私たち身体の専門家はクライアントの抱える問題解決のために様々な方法を用いてアプローチを行っています。
クライアントの姿勢や動作を見ただけで一瞬にして問題を見極めることができる人もいるでしょうし、多くの方は様々な評価メソッドなどを駆使してクライアントの身体機能/構造的な問題を見極めているのではないでしょうか?
しかし、別の捉え方をすると、この様な問いを生み出すことができます。
「それは本当に解決すべき問題なのでしょうか?」
確かに、進化した評価ツールなどによって数値上(定量的)は問題は明らかになるかもしれませんが、クライアントはそれによって救われるのか?です。
トヨタが提唱する本質的な問題を見出すフレームワークの中に「5Why分析」というものがあります。
この方法は問題を深堀していくことで、根本的な問題の原因を見つけるテクニックです。確かにこの方法によって解決されケースもありますが、創造的な解決法を生み出すことは不可能です。
この、創造的な解決法を生み出す方法の一つに「リフレーミング」という思考法があります。
問題に対する視点を変えるやり方で、シンプルな例では半分しか水が入っていないグラスを見て「半分しか水が入っていない」と捉えるのか、それとも「半分も水が入っている」と捉えるのかの違いになります。
それでは、このリフレーミングに関する事例として有名な「エレベーター問題」を取り上げ、一緒に考えてみましょう。
皆さんはオフィスビルのオーナーです。ある日、テナントから「オフィスのエレベーターの待ち時間が長い」という苦情を受けました。このままではテナント契約を解約されてしまいます。
さて、あなただったらどのような解決策を考えるでしょうか?
「エレベーターの数を増やす」、「新しいエレベーターに交換する」、「スピードを上げるために改良する」などはいずれも莫大な改修費がかかってしまいそうですね。
ここで、リフレーミングを用いて問題解決策を考えてみましょう。
「エレベーターの待ち時間が長い」という問題に対してリフレーミングを行うと、オフィスで働く人の問題は「エレベーターの待ち時間が長くてイライラする」と置き換えられます。この問題に対して解決策を考えるには「待ち時間を短く感じさせる」ために「鏡やモニターを取り付ける」「現在位置を知らせる」などが考えられますね。
さらに、私たち身体の専門家であれば、「エレベーターではなく階段を使うことで得られるベネフィット」を魅力的に伝えることでも解決が図れそうです。例えば、「階段にカロリー消費量を取り付ける」、「階段をおしゃれに改装し、階段ミーティングやカフェスペースを設ける」など「階段を使うことが健康でかっこいい」とイメージが変わるようなアイデアを提供していきたいですね。このように視点を変えることで、新たな問題解決のためのアプローチが出てくるのではないでしょうか?
このように、リフレーミングは自分の考えの幅を広げることで、得られる効果が大きく変わってくることが理解できます。この方法を私たしの日々の臨床や業務の中にどのように活かすことができるでしょうか?
例えば、あなたのところへダイエットが目的でトレーニングに通っているが、なかなか効果の出ないクライアントに対してあなたはどのように対応するでしょうか?
通常であれば、運動量や頻度を増やしたり、食事メニューを調整したりなどのアプローチを考えることと思います。では、リフレーミングにより、「クライアントは体重が減っていない」という問題から「効果が出ていないことへのイライラ」の問題に視点を変えてみるとどうでしょうか?
おそらく、クライアントへの接し方、声のかけ方、アプローチの選択なども変わってくるのではないでしょうか?
以上のように、リフレーミングは創造的に問題解決法を導き出す方法の一つとして活用できると考えています。
「問題を如何に解決するか?(問題解決力)」という前に、「いかに問題を見つけることができるか(問題発見力)」が重要となってきます。
私たちの身の回りにも大小限らず解決すべき問題はありますし、現在担当しているクライアントを改めてリフレーミングの視点で考えてみるのも面白いと思います。
主催者への質問