橈骨遠位端骨折に対する掌側ロッキングプレート固定術と術後合併症

お気に入り数 1
竹林崇 大阪府立大学 教授

現在の橈骨遠位端骨折に対する手術療法において,掌側ロッキングプレート固定術は最もスタンダードな方法の一つである.この固定術の急速な台頭により,強固な固定と早期から積極的なリハビリテーションが可能となっている.その一方で,手術後の合併症も散見されている.今回は,掌側ロッキングプレート固定術の概要と術後合併症を中心に解説する.

橈骨遠位端骨折に対する手術療法は有効か?

基本的には,しっかりとした整復位が保持された安定型骨折は保存療法が原則となる.対して,不安定型骨折は,特に青壮年者で手術療法の適応となることが多い.不安定型骨折の定義には種々の報告があるが,国外でよく用いられてきたものにCooneyの不安定型骨折の判定基準1)があり,20°以上の背屈変形もしくは高度な関節内障害があり,整復位を保つのが困難な高度粉砕型骨折とされている.また,本邦では,佐々木が判定基準を作成しているものがある(表1).

また,治療を考える上で高齢者と青壮年者は分けて考える必要があり,活動性の高い青壮年者の不安定骨折に対しては掌側ロッキングプレート固定などの手術療法によって,早期の機能回復や整復位の確実な保持が得られるため,手術が推奨されている.対して高齢者では,不安定型骨折に対する掌側ロッキングプレート固定と保存療法を比較した研究において,掌側ロッキングプレート固定の方がX線画像の評価は優れているが,機能的には両群間で有意差がなかったという報告2)があることや,多少の変形が残存しても機能障害があまり影響しないとも言われている.

ただし,橈骨遠位端骨折診療ガイドライン2017 3)では,高齢者に対する手術療法に関して,活動性が高い,または早期に患肢の使用を要する高齢者には手術療法を提案してもよいとなっており,術後から早期に手を使用できるというメリットがあることや,患者の生活背景などを考慮して判断することが望ましいとされている.

掌側ロッキングプレート固定術の概要

不安定型橈骨遠位端骨折に対する手術方法としては,掌側ロッキングプレート固定は保存療法や経皮的鋼線固定,創外固定などの他の治療方法よりも成績が優れており,特に術後6ヵ月までの時期にその傾向が強いとされている.橈骨遠位端骨折診療ガイドライン2017 4)では,推奨度は2(弱い),エビデンスA(強)となっており,今では最も一般的な手術療法として広く普及している.

その反面,合併症の多さやプレート抜去の必要性などの問題もあり,ガイドラインでの推奨度にも影響したとされる.

掌側ロッキングプレートは2000年代以降に開発され,強固な初期固定性と術後の良好な成績,遠位のスクリューを橈骨遠位の軟骨下に刺し込むことで橈骨の短縮を防止することができるという点や,体外への異物露出がないことなどが利点として挙げられている.

掌側ロッキングプレート固定術後の合併症

手術療法において掌側ロッキングプレート固定術を第一選択とすることが多いが,様々な術後合併症も報告されており,二次的な手術を必要とする重大な合併症が他の治療と比較して有意に多いという報告が存在する5).具体的な合併症として,橈骨遠位端骨折診療ガイドライン2017 6)によると,長母指伸筋(EPL)腱断裂0~30%,手根管症候群・正中神経障害0~9.9%,長母指屈筋(FPL)腱断裂0~9.3%,複合性局所疼痛症候群(CRPS)・反射性交感神経性ジストロフィー0~8.7%,スクリューの関節内穿破0~7.1%,感染0~5.6%,橈骨神経浅枝障害0~0.7%などが挙げられている.

術後の合併症としての伸筋腱断裂はよく知られており,発生機序として,掌側ロッキングプレート固定時に掌側から背側に向かって刺されたスクリューの先端が突き出すことで,伸筋腱との間で摩擦が起きて損傷することが可能性として挙げられる7).

術後に屈筋腱断裂を生じる例では,プレート抜去後の術中の所見から,プレート遠位縁と屈筋腱との摩擦が原因で断裂していることが多く,また,プレート遠位設置や橈骨の遠位掌側面とプレート形状の不一致も原因であるとされている.これに対し,善家ら8)は,骨折部の確実な整復,プレートと橈骨遠位端掌側面の圧着などを確実に行うことが,FPL断裂を防止するためには重要であるとしている.

【共著】 堀本 拓究(大阪鉄道病院 作業療法士)

【引用文献】 1)日本整形外科学会診療ガイドライン委員会/橈骨遠位端骨折診療ガイドライン策定委員会(編):橈骨遠位端骨折診療ガイドライン2017(改訂第2版).南江堂:5-6,2017. 2)Arora R et al:A Comparative Study of Clinical and Radiologic Outcomes of Unstable Colles Type Distal Radius Fractures in Patients Older Than 70 Years:Nonoperative Treatment Versus Volar Locking Plating.J Orthop Trauma 23:237-242,2009. 3)日本整形外科学会診療ガイドライン委員会/橈骨遠位端骨折診療ガイドライン策定委員会(編):橈骨遠位端骨折診療ガイドライン2017(改訂第2版).南江堂:59,2017. 4)日本整形外科学会診療ガイドライン委員会/橈骨遠位端骨折診療ガイドライン策定委員会(編):橈骨遠位端骨折診療ガイドライン2017(改訂第2版).南江堂:77-80,2017. 5)Diaz-Garcia RJ,Oda T,Shauver M et al:A Systematic Review of Outcomes and Complications of Treating Unstable Distal Radius Fractures in the Elderly.J Hand Surg 36-A:824-835,2011. 6)日本整形外科学会診療ガイドライン委員会/橈骨遠位端骨折診療ガイドライン策定委員会(編):橈骨遠位端骨折診療ガイドライン2017(改訂第2版).南江堂:96-97,2017. 7)今谷潤也:橈骨遠位端骨折に対する掌側ロッキングプレート固定の合併症とその対策.臨床整形外科 47(11):1069-1075, 2012. 8)善家雄吉,他:掌側ロッキングプレート固定で治療した橈骨遠位端骨折に合併した腱損傷の検討.J UOEH(産業医科大学雑誌)36(4):257-264:2014.

主催者への質問

この機能を利用するには、ログインが必要です。未登録の方は会員登録の上、ログインしてご利用ください。

この記事に関連するタグ

興味のあるタグをフォローしておくことで、自身のフィードに関連するセミナーやコラムを優先的に表示させることができます。 (無料会員機能。 登録はこちら )

    コラムで人気のタグ

    タグをフォローしておくことで、自身のフィードに興味のあるセミナーやコラムを優先的に表示させることができます。(無料会員機能。 登録はこちら )