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  3. 意外と知らない胸郭のバイオメカニクスと実際の評価方法について

前回までで、Joint by jointの解説は終わりました。今回からは実践編に入っていきます。まずは胸郭可動域のチェック方法について記載していきます。エビデンスに基づくものから、筆者が実際の臨床や現場で用いているものまで紹介していきます。

目次

    はじめに

    前回までのコラムで、Joint by jointにおける胸郭・股関節の可動性及び腰部の安定性の重要性を記載しました。では、どのようにそれらをチェックしていけばいいのでしょうか?今回は胸郭可動域のチェック方法、それをより深く考察するための胸郭のバイオメカニクスについて記載していきたいと思います。

    エビデンスに基づくものから、筆者が臨床およびスポーツ現場で使用しているものまであります。実際に自分で体を動かしながら行っていただけばと思います。

    胸郭のバイオメカニクス

    以前記載した胸郭のコラムでは、胸郭の動きとそれによって生じる問題点を簡単に述べました。今回はより深く理解するため、胸郭の動きについてのエビデンスをまとめた論文1)の表を日本語訳でまとめました。

    これらの研究結果からわかることは、「体軸内回旋では胸郭の動きが50%以上を占め、特に下部の動きが大きい」、「回旋の際は側屈とのカップリングモーションが生じる」、「腕の挙上にも胸郭の動きが関わる」という3点かと思います。

    以前の胸郭コラムでお話した概要は、数々の研究結果からエビデンスとして構築されたものであることが読み取れます。

    また、この論文をまとめたLeeは胸郭をリングのように考えることで、どの関節がどのように動くのかを説明しています。

    図1の左図のように胸郭リングが前傾する場合は、椎間関節の上部が前傾し、肋椎及び肋横突関節では下方滑りが生じ、肋骨の前方への回旋が起こるように動くとしています。

    右図は胸郭リングの後傾を示しており、椎間関節の上部が後傾、肋椎及び肋横突関節では上方滑り、肋骨は後方への回旋が起こるように動くとしています。

    図2は胸郭リングの右回旋を示しており、回旋の際、椎間関節では小さな動きではあるものの反対側にそれぞれ並進運動が生じ、それに伴って肋骨には左前方回旋、右後方回旋の動きが生じることになります。

    つまり胸郭の可動域をチェックするためには単軸の動きを見るのではなく、「屈曲」「伸展」「側屈」「回旋」の全てを組み合わせて評価する必要があります。

    胸郭可動域を評価する自動運動検査

    ここからは僕が実際に普段の臨床や現場、またチームのメディカルチェックで行っている胸郭・脊柱の検査測定方法を紹介していきます。(※私はめんどくさがりなので、簡便ですぐに臨床で実践できる測定方法を厳選したつもりです笑。)

    ・Ott’s test:胸椎前後弯の計測

    Ott’s testはリラックスした状態で、第7頸椎から尾側へ30cmのところをチェックし、そこから体幹の前後傾を行って距離の変化を計測するものです。屈曲方向は2cm以上増大、伸展方向は1cm以上短縮がそれぞれ正常値(カットオフ値)とされています。

    ・上肢挙上位での側屈

    これは筆者が実際のスポーツ現場で行っている側屈の評価です。上肢挙上位とすることで広背筋などの側腹部の軟部組織が伸張位となり、制限因子が明確になりやすいです。

    競泳ではストリームラインという姿勢が基本になるので、ストリームラインでの側屈を行っています。これに関しては今後、選手の計測を行って知見を発表できればと考えていますので、また違う機会で報告させて頂きます。

    ・胸郭回旋:Trunk Rotation、Lumber Lock Rotation

    左図のTrunk Rotationは非常に有名な評価方法で、スポーツ現場でよく用いられています。方法は四つ這いで片方の手を頭部に置き、そこから肘を天井に向けるように胸をひねっていくようにします。このとき、肩の水平外転が出ないようにすること、また顔は一緒にひねっていくように指示します(顔の位置はそのまま下にして測定する方法もありますが、何を診たいのかを考えて使い分ければよいと思います)。

    ただ、Trunk Rotationの際は、骨盤が側方に偏位するなどの代償が出現しやすく、口頭指示を正確に行う必要があります。そういった代償を取り除きつつ、胸郭の回旋を測定する方法がLumber Lock Rotationです。

    Lumber Lock Rotationは正座した状態で、前腕を接地し、そこからTrunk Rotationと同様に回旋動作を行います。Lumber Lock Rotationは再現性が高い測定方法であることが報告されています²⁾。また筆者自身が昨年の肩の運動機能研究会でLumber Lock RotationはTrunk Rotationよりも代償が少なく、測定の精度が高いことを報告しました³⁾。

    上記に挙げた測定方法を駆使することで、胸郭可動域のどこの部分に制限があるのかを正確に評価することが可能です。

    上半身の動きの大部分は胸郭の影響を受ける

    胸郭は肩甲骨の動きにも影響を及ぼします。また視線を変えるときや方向転換の際にも頸椎と同じように回旋動作が生じるなど、上半身の動きの大半に大きな影響を生じさせます。そのため、高齢の方で亀背(とても猫背が強い人)などは視線を動かせる範囲も狭くなり、上肢の動きも阻害されていることが多いです。

    次回以降は、これまでに挙げた胸郭・股関節の可動性および腰部の安定性向上につながるための運動やストレッチを解説していきたいと考えています。

    参考文献
    1)Diane Gail Lee, Biomechanics of the thorax – research evidence and clinical expertise, Journal of Manual and Manipulative Therapy Vol23 No3, 2015
    2)K D Johnson et al, Reliability of Thoracic Spine Rotation Range-of-motion Measurements in Healthy Adults, Journal of Athletic Training Vol47 No1,2012
    3)髙山弘幹ら,競泳選手における胸椎回旋角度と肩痛との関連性,第16回肩の運動機能研究会, 2019

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