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世界の脳卒中後上肢のリハビリテーションのエビデンス(1)

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竹林崇 大阪府立大学 教授

脳卒中後の上肢麻痺に対する作業療法アプローチに関して、国内外における動向を紹介する。特に、米国の心臓/脳卒中学会が提唱するガイドラインに関して「課題指向型アプローチ」「CI療法」「ロボット療法」を取り上げ解説する。

目次

    脳卒中後の上肢麻痺に積極的に作業療法が介入すべき理由

    前回のコラムでも紹介したが、『下肢は理学療法、上肢は作業療法』といった身体部位による誤ったカテゴライズがリハビリテーション領域において横行している。

    これについては、臨床で実際に働いている理学療法士、作業療法士、さらにはそれらを教育する立場の養成校教員までもが誤った認識を持っていることも多い。

    しかしながら、片側の上下肢に麻痺が生じる脳卒中に対するリハビリテーションでは、作業療法における最大の目的である『対象者にとって意味のある活動・生活・経験』を実現するために麻痺手の機能・運動障害の改善は重要な因子である。

    したがって、脳卒中後の上肢麻痺においては、作業療法士も積極的に介入すべき領域であることに間違いはない。

    脳卒中後の上肢麻痺に対する作業療法アプローチの実際

    さて、それではどのようなアプローチが実際の臨床で脳卒中後の上肢麻痺の介入のために使われているのであろうか?

    本邦の作業療法において伝統的に利用されているアプローチとしては、『ボバースコンセプト』、『Proprioceptive neuromuscular facilitation (PNF: 固有受容器神経筋促通術)』等が挙げられる。

    一方で、近年の臨床においては前者の2つのアプローチに加えて『川平法(反復促通法』、『Constraint-inudced movement therapy(C I療法)』、『ロボット療法』、『メンタルプラクティス(ミラー療法含む)』、『電気刺激療法』等が台頭している。

    つまり、時代の移り変わりに合わせて、作業療法士が使用する手法においても明らかに変化してきている。

    海外における脳卒中後の作業療法アプローチの変化

    加えて、海外の動向にも言及していく。
    脳卒中リハビリテーションにおいては、特に米国の動向が世界を知る上で重要である。

    そこで、2016年に発表されたAmerican Heart / Stroke Association(アメリカ心臓/脳卒中学会)1)のGuidelineを確認する。

    Guidelineとは、関連団体が診療のために掲げている大まかな指針であり、診療において用いる手法に関するエビデンス(証拠)が記載されている。

    アメリカ心臓/脳卒中学会が推奨する脳卒中後の上肢麻痺に対する手法として、1)課題指向型アプローチ、2)CI療法、3)ロボット療法、4)電気刺激療法、5)メンタルプラクティス、がエビデンスレベルA(臨床に用いることを推奨)とされている(表1)。


    表1. アメリカ心臓/脳卒中学会の脳卒中後上肢麻痺に関わるガイドライン

    1)課題指向型アプローチ

    目的指向型アプローチとも呼ばれる。近代リハビリテーションにおいて、もはや常識となりつつあるアプローチである。

    対象者の目標を聴取し、その要素を含む活動レベルの作業課題を実施する中で、麻痺手の機能と行動障害を改善するためのアプローチである2) 3)。

    課題指向型アプローチは、運動学習・再学習理論に則ったアプローチであり、電気刺激療法、ボツリヌス療法等、多くのアプローチと併用されている。

    2)CI療法

    CI療法は脳卒中後の上肢麻痺について、手指・手関節の伸展が可能な対象者であれば、従来のアプローチ(ROM ex、ストレッチ、肩のスタビライゼーション、リーチ課題等)に比べ、上肢麻痺に関わるICFでいう活動・参加レベルの改善、およびQuality of Lifeの改善が認められると言われている。

    ただし、対照群のアプローチの練習量を等しく保った際に、同等の効果があるかどうかについてはエビデンスが乏しい状況である4) 5)。

    多くの研究においては、量的な麻痺手の反復練習に加えて、課題指向型アプローチを行うこと、Transfer packageと呼ばれる麻痺手を実生活において使用するための行動学的介入を行うことがCI療法であるための条件と述べられている。

    3)ロボット療法


    脳卒中後上肢麻痺の程度が重い場合は、回復の可能性は大きく低下すると言われている6)。
    ただし、ロボット療法は、特に重度の上肢麻痺を呈した脳卒中患者には、利用を考えるべきであり、ICFでいう機能レベルの改善が見込まれている。

    2008年のCochraneのシステマティックレビューでは、ADLやIADLへ影響を与えないとされていたロボット療法だが、2012年の同雑誌では、僅かながら影響を与えることができると報告されている1)。

    ただし、ロボット療法は従来のアプローチにくらべ、同等か差があってもわずかな場合が多いとされており、自主練習として使用することが望ましいと考えられている7)8)。

    世界の脳卒中後上肢のリハビリテーションのエビデンス(2)に続く

    【謝辞】
    本コラムは、当方が主催する卒後学習を目的としたTKBオンラインサロンの岸優斗氏、須藤淳氏、堀翔平氏、田中卓氏、前田政憲氏、堀本拓究氏、高瀬駿氏、佐藤恵美氏に校正のご協力をいただきました。心より感謝申し上げます。

    【引用文献】
    1.Winstein CJ, et al: guidelines for adult stroke rehabilitation and recovery. A guideline for healthcare professionals from the American Heart Association/ American Stroke Assocciation. Stroke 47: e98-107, 2018
    2.Bayona NA, Bitensky J, Salter K, Teasell R. The role of task-specific training in rehabilitation therapies. Top Stroke Rehabil 12:58–65, 2005
    3.Hubbard IJ, Parsons MW, Neilson C, Carey LM. Task-specific training: evidence for and translation to clinical practice. Occup Ther Int 16:175–189, 2009
    4.Dromerick AW, Lang CE, Birkenmeier RL, Wagner JM, Miller JP, Videen TO, Powers WJ, Wolf SL, Edwards DF. Very Early Constraint- Induced Movement during Stroke Rehabilitation (VECTORS): a single-center RCT. Neurology. 2009;73:195–201.
    5.Boake C, Noser EA, Ro T, Baraniuk S, Gaber M, Johnson R, Salmeron ET, Tran TM, Lai JM, Taub E, Moye LA, Grotta JC, Levin HS. Constraint-induced movement therapy during early stroke rehabilitation. Neurorehabil Neural Repair 21: 14-24, 2007
    6.Mehrholz J, Pohl M. Electromechanical-assisted gait training after stroke: a systematic review comparing end-effector and exoskeleton devices. J Rehabil Med. 2012;44:193–199.
    7.Klamroth-Marganska V, Blanco J, Campen K, Curt A, Dietz V, Ettlin T, Felder M, Fellinghauer B, Guidali M, Kollmar A, Luft A, Nef T, Schuster-Amft C, Stahel W, Riener R. Three-dimensional, task-specific robot therapy of the arm after stroke: a multicentre, parallel-group randomised trial. Lancet Neurol. 2014;13:159–166.
    8.Lo AC, Guarino PD, Richards LG, Haselkorn JK, Wittenberg GF, Federman DG, Ringer RJ, Wagner TH, Krebs HI, Volpe BT, Bever CT Jr, Bravata DM, Duncan PW, Corn BH, Maffucci AD, Nadeau SE, Conroy SS, Powell JM, Huang GD, Peduzzi P. Robot-assisted therapy for long- term upper-limb impairment after stroke [published correction appears in N Engl Med. 2011;365:1749]. N Engl J Med. 2010;362:1772–1783.

    【本講義の動画解説】

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