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  3. 何故、胸郭の可動性が大切なのか? ~可動性低下に伴って生じる障害とあわせて解説~

前回のコラムでは、Joint by joint theoryにおいて胸郭と股関節の可動性が重要であることを解説しました。では、なぜ胸郭の可動域は重要なのでしょうか?今回は胸郭の動きを復習しながら、可動性低下によって生じる障害について掘り下げていきます。キーになるのは『伸展』と『回旋』です!

目次

    前回コラム:
    「Joint by joint theoryを現場で活用しよう! 理学療法士とトレーナーの筆者私見も紹介!」

    はじめに
    ファンクショナルトレーニングにおいて、動きを出していく関節は『モビリティ関節』、安定性が求められる関節は『スタビリティ関節』であると前回のコラムで解説しました。今回はその中でも重要である胸郭の可動性を解説します。

    見落としがちな胸郭の動き

    胸郭の構成関節を大まかに分けると、胸肋関節・肋椎関節・肋横突関節になります(図1)。胸肋関節と肋横突関節は触れることで動きを確認することができます。

    胸郭は胸椎と肋骨で形成されて骨構造がしっかりしているため、動きは少ないイメージを持っているかもしれません。ですが、実際には胸郭はかなりの可動性を有しています。脊柱全体が125°回旋するときには頸椎90°・胸郭30°・腰椎5°となっており¹⁾、それを理解することが出来ます。なお、椎体の構造上、回旋は側屈を伴っています²⁾。

    また、胸郭伸展の際には胸郭上部の前後径や左右径が増大します。胸郭上部のBucket Handle Motion(図2)、下部のPump Handle Motion(図3)が適切に行われていれば吸気の際に横隔膜の作用によって胸郭が拡張し、体幹の「抗重力伸展:重力に逆らって伸展していくこと」を出現させます。


    呼気の際に横隔膜は弛緩しますが、腹横筋を始めとした体幹筋により内臓が押し上げられ抗重力伸展は維持されます。特に腹横筋などのローカルマッスルによる作用で体幹の姿勢保持を行うことを『姿勢コントロール』と私の中では定義しています。このことはまた次回以降のコラムで紹介しますね。

    胸椎伸展(体幹伸展)の際は肋骨間(特に前面)が広がり、かつ、椎間関節の回旋および側屈の制限になる靭帯(棘上靭帯や棘間靭帯、横突間靭帯:図4)や筋肉が短縮し、回旋可動域が大きくなります。逆に猫背の姿勢をとっている状態では、胸郭前面の短縮によって肋骨間が狭くなり、前述した靭帯や筋の緊張が生じます。それによって回旋可動域が小さくなってしまいます。

    実際に背筋を伸ばした状態と猫背の状態で体幹を回旋させ、比較してみてください。可動域に差が生じることを体で理解することが出来ます。

    以上より分かるのは、胸郭は回旋の可動域が大きく、そのためには伸展と側屈の動きも重要であるということです。

    スポーツ動作も日常生活動作も、前後左右の直線的な動きだけでなく、上下や回旋も加えた複合的な動作がほとんどです。胸郭の伸展と回旋が制限されることはあらゆる動作のパフォーマンス低下に直結するといえるでしょう。

    胸郭の可動性低下によって生じる障害

    胸郭の可動域が低下することによって様々な障害が生じます。ただ、運動器の障害において胸郭機能に着目した研究発表や論文はあまり多くないため、ここでは運動学や解剖学から考察した範疇のものを解説します。

    図5のように胸郭伸展が得られなくなると、上半身の質量中心(Center of math:COM)と各椎間関節との距離が離れてしまいます。その状態で姿勢保持をする場合、各椎間関節に付着するローカル筋(多裂筋や半棘筋、長短回旋筋など)への負荷は大きくなります。そこでスポーツ動作や日常生活動作を行うと、さらに負荷が増大し、グローバル筋(いわゆるアウターマッスル)を代償的に活動させるようになります。これが継続してしまうと、動作時は常にグローバル筋優位の状態となり、筋肉は緊張状態に陥いります。筋肉が過活動になると柔軟性低下を招くことは想像に難くないでしょう。

    また、胸椎伸展が得られなくなることで代償的な腰椎の伸展…つまり過剰な腰椎前弯を招くことにもなります。胸椎伸展が不足することで腹部の筋張力が得られにくく、かつ代償的な腰部筋の収縮によって相反抑制が生じてしまえば、高い負荷が生じた際には腰痛が発生してしまう…といったことも考えられます。

    さらに、胸椎伸展が生じないことで肩甲骨は相対的に後傾が生じにくくなります。そのため、肩関節の可動域制限もしくは肩甲骨前傾位のまま肩関節挙上を強制することで、肩峰下インピンジメント症候群の要因にもなってしまいます。

    以上のように、胸郭の可動性低下は様々な問題を引き起こす可能性があります。

    胸郭の可動性は運動において重要

    ここまでで説明したとおり胸郭の可動性…特に『伸展』と『回旋(側屈)』はあらゆる場面で必要となります。胸郭は骨盤・肩甲骨・上腕骨・頸椎など様々な部位と筋肉で連結されているため、可動性低下が生じやすい部位です。機能的な動きを得るためには、胸郭の可動域を必ず確認するようにしましょう!

    次回は股関節の可動性について紹介します。最後まで読んでいただきありがとうございました。

    【参考文献】
    1)D A.Neumann,筋骨格系のキネシオロジー,P306,2005
    2)小柳磨毅ら編,PT・OTのための運動学テキスト,P300-301,2015

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