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  3. 痛みのマネジメント ②慢性痛の予測

痛みに対するアプローチで重要なことは、「慢性痛にならないようにいかに予防していくか?」ということです。この慢性痛を予防するには、できるだけ早期に治療反応性の低い方を見極めることが重要になります。
我々の行った研究によると、初期評価時の身体知覚異常の程度が慢性痛を予測する因子になる可能性が見出されました。

目次

    痛みのメカニズムや評価の知識を如何に活用するか?

    これまでのコラムでは痛みのメカニズムや評価などについて取り上げてきました。このような知識や評価を総動員して臨床を行っていく目的としては、今回のテーマである慢性痛を「予防」するため、といっても過言ではありません。

    「慢性痛を持っている方に対して、どのような評価・治療を行っていくか?」ということを考えることは、非常に重要な課題です。しかし、それ以上に重要なのは、慢性痛にならないように、いかに予防していくか?になります。

    言い換えると、治療反応性の低い(なかなか良くなりにくい)方をいかに早期に発見するか?ということが、大事になります。このような治療反応性の低い方に対して、それまでと同じ治療を繰り返していても効果は望めません。

    では、どのように対応すればよいのでしょうか?

    前回のサブグループのコラムで紹介したように、治療反応性が低い方たちには、早期から特異的なアプローチが必要になります。

    慢性痛の予測因子に関する研究の紹介

    国際疼痛学会は、慢性痛の定義を「器質的な問題がないにもかかわらず、3ヶ月以上持続する痛み」としています。今回は、この慢性痛を予測する因子として、私たちが仮説生成研究として実施したものをご紹介します。

    変形性膝関節症として診断され、理学療法がオーダーされた150名を対象に、以下の初期評価を実施しました。

    ・年齢
    ・変形の重症度(K-L分類)
    ・投薬、注射、穿刺の有無
    ・能力障害(OKS)
    ・痛みに対する破局的思考(PCS)
    ・痛みに対する自己効力感(PSEQ)
    ・膝関節の身体知覚異常(FreKAQ)

    これらの初期評価の中から、慢性痛(3ヶ月後の痛みの改善度)の予測因子となるものを調査しました(図1)


    図1. 3ヶ月後の痛みを予測する因子

    その結果、図2のような結果が得られました。
    図3は図2の結果をわかりやすくしたものです。


    図2. 3ヶ月後の痛みを予測するモデル


    図3. 3ヶ月後の運動時痛の改善を予測するモデル

    図の一番右側をご覧ください。
    初期評価の段階でFreKAQが18点以上の場合、標準的な理学療法を行っても、3ヶ月後の痛みが改善しない確率が81.2%になりました。

    逆に、図の一番左側をご覧ください。
    初期評価の段階でFreKAQが17点以下で、かつK-L分類が1の場合、標準的な理学療法だけで、3ヶ月後の痛みが改善する確率が73.1%となりました。

    今回、コントロール群を置いていないため、あくまで仮説生成研究になりますが、初期評価の段階でFreKAQの下位尺度に相当するNeglectの要素、固有受容感覚の問題、身体イメージの歪みを持っているような方では、標準的な理学療法だけでは3ヶ月後の痛みが改善しにくいことが予想されました。

    つまり、初期評価時の身体知覚異常の程度が慢性痛を予想する因子になるかもしれない、という内容です。

    身体知覚と痛みの深い関係

    身体知覚については、以前のコラムでも紹介しましたが「表在・深部感覚から入力された情報を、視覚など他の感覚情報と統合させ、自身の身体の部位や身体の運動を正確に知覚し認識する能力(Blakemore et al, 1999)」と定義されています。

    膝の変形(変形性膝関節症)は、ある日突然できるわけではありません。長い年月を掛けて徐々に変性は進んでいきます。変形=痛みではありませんが、変形性膝関節症の患者さんでは、位置覚や運動覚、身体イメージに問題を持っていることが報告されていて、時間の経過とともに少しずつ身体知覚異常の問題を生成することが考えられます。

    知らず知らずのうちに、入ってくる感覚と出力している運動にギャップが生じていることが考えられます。具体的には、少しの力で済む運動に対して過剰な筋出力を生じている、伸びてない膝を伸びているように感じてしまう…など。そういう問題が大きい人ほど、なかなか痛みが改善しにくいのではないかと予想しています。

    次回は、本研究で重要なファクターとして挙がったFreKAQについて取り上げます。

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