効果的な評価や治療を行う上で、「問診」は非常に重要です。今回は痛みに関する問診を行う際のポイントを皆さんにご紹介します。
単に、スクリーニングツールを用いるだけでなく、疼痛の原因を明確にするために定量的な評価だけでなく、定性的な評価を取り入れるために詳細な聞き取りを行う必要があります。

1.問診の本来の目的を理解することで評価スキルが向上する。

前回まで痛みの要因を識別していくためのスクリーニングツールについて紹介しました。 しかし、スクリーニングツールを使用するだけでは「運動恐怖が強い」「痛みに対する自己効力感が低い」「破局化が強い」ということは分かっても、なぜそのように感じているのか?という要因を明確にできるわけではありません。 その意味でも各種スクリーニングツールに加え、詳細な問診を行なっていく必要があります。

問診には痛みの「要因」を推察する問診に加え、痛みを「修飾」している因子を見出すための問診があります。 問診で得られた情報により、不要な徒手的検査を省くこともできるため、丁寧に問診を行うことが対象者の訴えを改善していく最善の手段になります。

問診を通して、その後に必要となる評価・治療を選択するための意思決定を私たちは行います。 しかしながら、問診を通して患者自身もその都度、意思決定を迫られています(図1)。 私たちが痛みの強さにアウトカムを置いた問診を行えば、患者にとってのアウトカムも痛みの強さに引っ張られてしまいます。

そういった意味から、問診も立派な評価スキルの一部ですので、患者の特性を見極めながら、どのような順番でどの項目を聴取するかなど、注意を払う必要があります。

図1. 問診をする側とされる側の意図の違い

2.私の問診の捉え方と実施内容の紹介

こちら(評価する側)が聞いた内容に対して、相手は常に意思決定を迫られています。 その度に、普段はあまり考えたことがなかったようなことに対して注意が向き始めます。 それがプラスに働くことも、時としてマイナスに働くこともあります。 言葉を投げかけられることで、相手の心の中には様々な感情や想いが生まれてきます。 「誰のためなのか?」、「何のための問診なのか?」を常に意識しながら、言葉を丁寧に使わなくてはいけないと自分にも言い聞かせるようにしています。

私が臨床の中で聴取している問診の項目は以下になります。これらの詳細について、Part6の中で紹介させていただきます。

【問診で聴取する項目】 (1)痛みの部位 (2)痛みの強さ (3)痛みの種類 (4)痛みの性質・場面 (5)痛みの再現性 (6)痛みの変動 (7)痛みが増減する姿勢・動作 (8)痛みの経過 (9)痛みに対する認識 (10)現状で困っていること・改善したいこと (11)既往歴 (12)活動性 (13)社会的背景

(1)痛みの部位の問診方法

痛みの部位を聴取する際には、こちらが尋ねるだけでなく、患者自身に痛みの部位を示してもらうことでより客観化することができます。 その際に、Body chartなどを活用するのも有効です(図2)。 また、難治性の痛みを抱えているような対象者の場合には、痛みがある部位をどのように感じているかを客観化するためのdrawingも有用となります(図3)。 痛みの部位の問診を通して、その訴えがfinger signのように局在性のものであればそこにある組織由来palm signのように広範性に訴える痛みであれば関連痛や神経障害性疼痛を疑います。

図2. ボディーチャート 対象者に痛みがある部位を図示してもらいます。 言葉だけでは伝わらないものも、図示してもらうことで、意外な部位に痛みの訴えを抱えていることもあります。

図3. 患部の図示 左図:右手関節骨折だが問題なし 中図:左手関節骨折.前腕から遠位が腫れているように感じている 右図:右足関節骨折.足関節が無いように感じていて,遠位の足部が無いと感じている (Hall J, Llewellyn A, Palmer S, Rowett-Harris J, Atkins RM, McCabe CS: Sensorimotor dysfunction after limb fracture – An exploratory study. Eur J Pain 20: 1402-1412, 2016.より改変引用)

(2)痛みの強さの問診方法

痛みの強さ(程度)について聴取します。 Visual Analog Scale(VAS)Numeric Rating Scale(NRS)を用いて、可能な限り痛みの強さを客観的な指標で残しておくと良いです。 その際、注意しなければならないのは、『「VASやNRSが高いから問題である」、「低いから痛みがそんなに強くない」という解釈をしない』、ということが大事になります。

以前の私がそうだったのですが、痛みの程度が低い場合には、「あまり問題ではないのかな?」と安易に捉えていましたが、痛みの程度が低いから良いというわけではなく、その経時的変化を追うことが重要になります。

仮に、痛みの訴えが強くなくても、その程度が経過を追う中で変わらないとなれば、そのことが問題となります。 そもそも、痛みの感じ方は人によって、その感受性が違うため、同一の刺激でも捉え方は様々です。 特に、介入(治療)をしている場合には、「それによってどのような変化があるのか?」を日・週・月単位で追っていくことが重要になります。

また、VASやNRSといった指標は簡便ではある一方、介入の度に痛みの強さを強調した問診をしていると、患者自身の価値観も痛みの強さが治まることが目的となってしまうため、その点には注意しなければいけません。 VASやNRSについては、コラム5-1でも紹介していますので、評価方法などの詳細はそちらをご参照ください。

次回からは問診の続きについて紹介していきます.

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