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  3. 公立病院は赤字って本当? ~その原因をデータから読み解いてみよう~

今年のはじめに厚生労働省より下記の文章を含んだ通知が出されました。
“都道府県は、別途厚生労働省から提供する「公立・公的医療機関等の診療実績データの分析結果」において、「診療実績が特に少ない」の要件に9領域全て該当している、又は「類似かつ近接」の要件に6領域全て(人口100万人以上の構想区域を除く。)該当している公立・公的医療機関等に対し、具体的対応方針について再検討するよう要請すること。”この背景には、公立・公的病院の赤字の多さがあるといわれています。では、今、公立・公的病院で何が起きているのでしょうか?データを基に読み解いてみましょう。
(引用:通知「公立・公的医療機関等の具体的対応方針の再検証等について」)

目次

    そもそも公立・公的病院とは

    病院は公立病院、公的病院、民間病院の3種類に分類することが出来ます。
    ・公立病院…国立病院(現在は国立病院機構)、都道府県、市町村
    ・公的病院…医療法に限定列挙されている地方公共団体の組合、国民健康保険団体連合会及び国民健康保険組合、日本赤十字社、社会福祉法人恩賜財団済生会、厚生農業協同組合連合会、社会福祉法人北海道社会事業協会など公的医療機関を指す。公益法人、学校法人や社会医療法人などの運営、公立病院も含む場合がある。
    ・民間病院…上記以外の医療法人や、個人、株式会社(以前の制度の名残)によって開設された病院。市中病院と呼ぶこともある。

    ちなみに日本で多いのは民間病院で、全体の約8割の病院が当てはまります。

    公立病院は赤字というけど本当 ?


    こちらは厚生労働省の実際のデータで、国立および公立病院の昨年と一昨年の収益状況が示されています。真ん中の線より左側に位置していると損益が0%以下=赤字と読み解いてください。公立病院の多くは赤字で運営されているということが理解できると思います。


    公立病院以外の民間病院・公的病院などで集計を行うと、上の図のようになります。真ん中の線より右側は損益が0%以上=黒字と読み解いてください。黒字の病院がずいぶん増えるのが分かりますよね。それでも赤字の病院は少なくないため、「病院=安定」という世間のイメージからは少しズレそうです。

    公立病院はなぜ赤字?原因は?

    それにしても、公立病院がここまで赤字ばかりなのはおかしいですよね。この点については様々な説があるので紹介します。

    1)国の低医療費政策が厳しい
    そもそも、民間でも赤字の病院が一定数見受けられることからもこれはいえそうです。医療政策や地域包括ケアシステム研究の第一人者である田中滋氏も「日本は現状で低負担中福祉であり、医療費を割くべき。」とかねてより論じています²⁾。

    2)民間病院が多い(医療の供給量が増える)ことで競争となる
    日本においては民間の病院が多いため、患者さんが分散してしまう可能性があります。人口の減少が重なった地域では、その現象がより強く生じているのではないでしょうか。

    3)運営方法の制限が厳しい
    実は公立病院の運営ルールは地方公営企業法が適応されており、原則的に民間病院と異なっています。そのため、経営資源といわれるヒト・モノ・カネを状況に応じて弾力的にすることが難しくなっています。具体的には、予算が年間で固定している、給料の昇給が公務員ベースで運営を圧迫する、スタッフの増員が公務員削減で厳しいなどが挙げられます。

    4)役割の特性
    公立病院の役割は総務省によって下記のように規定されています。

    “公立病院をはじめとする公的医療機関の果たすべき役割は、端的に言えば、地域において提供されることが必要な医療のうち、採算性等の面から民間医療機関による提供が困難な医療を提供することにある。 公立病院に期待される主な機能を具体的に例示すれば、①山間へき地・離島など民間医療機関の立地が困難な過疎地等における一般医療の提供、②救急・小児・周産期・災害・精神などの不採算・特殊部門に関わる医療の提供、③県立がんセンター、県立循環器病センター等地域の民間医療機関では限界のある高度・先進医療の提供、④研修の実施等を含む広域的な医師派遣の拠点としての機能などが挙げられる。”(引用3)

    つまり、そもそも採算面では不利だが人々にとって大事な役割を担っているのです。

    赤字の対応と医療の持続可能性のためには…?

    医療者であれば上記を読んでいただくと、「多少は仕方がないのでは?」と思っていただけるはずです。ただ、赤字をそのまま放置してはいけないのも事実です。そこで、総務省も公立病院ガイドラインのなかで3つの方針を示しています。

    ①経営効率化
    ②再編・ネットワーク化
    ③経営形態の見直し(指定管理者制度や独立行政法人化など民間寄りの運営手法の検討)
    です。

    これらの延長に冒頭の「具体的対応方針について再検討」があったと考えられます。昨今の大きい話題としては東京都の公立病院の独立行政法人化の発表⁴⁾もありました。

    ただ、今回のCOVID-19対応から、非常時に対応できる医療の提供量や、前線で対応することの多い公立・公的病院を再評価する流れも出てきているように感じます。病院で勤務するコメディカルの皆様は、このような情報も是非とも入手してくださいね。

    【参考、引用文献】
    1)都道府県別公的病院数と公的病院病床数比率.厚生労働省.
    2)医療アクセスの国際比較
    3)総務省:公立病院改革ガイドライン
    4)都立病院・公社病院の地方独立行政法人への移行について(東京都病院経営本部)

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