日本は人口減少社会
現在の日本では高齢化が進んでいることは広く知られています。そして、同時に『人口減少社会』も進んでいます。その理由はとてもシンプルです。
「総人口」−「亡くなる人数」+「生まれる人数」=人口±
この計算式で示されるように『亡くなる人数が生まれる人数より多い』ということが生じているためです。
以前の日本人において人口が増加していた時代背景には、終戦後にベビーブームが起きたことや、栄養状態や医療進歩による生存率向上と新生児死亡率低下により平均寿命が著しく延びたことがありました。しかし、第三次ベビーブームが生じなかったこと等をきっかけに出生率が年々低下したことで『赤ちゃんの数』が減少し、人口減少がはじまります。そのため、明治維新以降100年かけて増えた人口が、同様のペースで100年かけて減少するようになりました。
上のグラフが急激な山形となっているのは、このような背景を示しています。
ただ、これは世界の先進国の各国が大なり小なり抱える問題なのです。実はアジアの国々には日本以上に少子化問題が進んでいる国も少なくありません。一方、欧米諸国などでも同様の問題はありますが、移民の推進や子育て環境整備を施すことで対策を講じています。
人口の増減は都道府県による差がある
出典)H27国勢調査
https://www.stat.go.jp/data/kokusei/2015/kekka.html
そんななか、実は人口が増加している都道府県があります。上の表にある国勢調査データでは、沖縄・東京・埼玉・愛知・神奈川・福岡・滋賀・千葉で人口増加していることが分かります。調査時点での東京都の人口は1351.5万人で、なんと全国の人口の10.6%が集まっています。もちろん、東京に通勤圏内である周辺の人口も多くなっています。
一方、急激に人口減少しているのが、表の右側に位置する秋田県などです。人口増加している都道府県とは比較にならないほどの人口減少をしています。ちなみに、鳥取県の人口57.3万人というのは政令指定都市よりも少ない人口です。もちろん、各都道府県のなかでも、都市部と郊外などで人口のばらつきは生じています。
つまり、各地域によって人口増加と人口減少の状況は異なり、取り組むべき課題も異なるため、取るべき対策も異なります。これはマクロな話なので「自分には関係ない」と思うかもしれませんが、そうではありません。職場の求人・保育所の確保のしやすさ・老いた身内の老人ホーム探し・町の税収・引っ越し先のマンションの住民の傾向…様々なところで私たちの暮らしに関わってきます。
都道府県別高齢者増加数のばらつきに注意する
上の図は都道府県別に2005-25年にかけての高齢者の増加数をまとめたもので、『各都道府県で高齢化がどれくらい進むか』を示しています。青が2005年、赤が2025年予想、赤丸内で示した都道府県は今後20年間で増加する日本中の高齢者の60%が含まれることを指しています。図の右側にいけばいくほど、高齢者は今後さほど増えないことを示しています。
この図を読み解くときに注意しなければいけないのは、「高齢者数は増加しない」≠「医療・介護ニーズは増えない」という点です。それは『既に65歳以上で高齢者としてカウントされている人たちが高齢化することはこの図に示されていないこと』と『実際に医療・介護ニーズが増加するのは75歳以上からが多いこと』という2つの要因があるためです。
つまり『人は高齢化した瞬間(65歳になった瞬間)に医療・介護を必要とするのではないこと』を理解しておきましょう。この点に関連したデータが以下の図です。
引用)社会保障人口問題研究所(平成24.11審査分)
65歳になると高齢者としてカウントされ、要介護認定を受けることが可能となります。しかし、実際に認定を受けるのは3%程度とごくごく一部です。図で示すように、75歳ごろから認定を受ける人が増え始め、80-84歳で約3割の人が認定を受けます。
このデータを踏まえると、医療機関や介護施設で働くスタッフの肌感覚とはギャップがあるといえます。
医療・介護職は『病院や介護が必要になった高齢者』としか関わる機会がほとんどです。そのため『高齢者=病気などを抱えた人』というバイアスがかかってしまいます。高齢者が増えているのは事実ですが、全ての高齢者が患者さん・利用者さんになるわけではないことを理解しておきましょう。
医療介護職が出来ることを考える!
今回私がお伝えしたかったことは以下の三点です。
①日本は急激な人口減少社会になる。 ②しかし、それには地域で差がある。 ③データ上の高齢化と現場の業務量の変化は少しタイムラグが出る。
これを踏まえると、①を前提として理解しつつも、②や③を組み合わせることで自分の職場の問題意識を捉えることに繋がります。
例えば、②の地域人口の推移データを見て人口が減るか増えるかについて知ったとします。もし、人口減少する地域であれば「今後は求人を出しても求職者が来ないかもしれない…」と考え、離職率低下のための働きやすい職場づくりをはじめるといった行動を起こす必要があるかもしれません。
また、③で中〜長期で見て高齢化はどうなるか?を調べることで、「職場に来る患者は今後増えそうなのか?それとも減りそうなのか?」と予想できます。そうすると、新たな介護系サービスや障害予防サービスに取り組む必要性を理解出来るかもしれません。
このようなデータは、厚労省の国勢調査や職場の住所のある市町村のHPなどから入手することが出来ます。まずは一読してみることをお勧めします。
最後に、これらのデータと医療・介護職として働く肌感覚をすり合わせることはとても大切です。データを判断の材料として活用し、それが机上の空論にならないように現場における課題や生の声(例えば「最近独居の高齢者が増えている…」など)を拾っていくことで、地域の変化に対応することやあなた自身の働き方を変えることが出来るでしょう。