肩後方関節包のタイトネスは肩関節内旋動作や水平屈曲動作,結帯動作の制限に関与します.本記事では肩後方関節包にフォーカスを当てて機能解剖や組織学的特徴,そして臨床でどのように落とし込んでいけばよいのか?どのような介入をすればいいのか?そんな日々の臨床疑問を解決するヒントに繋がる内容となっております.

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肩関節包の伸縮性

まず肩関節包の伸縮性について解説していきたいと思います.肩関節包には約15%の伸縮性があると言われています1).

この15%という数値については詳細が記されていませんでしたが,上腕骨頭の平均が4-5㎝なので,およそ1㎝弱の伸縮性があると解釈しております.

そして,関節包のたるみのような構造をした腋窩陥凹は肩甲上腕関節の下方にあります.

このたるみは挙上に伴い伸張し,下制で緩みます.これは挙上動作を円滑の行うためには必要なたるみであると考えられています.

肩関節包により構成される関節腔の容積はおよそ30mlであるといわれています1).

大さじスプーンが1杯15mlですので,大さじ2杯分の容量があるということがわかります.

また関節腔の容積は反復性肩関節脱臼では大きくなり,凍結肩では小さくなります.

肩後方関節包の組織特性

肩関節包は筋や靭帯とともに不安定な肩甲上腕関節の安定化に寄与する組織です.

なかでも肩後方関節包は前方や上方,下方の関節包と比べて薄く2)3),剛性が小さく,伸張性に富んだ疎な緻密結合組織4)です.

疎な緻密結合組織は特性上,適切な肢位で伸張操作を行うことで可動域の拡大を図れる可能性があります.

肩関節後方関節包の伸張肢位

そもそも肩後方関節包はどのような肢位で伸張するのでしょうか?

今回は未固定解剖標本8肩を用いて,肩後方関節包を上部関節包,中部関節包,下部関節包に分け、その平均伸長率を検討した報告を紹介します.

測定肢位は肩甲骨面挙上0°,30°,60°,90°位内旋,屈曲60°位内旋,外転60°位内旋,伸展30°位内旋,そして水平屈曲位内旋の全8肢位で他動的に伸張し最終域にて10秒間保持する伸張操作を3回実施した際の関節包の平均伸張率は以下の通りです.

上部関節包は伸展30°内旋で3.74%の伸張,中部関節包は肩甲骨面挙上30°内旋で4.93%の伸張,下部関節包は肩甲骨面挙上30°内旋で5.93%の伸張を認めたと報告しています5).

これらの組織特性と後方関節包の各伸張肢位を理解した上で伸張操作や拘縮予防を行うことで従来の介入よりも効率的に可動域拡大を図れる可能性はありそうですね.

肩関節後方関節包の位置と筋肉の関係

 肩後方関節包は肩甲上腕腕節の後方に位置しており,その浅層を棘下筋や小円筋,下方を上腕三頭筋長頭,そして最も浅層に三角筋後部線維が位置し,肩関節の安定性に寄与しています.

なかでも小円筋と上腕三頭筋長頭の一部は肩後方関節包にも付着します6)7)8).

小円筋は筋線維の一部が腋窩陥凹の下方や関節包後下方部に直接付着するため,下垂位外旋運動時に関節包挟み込み防止や関節の静的支持機構の補助の役割を担っているとされています6).

上腕三頭筋長頭の一部の線維は関節窩結節下部よりも上縁の関節窩後縁に沿って関節包や関節唇に付着しています7).

したがって上腕三頭筋長頭の機能不全が間接的に肩関節後下方軟部組織の拘縮にも関与していることが考えられます.

 これらの報告を踏まえて,拘縮が生じてから可動域の拡大を図ることも大切ですが,拘縮を予防するという観点から痛みの伴わない範囲で小円筋や上腕三頭筋長頭の運動を行い関節包に対して適度な伸張操作を実施することが非常に重要であることがわかります.

おわりに

今回は” 肩後方関節包の伸張肢位と拘縮予防”というテーマで機能解剖や組織学的特徴,そして臨床への落とし込み方について解説させていただきました.

特に肩後方タイトネスは骨頭の前方変位の一因としても挙げられ,肩前面部痛とも関わりのある重要な組織です.

拘縮が生じてから可動域を拡大するだけでなく,“拘縮予防”としてより早期からアプローチしていくことが重要かもしれません.

本記事をきっかけに肩関節の機能解剖や運動学に興味を持っていただけると幸いです.

以上,肩関節機能研究会代表の郷間でした.

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【引用】
[1]佐志隆士,井樋栄二,秋田恵一:肩関節のMRI読影ポイントのすべて.改訂第2版.P22-23.2012 .出典 株式会社メジカルビュー社
[2] Itoi E , Grabowski JJ , et al.:Capsular properties of the shoulder.Tohoku J Exp Med 171:203-210,1993.
[3]Bey MJ ,Hunter SA,et al.:Structural and mechanical properties of the glenohumeral joint posterior capsule.J Shoulder Elbow Surg 14:201-206,2005.
[4]Bigliani LU,Pollock RG,et al.:Tensile properties of the inferior glenohumeral ligament.J Orthop Res 10:187-197,1992.
[5]泉水朝貴, et al. 未固定標本による肩関節後方関節包の伸張肢位の検討. 理学療法学 35.7 (2008): 331-338.
[6] 林 典雄,立木 敏和:後方腱板(棘下筋・小円筋)と肩関節包との結合様式について.理学療法学 第23巻第 8号 522〜527頁,1996.
[7] Hisayo Nasu,et al:An anatomic study on the origin of the long head of the triceps brachii.JSES.15;3(1):5-11,2019.
[8]杉本勝正ら:関節窩後下方の解剖学的研究-Bennett骨棘の成因について-.JSES.29;2:243-246.2005.

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