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  3. マニュアルセラピーはプラセボなのか!?

マニュアルセラピーを取り入れている専門家は多いのではないでしょうか?重要なのは、どのような方法を用いるかということよりも、どのような目的で用いたのか?そして、なぜ効果が出たのか(出なかったのか)を考えることです。今回は、私がマニュアルセラピーに対して深く考えるきっかけとなった出来事やメニュあるセラピーの作用機序などをご紹介いたします。

目次

    はじめに

    日本、世界で活躍中の皆様、お久しぶりです!保坂邦彦です!2020年に突入し既に2ヶ月が経とうとしております、2月22日現在、新型コロナウイルスの感染に対し日々最前線で業務をなされている方々、ご尽力に対し深く御礼申し上げます。また、感染してしまい現在闘病中の方々、1日も早い回復を願っております。

    Let's go,Tokyo2020!

    マニュアルセラピーに対する考え方の変化

    前回のコラム(私の考えるマニュアルセラピーとは)では多くの治療家の方々はメカニカルな視点だけに着目してマニュアルセラピーが使われている事についてご紹介いたしました。例えば、人体が機械の様に、関節は歯車同士の動き、軟部組織のバランスは伸び縮みが出来るゴムバンドで支えられているという観点です。

    さらにわかりやすく説明すると、「関節の動きが硬いからそれを緩めるために関節を”動かす”」、「末梢神経の動きが良くないからモビリゼーションで伸ばす」、「または筋肉が張っているからマッサージで”緩める”」と表すことができます。

    実際、私自身でも過去にはこの様に考えていた部分がマニュアルセラピー使う目的として大半を占めていました。もちろん神経系に及ぼす影響や効果というのはリサーチがされていて私も文献などは読んではいました。

    しかし様々な理由があり(自分の未熟さも含めて)自分の中で”何か”腑に落ちない所があって上手く臨床へ応用する事が出来ていませんでした。

    最大の衝撃

    そしてマニュアルセラピーに対する私の思考に最も大きな影響を与えた出来事をご紹介します。
    それは、2017年5月にJOSPT(Journal of Orthopaedic Sports Physical Therapy)で刊行されたこの記事でした。”Placebo Mechanisms of Manual Therapy: A Sheep in Wolf’s Clothing?” (マニュアルセラピーによるプラセボの仕組み:羊の皮をかぶった狼なのか?) [文献:1]

    かなり攻めたタイトルだと思いませんか?今風に言えば「ぶっ込んで”きたな〜」でしょうか!?

    このタイトルに対する私の捉え方ですが、物凄くネガティブな方向にショックを受けました。自分が今まで真摯に取り組んできた事を”プラセボ”の一言で片ずけられてしまったと・・・(実際この記事の本意はそうでは無く、もっと深いのでこの先にプラセボについては触れていきます)。 そして人間、受け入れられない事があると怒り、それを否定するものです。

    悩みからの解放となったきっかけ

    2018年の夏に、「マニュアルセラピーがプラセボ!?」という迷路から抜け出せずにいた私に衝撃的な転機が訪れました。テキサス州立大学でお世話になった尊敬する方から、XPERTでもお馴染みの川尻隆さんを紹介して頂いたのがきっかけでした。

    川尻さんは悩んでいた私に『マニュアルセラピーで組織への刺激が神経系を通じて中枢へインプットされ、そのアウトプットとしての表れが”効果”という事を覚えておいた方が良いよ』とアドバイスしてくれました。「インプットがあって、アウトプットとしての効果である」と。その時の私にはこの言葉が強烈に響き、次の介入時からこの言葉を意識しながらテクニックの種類や、力の入れ加減や方向、肢位、または自分のプレゼンの仕方などを1人1人のクライアントに対し最も効果が出る様に心がていきました。

    マニュアルセラピーの神経系への作用

    90年代後半頃から、アメリカの理学療法の分野ではマニュアルセラピーによるNeurophysiological effects(神経生理学的の効果)という概念に対して徐々に研究対象になってきます。マニュアルセラピーに関しては他業種、また臨床での効果は以前から確認されてもいたでしょうし、現在でもそれを目的とする方法論や職種の方もいらっしゃると思います。1つ1つのリサーチの内容を説明するのはこのコラムの目的では無いので割愛しますが、2018年1月に刊行されたJOSPTでの記事によりますとこの様に纏まっています。 [文献2: 保坂による日本語訳]。


    Zone1-3にの流れを次にご紹介します。

    1:施術者からのメカニカルな刺激(この文献では、”どの様なテクニックや器具でも構わない”とします)が

    2:そのテクニックが使われている状況(患者の治療の好み、治療への期待、”痛み”に対する認識など)を介し

    3:患者さんの組織へと伝わります

    4:その刺激(ここではインプットとします)が抹消神経を通して(その際に2で既に中枢神経の痛覚調整機構へのインプットが入っていますので、末梢神経での伝わり方も変わります)脊髄へ伝わります

    5:脊髄からのインプットが痛覚に伴う中枢機構(前帯状皮質、扁桃体、水道周囲灰白質、吻側延髄腹内側部など・上行と下行路)と痛覚調整機構で調整されます

    6:最終的に”痛みの抑制”が起こり、それが臨床での結果として現れます(痛みのレベルを臨床での結果として捉えている場合です)

    いかがでしょうか?上記で示した作用機序はマニュアルセラピーがもたらすNeurophysiological effetsを上手く纏まているモデルです。しかし実際この様に文章化してまとめてみると、残念ながら大した事の様には見えてきません(少なくと私にとってはそうでした)。

    したがって重要なのは、しっかりと自分の頭で理解をして臨床で活かすためにの過程を1つ1つ経験していくことだと考えています。また、このような人間の脳というのは自分のものに出来ないという様に作られています(それも神経学で分かっている事の1つ)。

    このように、理解を深めるために”痛み”に関して勉強したいのであればXPERTでのコラムでおなじみの田中創先生、神経学については近藤拓人先生のセミナーをお薦め致します。

    社会的な問題と私たちにできること

    皆様もご存知の様に、我々人間は動き続けなくてはいけない生物です。このプレゼンテーションが示す様に、1週間のベッドでの安静で10ー20%の筋力、3%の筋量の低下、血量の低下、褥瘡の形成、腎結石などネガティブな事しかありません。[文献3]

    XPERT開発責任者の坂元氏によると、現在の日本の医療費は年々上がり続けており、そして健康の問題を抱えてらっしゃる方が激増している問題を抱えているそうです。その対策の一つとして医療費の30%を占める生活習慣病に対し積極的に介入をしなければいけないと言う事です。私達のようにカラダに関わる仕事をしている者達が認識しなければいけない事として、人々の動きの質を上げ、1人でも多くの方々の生活の質をより良くしていく事がこの医療費の削減に貢献出来ると言う事ではないでしょうか。

    マニュアルセラピーを症状改善のためだけに用いない

    最後に話をマニュアルセラピーに戻しましょう。皆さんもお気付きの通り上述のモデルでは臨床での結果を”痛みのレベルを調整する事”にしか重点をおいていません。また前回のコラムでも書いた様に、症状を抑える(大抵の場合にそれは”痛み”を下げる)という目的にのみ重きを置かれマニュアルセラピーが使われている傾向にあると私はみています。それは決して悪い事ではありません。ただ私が提唱する使い方では、筋骨格系に現れる結果としての”動きの質を上げる”と捉える事を表しています。

    症状やセッションの目的にもよりますが、具体的に言うと”症状を減らし首と肩の動きを出す”、歩行中の立脚位で”コア”がしっかりと入った状態でセンターの軸を綺麗に保つ、スプリント系の動きをする際にしっかりと下半身に力を入れられる様になる、など多種多様です。それらを加味し、川尻さんから頂いたアドバイスを含めるとこの様になります。

    今現在(どんどん進化していきます!)、私が最も理想に近いと思うモデルをセミナーなどでお伝えさせていただいてます。 [文献4] 次回のコラムでもう少し説明していきたいと思います。

    今回の内容を踏まえまして、感覚的な事で良いので皆様で少しお考え下さい! ご感想や他の情報などがありましたら kuni@mlabpt.com の方まで宜しくお願い致します。今回も読んで最後まで読んで頂いてありがとうございました。次回のアップは1ヶ月後を予定しております!

    【参考文献】
    [1] Bialosky JE, Bishop MD, Penza CW et al. Placebo Mechanisms of Manual Therapy: Sheep in Wolf’s Clothing? May 2017;47(5):301–304.

    [2] Bialosky JE, Beneciuk JM, Bishop MD, et al. Unraveling the Mechanisms of Manual Therapy: Modeling an Approach. J Orthop Sports Phys Ther. 2018;48(1):8–18.

    [3] Cambell CS. (2020). Deconditioning: the consequence of bed rest. Retrieved from https://aging.ufl.edu/files/2011/01/deconditioning_campbell.pdf

    [4] Movement Lab Physical Therapy. (2019). Kooni's マニュアルセラピー基礎・導入 1.0. Irvine, CA.

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