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  3. 保健衛生業における、腰痛予防対策の現状と課題

腰痛は誰もが経験しうる身近な症状の一つです。この腰痛を発症する割合が医療・介護の現場で増加しているとの報告がなされています。このような課題を如何に改善していけばよいのかについて、私の経験や学びを皆さんにご紹介してまいります。

目次

    本コラムで私が伝えたいこと

    私が就労者の腰痛予防に関心を持ったきっかけをご紹介します。
    医療や介護に関わる人々が自身の身体に負担をかけ続けるケアをおこなうと、プライベートにも支障をきたすだけでなく、プロとしてのケア文化として次世代に引き継ぐことができません。この様な状況に危機感を感じ、腰痛予防対策マネジメントという考え方を、保健衛生業に定着させたいという想いを抱きました。

    現状では個人の対処療法のみに頼っているため、組織としてのマネジメントをしなければ隣にいる大切なスタッフを守る事は出来ないと1人でも多くの方々に認識してほしいと感じています。

    就労者の腰痛の現状

    厚生労働省の調査によると、腰痛による労災申請件数は、全産業の中で見ても他産業は減少傾向にあるにもかかわらず、保健衛生業の分野においては増えているとの驚くべき報告があります。

    このように看護・介護・療法士等介助動作に関わる職員全体が、腰痛の起因となるような身体への負担の大きい介助動作等が、把握できているにもかかわらず、組織として予防対策できていない現状にあります。

    医療・介護現場における身体にかかる負荷をイメージしてみると、一般的な65歳以上の平均体重は60Kgであり、ペットボトルに例えると、1.5リットルのペットボトル40本を一気に抱え上げる動作と同様である。移乗動作介助を一つに挙げても、入浴用ストレッチャーへの移乗や車いすベッド間の移動においても、ペットボトルの塊を幾度となく運搬する作業が見受けられるのが事実ではないでしょうか?

    この動作を、一日を通して考えてみると、食事・入浴等の際など移乗・移動介助を何回繰り返しているでしょうか?さらに、仕事として長い年月続けていく事まで考えた場合、医療・介護に関わる人の身体負担は非常に大きいと考えられます。この様な状況では、せっかく優秀な人材も、先に身体機能に悪影響を及ぼし、働き続ける事ができなくってしまいます。

    日本国家の取り組み

    厚生労働省が実施している取り組みとしては、平成25年に「職場における腰痛予防対策指針」を改訂し、提示しています。この報告のなかでは、作業様態別の留意点として重量物を取り扱う作業する全産業おける基準が示されています。

    例えば50㎏の男性の場合だと20㎏以下(体重の40%以下)、女性だと、その60%以下となるので12kgが指標となります。つまり、この重量を超えない環境下でいかに安全に働くことができるかが、重要であると考える。

    医療や介護のケア現場では、モノを扱う訳ではないという点から、「ヒトの手で」という一見優しいようで、「自身は無理を強いられながら」というプロ意識が強い一方、自身の身体の安全に対しての意識が引くかったり、業界としての取り組みが遅れている現状が問題視されています。

    オーストラリアでの取り組み

    1998年にオーストラリアの看護連盟ヴィクトリア支部により、提唱された、「No Lifting Policy(身体に過度な負担がかかる状況で、人力のみによるケアは絶対に行わない)」という、州をあげての取り組みによる実績をベースに、厚生労働省は2013年に「原則として人力による人の抱え上げは行わせないこと(職場における腰痛予防対策指針)」とする指針を発表しています。

    腰痛を治す人が腰痛を持っているという矛盾

    悲惨なことに、身体に関するプロフェッショナルとして痛みを治す仕事を行いながら、腰痛をはじめとする様々な身体的な負担を感じている人が存在するという現状にあります。この問題に対して本質的な取り組みはいまだ不十分で対処療法のみに頼っていることが多く見受けれます。

    急性期病院での勤務も経験した自身の経験からみても、身体の専門職として、これまでの向き合い方・知識を改め、生活・作業動作等におけるアセスメントを前提として、症状がある方に対してアプローチの展開をすることが、大変重要ではないかと考えています。

    私がこの様な考え方に至った背景として、当法人の事務長がオーストラリアにて実際に施設を視察し、「単純に体格差から考えても人力のみでの介護・看護体制は続かない」と、この業界の存続に危機感を感じ始めたと話しをした事がきっかけにあります。さらに日本で、「この様なケアを実践している方はいないか?」と模索する中で、日本ノーリフト®協会の代表理事の保田淳子氏と繋がりを持つことができたことも今につながります。

    これを機に私の日本版ノーリフトケア®プログラムを学ぶ日々がスタートしました。以前の私の考え方は「ヒトの手の方があたたかい」でしたが、その後、7年間在宅・施設分野にて関わることでマネジメントとして組織立ててこの課題に向き合う重要性に気づくことができました。

    今では、働くことの前提条件として、「ともに医療現場で働くスタッフそれぞれの身体を守ることができる」を共有し、介護・看護スタッフと共通のケア目標の下に、クライアントのより良い生活の質を高めていく大変有意義なツールの一つとしてノーリフトケア®を展開しています。結果として、腰痛予防対策から始めた、ケアの変革がクライアント・スタッフ・経営者にとってとても良い変化を出しています。

    以上のように、医療を提供する最前線にいる我々から身体的にも精神的にも働きやすい環境づくりのために、現状を見つめ海外など外部へ視野を広げることの重要性を私は感じています。今後のコラムでも皆さんの現場やクライアントに対する考え方のヒントになる情報をお届けしていきます。

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