生省保険局局長である吉村仁氏が発表した「このまま医療費が増え続ければ、国家がつぶれるという発想さえ出てきている。これは仮に医療費亡国論と称しておこう」という話でした。これは医療費亡国論²⁾と呼ばれています。また、吉村氏は医療費における公負担分を抑制し、自由診療を促そうとしたともいわれています。
    ※このことからも【理由1】の医療崩壊と保険制度の崩壊は異なるものともいえます。

    この時の流れを汲んで、医療費は抑制へと進んでいきました。後には「透析亡国論」「オプシーボ亡国論」と高額な医療費のかかる処置に対して「このままだと医療費で国が亡くなる」とするような一部のメディアの論調なども見受けられるようになります。

    ただこれらについては後から価格などが適正化されたので、試算通りの伸びは示していないことが多いです。高額ではあるが、国民皆保険制度の破綻までは影響を及ぼしていません。現に国民皆保険制度が継続していること自体、その証拠になりえるのではないでしょうか。

    【理由3】構造を変えれば存続可能である

    これは少しずるい答えのように感じるかもしれませんが、そもそも国民皆保険制度の構造を変えてしまえばなくなることはありません。例えば、下記のような案が考えられます。

    ①医療費の自己負担割合を上げる
    実際、過去には現役世代の自己負担がゼロあるいは1割の時代がありました。国民皆保険制度が崩壊するくらいならまだ上げて存続させるほうが自然です。

    ②適応範囲を絞る
    在院日数制限をさらに短くする、適応疾患を減らしていく。

    ③介護保険制度を活用する
    財源が国民皆保険と異なり、40歳以上の被保険者のほかに都道府県と市町村が1/4ずつ負担しています。

    ④民間の保険制度を強化する
    イデコやNISAのように税制の優遇などの手段で加入を促して、公費でないカバーにシフトする手があるでしょう。

    私がパッと考えつくだけでもこれらの手段があり、実施すればまだまだ国民皆保険制度を存続させることが出来ると考えられます。むしろこういった対策を段階的に使わずにして、突然に国民皆保険制度が崩壊するとは考えにくいです。崩壊とはもっと予兆があったり、上記の手段を実施した後のはずです。

    おわりに

    以上の3点から、私は「国民皆保険制度は完全には崩壊しない」と考えています。ただ、医療を受ける際に何らかの制限が厳しくなったり、今以上に負担額が大きくなる可能性は十分にあると考えています。…というかこれはある程度高い可能性だと思っています。

    これは、あくまでもGDPが大きく崩れず、国債を発行して公費で国民皆保険の赤字分をカバーすることを続けられる前提での話です。これが出来なくなると…医療だけでなく、日本が大変な状況に陥っている気がします。

    自分自身何ができるか?あるいはどう生きるか?についてしっかり考えることがより重要になってくると思います。

    【参考文献】
    1)令和元年度商取引・サービス環境の適正化に係る事業(公的保険外・医療周辺サービス実態調査)調査報告書(経済産業省HP)
    2)吉村仁「医療費をめぐる情勢と対応に関する私の考え方」,『社会保険旬報』,1424号 1983(昭和58年)3月,12-14頁

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