安全とされる腱板への負荷量
筋電図による%MVCを用いた筋活動の評価では,Smithらは0〜20%MVCをLow Activity,21〜40%MVCをModerate Activity,41〜60%MVCをHigh Activityと定義しています1).
Low Activityである0〜20%MVC は,腱板修復術後早期に安全に行えると認識されている肩関節他動運動時の筋活動量に相当するとされています2).
The American Society of Shoulder and Elbow Therapists’(以下,ASSET)は,ARCR後早期においてはLow Activityの中でも,再断裂を防ぐためには,修復腱板における筋活動量は15%MVC以下に留めるべきであるとしており3),この15%以下のMVCの運動には,Codman excreciseいわゆる振り子運動や,テーブルスライドといった自重を除去した運動が含まれます.
ですので,ARCR後早期に,自主的なROM訓練を行なってもらう際には,上記のような運動を指導するのが適切であると考えられます.
図1. 棘上筋・棘下筋の筋活動が15%MVC以下の運動
時期ごとに適した運動療法とは
以前のコラム「肩腱板修復術におけるリハビリテーション|腱板の治癒過程・強度について」でも紹介しいますが,修復した腱板の破断強度は術後2週で正常の約30%程度,術後3ヶ月で約50%程度,術後6ヶ月でも約80%程度と,術後半年でも正常腱板の破断強度には及びません4)5)6).
ですので,その時期ごとに合わせたROM訓練や運動療法の選択が必要になってきます.
ASSETは,ARCR後6週目までは修復部への負荷を最小限に抑える,6週から12週までは自動介助運動→自動運動→軽い抵抗運動へと段階的に進める,12週から20週までは筋肥大と機能的な作業を可能にする,20週から26週までは筋力・筋持久力の回復を得る,といったように段階的に進めていくべきとしています3).
具体的には以下のような運動療法の選択を推奨しており(図2),当院においてもこの内容を参考に後療法を設定しております.
図2. ASSETが推奨するARCR後の運動療法 文献3より引用改変
施設によって違いはあると思いますが,概ね外転装具が除去される術後4週から6週あたりで自動運動の許可が出ることが多いのではないでしょうか.
しかし,抗重力位での自動屈曲や外転動作は安全とされる15%MVCを超える動作となり得るため,この時期には積極的に自動屈曲や外転運動を行うのではなく,可動域の確認程度にとどめるべきと考えます.
また,腱板に対する等尺性収縮を術後早期から行う施設も少なくないと思いますが,抵抗の力が強すぎると自動運動よりも大きな筋活動を伴うため注意が必要です.
上記を参考にしながらも,「疼痛が残存する」「他動可動域の獲得が遅れている」「代償動作がある」といった場合は無理に運動療法を進行していくべきではない3)ため,疼痛のない他動可動域の獲得を優先すべきと考えます.
また,腱板の断裂サイズや状態など個人によってさまざまであり,主治医と相談しながら構造的な観点からも検討していく必要があります.
図3. ARCR後における段階的な運動療法の例 文献3より引用改変
疼痛やROM制限,代償動作の有無,術中の腱板の状態を把握した上で,主治医と相談しながら進めていく
ARCR後の動作における筋活動の報告は,今回紹介した報告以外にも数多く報告されています.
筋電図の結果に関しては,解釈に注意する必要はありますが,運動療法の選択や患者への動作指導や説明において,これらの内容を知っておくことは有用であると考えます.
今回の内容が,みなさまの臨床の一助になれば幸いです.
【参考文献】
1) J Smith, et al. Electromyographic activity in the immobilized shoulder girdle musculature during contralateral upper limb movements. Journal of Shoulder and Elbow Surgery. 13(6);583-588,2004
2) Dockey ML, et al. Electromyography of the Shoulder: An Analysis of Passive Modes of Exercise.Orthopedics 21; 1181-1184,1998.
3) Charles A. Thigpen, et al. The American Society of Shoulder and Elbow Therapists’ consensus statement on rehabilitation following arthroscopic rotator cuff repair. JSES 25;521–535, 2016.
4) Miyahara H, et al. A morphologic and biomechanical study on the healing of the repaired rotator cuff insertion in dogs: a preliminary report. In: Post M, Morrey BF, Hawkins RJ, editors. Surgery of the shoulder. St. Louis: Mosby; 224–227, 1990.
5) C Gerver, et al. Experimental Rotator Cuff Repair.Experimental rotator cuff repair: a preliminary study. J Bone Joint Surg Am; 281–90, 1999.
6) AH Jebaschi, et al . Biomechanical, Histologic, and Molecular Evaluation of Tendon Healing in a New Murine Model of Rotator Cuff Repair. Arthroscopy; 1-11, 2017.