ストレッチは、治療家なら慣れ親しんだアプローチの一つかとおもいます。また関節拘縮も治療家なら必ずと言って良い程ぶつかる大きな問題の一つだと思います。そこで今回は、関節拘縮に対するストレッチの効果について、コクランレビューでのエビデンスによる内容を交えつつ、ご説明いたします。

拘縮とは、どんな状態か

まず初めに「拘縮とは何か?」について考えてみたいと思います。意外と、臨床家でも言葉の意味を理解せずにアプローチしている方も少なくない印象です。実は私も数年前まではその一人でした。

まず声を大にして言いたいのは、関節可動域制限と拘縮は違います! 「え?同義ではないの?」と思われる方もいるのではないでしょうか?

それぞれの定義をみてみると、関節可動域制限について日本整形外科学会では「関節を他動的に動かした際の関節可動域が、関節可動域表示並びに測定法の参考可動域に満たない状態の事」と述べられています。ここで重要となってくるのは、関節可動域制限というのは、「他動ROMが制限されているかどうか」。これだけなんです。つまり、可動域制限の因子となる皮膚の突っ張り、骨の脱臼、筋膜の伸張性低下、強直、全てを指します。

では続いて拘縮は、「皮膚や皮下組織、骨格筋、腱、靭帯、関節包などの関節周囲軟部組織の器質的な変化に由来したRON制限」と定義されています。ここで重要なのは、拘縮は「器質的な変化」があるということです。更に言うと、筋収縮由来、つまり筋スパズムや痙縮によりROMが制限されている場合は拘縮には入りません。

これまでの内容を、まとめると、関節可動域制限は、「他動ROMが制限された状態の全て」を表しています。 一方で、拘縮は、その関節可動域制限がある中で、更にその「原因組織に器質的な変化が原因としてある状態」であると言えます。 つまり、関節可動域制限の中に拘縮がある。と捉えていただいて大丈夫です。

それでは次に、拘縮の器質的変化について具体的にイメージしてみましょう。 関節可動域制限の原因として最も多いといわれているのは筋膜といわれています¹⁾。 関節を不動状態で放置していると、筋膜を構成する主要成分であるコラーゲン線維が増加し密度が増すことが報告されています。更に、規律正しく並んでいたコラーゲン線維が、乱れて配列変化が生じます。つまり、拘縮を起こした筋膜ではコラーゲン線維が乱れた状態で増加すると考えられます。

では次に、ストレッチの効果を、拘縮に繋げていきます。

ストレッチの効果とは

ストレッチといえば、骨格筋を関節運動を介して伸ばす事ですよね。ダイレクトストレッチといった方法もありますが、今回はスタティックストレッチをイメージしてください。ストレッチをした後、関節の可動範囲が広がるのは、何故でしょうか?

結論から申し上げますと、神経性要素です。腱紡錘が伸張刺激を感知し、筋緊張を抑制します。これは多くの参考書にも記載されています。そして、私の知る限りストレッチングで、増えたコラーゲン線維が減る。という報告は今のところありません。

では、拘縮に対してストレッチに効果はあるのか

Cochranのある報告²⁾をご紹介します。ストレッチの効果について、49件のRCTの内容のreview報告です。

対象は、脳卒中、後天性脳損傷、脊髄損傷、関節症、手関節骨折、火傷など、神経性および非神経性の疾患が広く含まれていました。

ストレッチの方法は、自主トレーニング、セラピストによるストレッチ、器具を使ったストレッチ、ポジショニング、スプリントなど、多種多様でした。

結果として関節可動域のへの効果は、神経疾患が1%(0%~2%)または2° (0° to 3°)、非神経疾患が1%(0%~3%)の改善だった様です。これを改善とは中々言えないですね。笑

つまり、拘縮した関節可動域制限は、ストレッチでは治るとは言い難い。というのが結論です。拘縮を治す。というのは、言い換えると、器質的変化をした結合組織の異常を元に戻す。という事です。筋膜を例にとると、増えたコラーゲンを減らす必要があります。

拘縮に対しての推論、まとめ

残念ながら、徒手療法で完成されてしまった拘縮を治す方法は今だ解明されていません。 では、どうするか? 現状での答えは、拘縮を作らない、つまり「予防」が最重要だと言う事です。

私見が入りますが、拘縮の予防は、方法は至ってシンプルです。関節可動域を、全可動域に渡って毎日動かすだけです。 ただ、これだと疑問も生まれますね。関節を不動している状態だとどうするのか?関節可動域運動が出来ない・・・。

こういった場合、動物実験の研究ですが、電気刺激での単収縮の誘発で、拘縮の進行を抑制することが分かっています。

いかがだったでしょうか?今回の内容が少しでも参考になり、拘縮は作らず、予防に重きを置いて、臨床に取り組んでいただければと思います。

【参考文献】 1)千住 秀明 機能障害科学入門 神陵文庫

2)Harvey LA, Katalinic OM, Herbert RD, Moseley AM, Lannin NA, Schurr K Stretch for the treatment and prevention of contractures (Review) Cochrane Systematic Review - Intervention Version published: 09 January 2017

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