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介護予防をより良いものにするためには?失敗の歴史から紐解いてみよう

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穴田周吾 合同会社Rehacon アナリスト

先日、職場のスタッフルームでTVを見ていると「国は予防医療や介護予防にもっと予算を割くべきだ!」と強い論調で話すコメンテーターが映し出されており、同意しているスタッフが多数いました。たしかに『介護予防に取り組んでいる事業』と聞いて思い浮かべるのは、大手のフィットネスクラブなどの民間企業が行っているものですよね。

しかし、実は国が取り組んでいる介護予防事業はたくさんあります。例えば、町中にある高齢者向けのスポーツセンター・自治体の総合施設・カルチャースクールです。もしかすると、これらのために行政から依頼を受けたことがある医療・介護専門職の読者の方もいるのではないでしょうか?

今回は介護予防の考え方や取り組みについて、歴史を追いつつ整理していきます。歴史から失敗や上手くいかなかった部分を学ぶことが出来れば、これからの介護予防事業をより良いものへと作り変えていくことが出来るかもしれません。

目次

    介護予防の3ステージ

    まずはじめに『予防』について医学的な定義の整理からおこなってみたいと思います。

    ①一次予防:健康増進、疾病予防など
    健康的な生活を送りながら、疾病の発生を抑えることを目標とする。ヘルスプロモーションとも呼ばれ、世界保健機関の定義では『人々が自らの健康をコントロールし、改善することができるようにするプロセス』(World Health Organization, 1986)とされています。

    ②二次予防:早期発見、早期対処、早期治療
    発生した疾病や障害を健診や各種スクリーニングで早期に発見し、早期治療や生活指導などの介入を行なうことで重症化を予防する。

    ③三次予防:治療や症状の改善、重度化予防。リハビリテーション
    治療の過程において保健指導や各種のリハビリテーション等による機能回復などを図り、社会復帰を支援する。また、再発を可能な限り予防する。

    以下に少し具体的な例を挙げて解説します。

    私を含めこの記事の読者の多くであるリハビリテーション専門職種は、身体の障害のある者あるいはその恐れのある者の対して日々サポートをしています。これは診断された状態の対象者に対する介護予防と位置づけられるので三次予防となります。

    これに対し、地域の高齢者サロンや健康講座で介護予防といった病院等の外部で開催する介護予防は二次予防、冒頭で述べたようなフィットネスクラブや健康食品などのグッズを使用して行う介護予防は一次予防となります。

    介護予防の歴史と失敗

    民間企業が行っている印象の強い介護予防ですが、実は国を挙げて大規模な予算を立てて介護予防に取り組んでいた事例がいくつかあります。その中で代表的なものを一つご紹介します¹⁾。

    これは国が市町村に対して介護予防を実施するよう指示した取り組みで、2006年ごろから数年間にわたって一次予防/二次予防/三次予防の考えをベースとしたものでした。要介護化のハイリスク群を抽出してアプローチしており、高齢者の参加率『5%』を目標として下記のようなSTEPで行われました。

    ■ STEP1:全高齢者を指定のチェックリストでスクリーニングする。
    ■ STEP2:集めたデータから要介護状態になる可能性の高齢者をリストアップする。
    ■ STEP3:該当者に短期間(3ヶ月)介入して効果判定する。

    しかし、実際には目標とは程遠い結果となりました。平成18年度:0.2%、平成26年度:0.8%というように極めて少数の参加者だったのです。また、費用対効果も悪く、対象者の把握やアンケート郵送といった運営費用が予算全体の3分の一を占めてしまうという結果になりました。そのため、この取り組みは廃止されることとなりました。

    なぜ当時の介護予防は失敗したのか?


    この取り組みが失敗した原因について、以下のように述べられています²⁾。

    ①事業の内容が筋力トレーニングなどに偏り、参加する高齢者の主体性や意欲を十分に引き出すことができなかった。

    人はトレーニングだけを続けることはつらいものです。皆さんも「ダイエットを諦めた」「会員だけどジムに行っていない」ということはありませんか?現在の取り組みでは、この反省を活かして『住民同士の関係性作り』や『生きがいの支援』といった施策が行われています。

    ②二次予防事業の終了後の地域の『受け皿』が整っていなかった。

    介護予防を行って身体機能が改善しても、日常生活に戻って活動性が低下し、成果が持続できないことが指摘されました。この点について『受け皿』の問題があるとし、現在の介護予防の卒業先としての『住民主体の通いの場』や『総合事業』を準備する流れとなりました。また、近年では、身体機能が落ちる加齢以外の理由を探すことの重要性について行政の理解も高まっています。

    ③年1度の横断的な主観的調査では、対象者の選定に無理があった。

    現在の介護予防施策では、健康な人も介護が必要な人も参加できるようなサービスが増えています。例えば、立って行う運動と座って行う運動を準備して自由度の高いを運動プログラムを整備すること、介護が必要な人でも助け合って通えるようなシステムを整備することが挙げられます。そのため、調査方法そのものを再検討する必要がありました。

    現在の介護予防では、過去の失敗を活かすことでより良いものへとアップデートされています。例えば、『地域リハビリテーション活動支援事業』として生まれ変わり、ICFの心身機能・活動・参加のそれぞれの要素にバランスよく適切なアセスメントの元に働きかけるため、各地域においてリハビリテーション専門職種等を活かした自立支援に資する取り組みが推進されています。また、保険外のサービスについても増える社会保障費の中で新たな分野として期待されています。

    効果的な介護予防を実施するためには、歴史や過去の事例を整理しながら、流れを先読みしつつ、私たちに何が出来るか、何をやるべきかを常に考えていく必要があるのではないでしょうか。

    引用
    1)基本チェックリストについて
    http://www.pref.nara.jp/secure/47230/03-checklist.pdf

    2)「介護予防・日常生活支援総合事業ガイドライン案」についてのQ&A
    https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000188231.pdf

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