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シンスプリントに対する筋膜アプローチ

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比嘉 俊文 合同会社Medimarl 代表

シンスプリントの要因は主として足関節の可動性や足部のアライメントなどによるとの報告を多く目にします。しかし、臨床においてそれだけでは改善しないケースも多いことを経験します。そこで、今回は私が実際に経験した縫工筋を起因としてシンスプリントが発生したケースをご紹介いたします。

目次

    シンスプリントの一般的理解

    シンスプリントは脛骨内側遠位部に痛みが起こる過労性障害で脛骨過労性骨膜炎とも言われています。(日本整形外科スポーツ医学会)陸上競技やサッカー、バスケットボールなどの走ることが多い競技に多くみられ、臨床上、競技初心者や中高生の進学による競技レベルの変化時に「練習がハードで…」と訴える方が多いように感じます。

    シンスプリントの原因として理解されているのは、足関節背屈角度の低下(伊藤,2006)文献1)や扁平足などの足の形状の報告が多いのですが、そのほとんどが柔軟性の低下や衝撃吸収能力の低下に帰結させています。

    ここで興味深いこととして取り上げたいのは、上記の要因が否定されている報告も少なくないという点です。
    これは治療においても同様であると感じています。一般的に運動量を減らし、足部周囲の柔軟性獲得と筋力強化、足底板や靴の選定などが有効とされている一方で、三浦らは足底板の効果を報告しながら、少なからず効果が認められないケースも存在したと述べています(文献2)。

    足部の局所的なストレッチを行ったり、構造的・環境的側面を変化させることで効果がみられるケースもあれば、そうでないケースが存在するという事実から私たちは目を背けてはいけないと思っています。臨床では、その事実をどう捉えるのかが重要になってきます。

    なぜ、痛みが長引くのか?

    では、なぜシンスプリントの痛みは長引くのでしょうか?
    私のこれまでの臨床経験からの意見になってしまうが、推奨されている治療の多くが下腿や足部に限局したアプローチにとどまってしまっていることも関係していると考えています。

    ここで、興味深いエビデンスをご紹介いたします。それは、衝撃吸収能は下肢だけではなく胸郭の柔軟性など上半身の影響も受けます3)。このことからもシンスプリントの痛みを根本から解決していくためには、全身的な評価が必要ということがわかります。

    筋膜機能を考慮したシンスプリントへのアプローチメカニズム

    シンスプリントの痛みの原因を解釈する際に重要なのは、脛骨内側に付着する筋をどうするのかではなく、「なぜ、脛骨内側の筋に負担が蓄積するのか?」を考慮して行くことだと思います。その際に筋膜の連続性をもとにした機能評価を取り入れています。

    例えば、後脛骨筋は遠位には母趾外転筋、近位には内側広筋、縫工筋、小殿筋などと機能的連続性を持っています4)。この場合、後脛骨筋が骨膜を引っ張っているのではなく、その後脛骨筋を縫工筋が緊張をもたらしているということも十分考えられます。この際、後脛骨筋をいくらストレッチしてもアイシングしても効果を期待することはできず、縫工筋に対してアプローチすることで痛みが改善されることを多々経験します。

    縫工筋が要因となりシンスプリントを呈した実例を紹介します。
    クライアントは高校に進学したばかりのサッカー選手です。進学当初は、中学から練習量が急激に上がることはよく聞きますが、パス練習の精度や距離感などのような質的なレベルの向上も同時に起こります。したがって、質的に劣る学生などは練習後や休日などに個別練習で補ったりする選手も多いと思います。

    この選手の場合、縫工筋に圧痛を認め、話を聞いているとおそらくインサイドキックの多用により(蹴り方やフォームの影響もありうる)ストレスを抱えているようでした。実際の痛みは走る時、蹴る時の脛骨の内側の痛みなのですが、痛い部位のアイシングと整形外科の指示で部活を2週間休むという対応でも痛みが続いている状況でした。

    その痛みが解消したのは縫工筋の筋膜リリースでした。縫工筋が後脛骨筋に対してストレスを与えていたことが結果からも示唆されます。

    さらに縫工筋以外にも、筋膜の連続性においてより上位である鎖骨下筋の影響まで筋膜評価で読み取ることができるのです。このメカニズムとしては、腹斜筋群、前鋸筋らともに、体幹の内旋の動きに連動する筋膜群であるためです4)。鎖骨下筋は上肢の運動負荷にも影響を受けますし、胸郭出口症候群における関与も認めています。

    この様に、シンスプリントでは実際に痛みがある後脛骨筋のみではなく、股関節や胸郭・肩甲帯に付着する筋・筋膜の影響を考慮することで解決につながるかもしれません。こうして全身で捉えるとき、筋膜という視点は非常に有用だと感じています。

    【参考文献】
    1)伊藤浩充:高校サッカー選手のシンスプリントに関わる下腿・足部の発生因子,神戸大学医学部保険学科紀要,2006.
    2)三浦雅史:シンスプリントに対する装具および足底板の疼痛軽減効果,Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集),2010.
    3)岩本博行:片脚着地動作における胸郭柔軟性と衝撃吸収能の関係,Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集),2017.
    4)Luigi Stecco:筋膜マニピュレーション筋骨格系疼痛治療 理論編,医歯薬出版,2011.

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