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  3. 痛みの評価(問診③)痛みの経過や認識を把握することの重要性

痛みに関する問診の最終章となります。
今回は「痛みの経過」「痛みに対する認識」「現状困っていること、改善したいこと」「既往歴」「活動歴」「社会的背景」について解説いたします。
さらに、私が臨床で経験した腰痛の患者さんに対しての問診のポイントなども併せてご紹介いたします。

目次

    問診(痛みを中心)に関して、今回は「⑧痛みの経過」から解説いたします。

    ⑧痛みの経過(受傷機転)

    「最近発症した痛みなのか?」それとも「発症してから長い期間が経過しているのか?」を聴取することで急性痛か慢性痛かをおおよそ判断していきます。
    急性痛であれば組織損傷や何らかの侵害受容刺激を伴った痛みであると考えらます。しかし、経過が長い場合には痛みの認知的・情動的側面が痛みを修飾している可能性が考えられますので、問診の項目にもそれらを加味していく必要がでてきます。

    また、痛みがある部位に対してこれまで他院などで治療を行った経緯があればそれもあわせて聴取します。
    前医での治療経過や治療内容を聴取することで、対象者が真に求めていること(不安や不満に感じたこと)を推し量ります。
    さらに、効果のあった内容やそうでない治療内容を聴取することも、仮説形成の一助となります。
    加えて「対象者自身が痛みの原因を何と考えているか?」という情報も重要な項目になります。
    些細なことでも対象者の考え(何が原因で痛みが出てきたのか?)がある場合には、それを聞き逃さないようにすることが重要となってきます。

    私の体験したケース(股関節が原因で腰痛を発症した女性に対する問診)

    私が過去に経験した一例をご紹介させていただきます。
    その方は、健康のためにヨガを始めた60代の女性だったのですが、2年前にヨガで股関節を開く動き(開排動作)をした際に「股関節がグキッとなり、その後から“腰”が痛くなった」と訴えられていました。

    その後、整形外科や整骨院などに行かれていたのですが、そのことを伝えても「腰しかみてくれない」ということを最初に来院された時に仰っていました。

    その方が痛みを訴えている部位は仙腸関節付近でした。実際に、痛みのきっかけになったヨガのポーズを取ってもらうと、股関節の可動性の問題が仙腸関節へのストレスを引き起こす要因になっているようでした。

    そのため、仙腸関節のストレスを確認した後に、股関節の動きから仙腸関節のストレスを減じるように介入を行なった結果、痛みの改善を認めました。

    特殊な介入を行なったわけではありませんが、その方は「股関節が原因だ!」とずっと感じていたため、自分が原因と感じていた部分から介入してもらうことで、痛みが良くなったという経験がさらに治療への効果を高めたと考えられました。

    そういった痛みを修飾している要因・背景には、その人の「痛みに対する認識」が強く影響します。その点について次の「⑨痛みに対する認識」でみていきましょう。

    ⑨痛みに対する認識

    自身が抱えている痛みをどのように認識しているかということ重要な問診項目となります。
    「自身の痛みを改善することは難しい」と感じているのか、それとも「改善する余地がある」と感じているのか。
    また、「痛みがあってもある程度のことができる」と感じているのか?できないと感じているのか?・・・。

    このような痛みに対する認識については痛みの破局化、恐怖心、自己効力感などとして表現されます。
    これらを詳細にみていく場合には、以前紹介したようなスクリーニングツールを利用するのも方法の一つとなります。

    ⑩現状で困っていること・改善したいこと

    問診で痛み関連因子について尋ねることは重要ですが、痛みによって、もしくは痛みが関連することで困っていること、改善したいことを聴取するのが最も重要になります。

    多くの方は痛みがあるから医療機関などを受診するというより、痛みによって日常生活(家事に支障をきたす、寝れない…など)や仕事などに支障をきたすことが受診の動機になっていることが多いと感じています。

    したがって、「現状で困っていること・改善したいこと」を評価-治療のアウトカムとして、それに痛みがどのように関与しているか?という視点でみていくことが必要になります。

    ⑪既往歴

    整形外科疾患の既往はもちろんのこと、内科疾患の既往や出産歴などについても聴取します。
    特に、外科的な処置が加えられた部位については、疾患に関わらず注意して聴取する必要があります。

    それらの既往歴が現病歴の部位の痛みに関与しているかどうかを見極めるためには、時間軸の中で整理していくことが重要となります。

    加えて、それらの既往や現病歴に対して用いている内服薬の情報なども合わせて聴取しましょう。薬の種類、量、頻度など、どういった目的で、何のために処方された薬なのかを、それらの情報から類推していきます。

    ⑫活動性(職業・趣味など)

    明らかな受傷機転が認められない場合には、職業上の動きや趣味での活動が関与していることもあります。
    そのような場合、「仕事や趣味の中で、どのような動きをどの程度しているのか?」という点も聴取する必要があります。

    それらの情報から痛みの部位や性質と絡めてメカニカルストレスを推察します。
    また、痛みがある中でどの程度活動できているか?という点も重要となります。
    痛みへの対処という点で、痛みがある中でも「活動を維持できているのか?」それとも「活動することが困難であるのか?」を聴取します。

    例えば、手術前に活動性が低い方(痛みへの対処がpoorな方)では、術後遷延痛のリスクになることなども報告されています。

    ⑬社会的背景(事故・ライフイベントなど)

    事故や業務災害などが原因となった疾病利得が存在する場合には、対象者にとってその痛みを持ち続けることが生活上重要な意味を持つことがあります。
    また、結婚、出産、育児、配偶者や親族の死別などの人生における大きなライフイベントが症状と関連していることもあります。

    これらは経過を追っていく中で患者との関係性が出来てきたら少しずつ対話の中で掘り下げていくといいかもしれません。

    慢性的な痛みを訴える方の場合、“痛み行動”を取ることによって何らかの報酬を得ている例も少なくありません(痛いことで部活・仕事を休める、痛みがあることで旦那さんが家事を手伝ってくれる…など)。

    明らかに経過が長い例(通常の組織治癒期間を超えて長引く痛み)の場合には、そのような点についても配慮が必要となってきます。

    問診のポイント

    これまで紹介した問診の項目については、全ての対象者に一度に聞けないにしても、少しずつ聞き出しながら情報の整理に用いていただけるといいかもしれません。知識・技術も重要ですが、患者さんのstoryをしっかりとまとめる意味でも、問診に重きを置いていただくのは成長への大きな一歩になると感じています。

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