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  3. 筋膜アプローチの効果を最大限に高めるための問診力

運動器における疼痛に対して筋膜へのアプローチを実施することは非常に効果的であることをご紹介してきました。
今回は、効果的なアプローチを行うために重要と考える「問診」について実際に私が経験したケースも交えて解説いたします。

目次

    1.筋膜アプローチを行う上で重要となる問診要素

    運動器における疼痛に対して筋膜へのアプローチを実施することは非常に効果的であることをご紹介してきました。

    今回は、効果的なアプローチを行うために重要と考える「問診」について実際に私が経験したケースも交えて解説いたします。

    まず初めに、筋膜の視点で考慮している問診のポイントとして下記の4項目を重点的に聞くようにしています。

    ①受傷機転の有無
    ②痛みの再現性の有無
    ③既往歴
    ④既往歴と痛みの時系列

    痛みを細かく評価していくためにはもっと細かく問診していく必要がありますが、私が筋膜の視点で考慮するポイントは上記の4点になります。

    「①受傷機転の有無」と「②痛みの再現性の有無」を行う目的として、運動器疼痛と、身体内部由来の疼痛のスクリーニングとして考えています。明らかな受傷機転があり、疼痛再現性がある場合は運動器由来の疼痛の可能性が高いと判断して更なる評価を進めています。

    つぎに、「③既往歴」、「④既往歴と痛みの時系列」に関する問診では、治療介入部位を決定していく際の示唆を与えてくれます。

    2.既往歴と筋膜滑走不全の問診法

    筋膜滑走不全を引き起こしている可能性のある既往歴は過去の炎症性疼痛(Cowman,2015)や、外傷(Torihashi,2015)、そのほか固定などによる不動(Okita,2004)の影響が大きく関わってくることが報告されています。したがって、既往歴に関して単に聞き出すだけでなく時系列として整理していくことも重要となってきます。

    さらに、既往歴を聞き出す際に注意するポイントをあげます。
    問診の際によくあるケースとして、クライアントは現在困っている痛みについては詳細に説明します。しかし、患部以外の情報に関しては関係ないと自己判断してしまっている事例を多く経験します。

    例として1年前に腰痛を発症したケースを取り上げてみます。(医療機関受診するも処置が必要な状況ではないと診断を受けた前提とします:下図参照)最近では、股関節部位にも痛みがあり、腰椎骨盤帯と股関節の機能障害を含んでいる可能性が示唆されます。

    ここで鍵になるのが、腰痛以前に発症している既往歴です。

    過去にさかのぼり、既往歴を聞きだすために
    「○○さん、腰や股関節の他に、足や首などにも怪我や痛みを負ったことはございませんか?」
    と掘り下げるように問診すると、

    「そういえば、3年前に首のヘルニアを指摘されたことがあります」や、「実は以前、足首を強く捻ったことがあります」など、本人が重要視していなかった既往歴に遭遇することが多くあります。

    同じ医療施設を受診していれば見落とすことはないと思いますが、他施設を受診している可能性もあるので、問診力が、症状の解釈に大きく影響してくるのです。

    3.足関節前方痛のハンドボール選手に対する筋膜アプローチ

    それでは、問診がその後のアプローチに大きな影響を与えた実際のケースをご紹介いたします。

    【症例紹介】
    ・一般情報:男子中学生、ハンドボール部に所属。
    ・経過:はじめは左足関節の前方痛があり、整形外科にて腱の炎症で疲労性のものと言われた。2週間休んで様子を見るように指示を受け、2週間部活を休んだ後に復帰したものの、痛みは変わらず、1か月後に当店へ。来店時も疼痛に変化はみられていなかった。

    【痛みの評価】
    ・疼痛部位:左長趾伸筋(NRS 6)
    ・再現痛:片脚スクワットにて誘発(足関節背屈では違和感あるも痛みなし)
    ・既往歴:2年前反対側の右下腿の疲労骨折(骨名までは覚えていない)
    ・筋膜生体力学モデルに基づいた評価(C Stecco 2012)
    →筋膜滑走性低下部位:左大腿二頭筋、両中臀筋寛骨付着部、右長腓骨筋
      (※最も滑走不全が強かったのは右側長腓骨筋)

    【評価と介入の解釈】
    痛みは左の足部であるが、既往歴と筋膜の滑走不全が一致している右長腓骨筋は筋膜生体力学モデルにおいて優先的な介入ポイントと考ました。

    アプローチとして右長腓骨筋をリリースした結果、スクワット時の痛みは消失しましたが、違和感のみやや残りました。

    今回のケースのように、左足関節に疼痛はあるものの、その原因が反対側の長腓骨筋にあると仮説を立てて筋膜アプローチを実施した結果、効果が得られたことから、両下肢を繋ぐ体幹機能に要因があると考えられました。

    このことから、長腓骨筋のリリースに加え、初期評価で検出していた両中臀筋の滑走不全に対してもリリースを行った結果、片脚スクワット動作を問題なく実施することができました。

    今回のケースを介入ポイントと介入結果から推察すると、2年前に発症した右下腿の疲労骨折をかばうために右長腓骨筋のdisuseによる筋膜滑走不全と、左大腿二頭筋にoveruseによる筋膜滑走不全が起こり、両下肢の荷重バランスが不安定になったことが予測されます。

    その不安定感をバランサーとして支えていた中臀筋にoveruseによる筋膜滑走不全が起きたことから、スクワット動作に異常がみられ、反対側の足関節前方に疼痛が発症したものと考えられました。

    4.まとめ

    私たちは疼痛など問題の起こっている場所以外に本質的な原因が隠れているケースを多く経験します。
    これらのケースに対して、筋膜の視点から問診を行い、滑走不全の起こっている部位と照らし合わせることで早期の症状改善やパフォーマンスの向上につながってきます。

    たしかに、治療技術や運動などに考えが行ってしまいますが、今回ご紹介したようなケースにおいては既往歴を中心とした問診力が非常に重要なカギとなってきますので、是非みなさんの臨床の参考にされてください。

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