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  3. 痛みや障害を抱えるクライアントに対するピラティスプログラミングの考え方

多くのクライアントに対して指導を行っていると、健康な方ばかりでなく、様々な痛みや障害、手術などの既往を抱えている方を多く経験します。その際に、安心安全で効果的な指導を行うために重要なことをご紹介します。今回は肩関節に起こったインピンジメント障害をケースとして初期から段階的にどのように介入していくのか?医療機関とどのように連携するのかについても書かせていただきました。

目次

    単純な限局的リハビリの終焉の日は近い?

    私はピラティスのインストラクターとして腱炎や滑液包炎などの軟部結合組織の損傷からの回復期にある多くのクライアントの方々への指導も行っています。それらのほとんどの方々が通常の理学療法などの治療を完了しているか、臨床治療を継続しながら、並行してピラティスを行っています。

    そのような、痛みや障害を抱えた方に対してピラティスの指導を行う際に私が気を付けていることとして、個別に処方された運動をどのように実行するかを観察するところから始めます。以前に比べると、最近はより進歩的なセラピストが多いように感じています。具体的には受傷部位への局所的視点を越えて、包括的に観察したうえで再発のリスクと根本の解決に注力しているのではないでしょうか。再発リスクの軽減には、痛みとして認識された、特定の領域だけでなく、全身を観察する必要性が明らかである現代の傾向を考えれば理にかなっていると言えます。

    上記のような流れは、重要なアプローチと理論の転換だと考えています。炎症が腱や神経で起こっているのは、それらそのものに由来するものではなく、組織へ加わるストレスや、緊張の副産物というべきものです。例えて言うならば坐骨神経が刺激され、坐骨神経痛が引き起こされます。しかし、神経そのものが問題を引き起こしているわけではありません。そもそも、そこにストレスがかかるのはなぜなのか?と自問することになります。このストレッサーの解明には、より包括的な評価と分析が必要になります。

    ピラティスは、幅広い視点でのアプローチとして最適

    ピラティスでは独特の器具と運動の構成が多様性をもたらし、全身への集中、論理的に最適な動きを、時間をかけながら学習していきます。したがって、たった1時間のセッションで多くのことを達成できます。

    それでは、一般的な肩の疾患として「回旋筋腱板(棘上筋)のインピンジメント」を例に考えてみる事にしましょう!この筋肉の腱は肩甲骨の上部(棘上窩)を横断して、腕の上部(上腕骨)に付着します。運動軸を保ち、関節を安定させて中心に置く機能を果たし、また腕の動きを支援する筋肉です。この腱は肩甲骨の非常に小さなトンネル(肩峰下のスペース)を通過して腕へ到達し貫入します。この出口での挟み込み、またはインピンジが発生するものをいいます。

    それでは、この様なインピンジメント症状を呈するクライアントさんに対してどこにフォーカスして考え、段階的に進めていくかご紹介いたします。

    初期(ローカルレベルの諸問題への対処)
    ①初期は炎症を起こしている腱そのもに対してアプローチを行います。
    目的としては腫脹を軽減させ、鎮痛をはかる療法になります。

    ②炎症症状の軽減とともに局所的な関節メカニズムの改善として、上腕骨頭が関節内でどのようなアライメントにあり、動いているかにも着目します。

    ③肩関節が機能的に活動するためにも土台となる肩甲骨のアライメントや可動性も重要になります。
    肩甲骨は解剖学上の関節ではないものの豊かな動きをもち上肢の動きと安定に貢献する要素が「肩甲胸郭関節」です。したがって、肩甲骨が胸郭上で滑らかに滑走するような望ましい動きをもつかを評価することが重要となります。もし、アライメントや可動性に問題がある場合には改善を目的としたエクササイズを行います。

    よく、肩の「安定」と表現されますが、安定の要求には静的なものと動的なものがあり、そのどちらをも満たす運動の選択が重要です。肩甲骨の動きは、胸郭の可動性に大きく左右されるため、胸郭の可動性とその機能改善への取り組みは、肩関節の配置の改善につながります。

    肩だからこそ、胸郭を考える

    肩関節は腹壁上部の筋の過度な緊張に影響を受けるリスクもあります。この場合、肩の可動性の低下がインピンジの原因になっていると判断しますか? おそらく、遠心性の筋伸張を含んだ、腹部のエクササイズがプログラムに含み行うはずですね。

    それではその腹壁の筋緊張と短縮の原因はいったい何でしょうか?

    1つの原因として考えられるのは、スウェイバック姿勢の影響により、代償として骨盤が前方に変位していることも考える事ができます。不良姿勢の状態で行う回旋筋腱板の強化は、効果がないばかりか、むしろ筋の能力低下をまねくとされます。

    他に考えられることとしては、呼吸の機能不全が関係しているのではと考えます。呼吸こそ肩や胸郭を考えた場合の最初に取り組む項目です。このように考えていけば枚挙にいとまがありません。

    私の経験をご紹介すると、「肩について勉強だ!」と意気込み訪れた米・ボストンで最も印象に残っている事があります。先生が開口一番「諸君は今、肩の上に座っていると言う認識はあるか?」と問いかけた事です。一瞬、拍子抜けしたのを覚えています。その先生の言葉には胸腰筋膜を介して、広背筋から上腕へと繋がる様子を意味し、下肢で作られた力が体幹を通じ伝達されて、タスクの要求に応じる上肢に届けられることを説明したです。

    ピラティスと理学療法が互いにうまく機能する

    理学療法は初期段階に局所的な鑑別分析と管理を行い、ピラティスが呼吸に注目しながら、筋肉のバランスを改善し、全身の力学を改善するための長期計画を継承し、促進させるという役割を担うのだろうと私は考えています。
    私はセラピストの方々の協力と共に、ピラティス指導者という立場で、患者さんのリハビリに関わらせていただく機会は多く、そうした「チーム」を形成して取り組む症例の経過は良いものが多いです。

    プログラミングのポイント

    私がピラティスのプログラミングを行う際に常に意識するアプローチの段階としてお伝えするのは以下の3つの順序です。

    ①分節
    ②領域
    ③統合

    発展を焦り、段階を一足飛びにする「エレベーター」で上階に向かおうとする思考は危険です。必ず「階段」を使って一段ずつ登りましょう。とお伝えしています。

    抹消・四肢の問題は(今回のテーマである肩)中軸骨格からの観察が重要と考え運動を選択構成します。その際の視点は以下のようなものがあります。

    ・呼吸
    ・中軸骨格の安定
    ・胸郭の可動性
    ・肩甲骨の動きと安定
    ・頭部の配置
    ・負荷伝達のシステム

    誰もが深く掘り下げたいと考えているとは限らず、すべての指導者がこうした方法を推奨するとは限りません。これまでの従来のトレーニング以上に、観察による計画と再評価といった多大な努力が必要とされるものではあります。しかし、一見遠回りとも感じるプロセスをいとわず、こうした思考とアプローチを実践しようとする時「現象を診て、原因を見つけにいく」意識が重要だと思います。肩に一向に触れようともせず、呼吸や骨盤の配置、胸郭の可動や時に股関節を重点的に動かそうとする私の様子に戸惑う患者さんもいるほどです。「原因」を全く違うところに見つける事になるかもしれません。

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