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  3. 医学モデル中心の作業療法への変化

作業療法が発足したその後,医学界からの影響から,より医学的・科学的な側面から作業療法を説明することを求められた.その為,身体や精神機能に焦点を当てた作業療法の発展が必要になった.以下に,その当時の主流の理論であった考え方と作業療法への影響をまとめる.

目次

    医学界からの影響

    1917年に発足した作業療法は,2度の世界大戦の際に,負傷兵や障害者の社会復帰のためのADL訓練や職業訓練,義肢使用訓練などの比重が増えてくるようになった.また,医学の進歩から,今まで対象であったポリオや結核の患者が減り,代わって,脳卒中や脊髄損傷,リウマチや外傷などの疾患が増え,技術の専門分化が進んだ1).

    1940年代から1950年代にかけて,医学界から道徳療法を基盤とした作業療法の視点は科学的ではないという批判があがった.また,そのような批判から多くの作業療法士も自分たちの実践を説明し,正当化するための理論が不足していると考えるようになった.

    そのため,当時の作業療法士たちは,医学と緊密な連携をとる中で,作業療法の過程を神経学的,解剖学的,精神的メカニズムの視点から説明し,それらの障害を軽減させることに価値をおくようになった2)4).

    医学モデルに基づいた作業療法

    身体障害領域では,切断や関節リウマチといった整形外科疾患に対する介入から,脳卒中や脳性麻痺といった中枢神経疾患へ拡大していった.そこでは,整形疾患に対する関節運動の拡大や筋力の強化、代償手段の提供といった手段とは異なった介入が求められた.

    そこで,当時の神経生理学や神経発達理論を適用した治療手技が現れるようになった3).アメリカの作業療法士でも理学療法士でもあるRoodや神経学者と理学療法士の夫婦であるBobathが治療アプローチを開発し,脳性麻痺や脳卒中患者に使用されるようになった.

    これらのアプローチは,異常な運動パターンを抑制し,正常な運動を促通することを目的とし,姿勢や運動の回復に焦点が当たっている1)2).これらのアプローチが身体障害領域の作業療法において,重宝されるようになった.

    また,精神障害の分野では,当時の精神医学の影響からフロイトの精神力動理論が使用されるようになった.アメリカの作業療法士であるFidlerは,人の精神に焦点を当てた精神力動理論に基づいた作業療法を実践した.患者の無意識の心理が作業に投影されるという考えから,無意識の感情表現の手段として手工芸や芸術などの作業が使用されるようになった3).

    発達障害作業療法の分野では,1960年代にアメリカの作業療法士であるJean Ayresが感覚統合療法を開発した.学習障害児に対して,触覚,前庭覚,固有受容覚性の刺激を含む遊びを通して治療をすることを提案した3).

    医学モデル偏重の問題と日本の作業療法への影響

    キールホフナーの歴史分析4)では,1950年代から1960年代にかけて,以前の作業パラダイムに取って変わり,還元主義(医学モデル)のパラダイムが受け入れられるようになったと述べている.当時の作業療法士たちは,障害の軽減に焦点を当てた作業療法は,効果的な医療サービスであるという認識をもたらし,科学的な地位を高めることに繋がると考えるようになった2).

    しかしながら,身体や精神の機能障害に焦点を当てた考え方によって,作業療法の初期の全体論的な考え方が薄れ,作業療法とは何か,何をするものなのかといった混乱や専門家としてのアイデンティティの危機が起きた.

    その後,初期の作業の考え方を現代に回帰させようとする『作業に焦点を当てた』考え方へ回帰していくことになった2).(図)

    佐藤5)は,日本に作業療法が取り入れられた1960年代の初期は,アメリカでの医学モデルの作業療法が熟した時期であり,中枢疾患系の疾患に対するファシリテーション技法が積極的に取り入れられた時期であったと述べている.

    そのため,日本に取り入れられた作業療法のイメージとして,医学モデルに基づいた作業療法の影響が大きかったと考えられる.

    【共著】
    嶋田 隆一(茨城リハビリテーション病院 作業療法士)

    【引用文献】
    1)Barbara A, Gillen G: :Willard and Spackman's Occupational Therapy 13th edition.Wolters Kluwer Health.2018.
    2)Kielhlofner G 山田孝監訳:作業療法の実践の理論 原著4版.医学書院.2014.
    3)鎌倉矩子:作業療法の世界 第2版.三輪書店,2004.
    4)Kielhofner,G 山田孝訳:アメリカにおける作業療法の60年 –その同一性と知識の変遷について-:作業行動研究,5(1),38-51,2001.
    5)佐藤剛:四半世紀からの出発 -適応の科学としての作業療法の定着を目指して-:作業療
    法,11(1),8-14,1992.

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