【前回のコラム】
肩甲下筋の機能を反映する動きとは
佐原らは,肩甲下筋断裂を反映する筋力測定の方法として,腱板断裂患者186名200肩を対象に下垂位内旋,belly-press test,Napoleon testの肢位(図1)においてMicro FETを用いた筋力測定を行い,術中の肩甲下筋の断裂範囲との関連性を検討しています.
その結果,belly-press test,Napoleon testが術中初見と相関を認めたが,belly-press testは検者間信頼性が低かったと報告しています.1)
このことから,信頼性が高く,肩甲下筋腱の断裂範囲と相関する方法はNapoleon testであると考えられます.
この研究では,全て下垂位での動作であるため肩甲下筋の中でも特に上部線維を反映していると考えられます.
これらの動作で疼痛や過度な筋力低下を認める場合は,肩甲下筋上部線維の損傷や断裂を疑う必要があると考えられます.
a:下垂位内旋, b:belly-press test, c:Napoleon test
※黄色矢印は力を加える方向を指す
(図1)肩甲下筋の筋力測定における肢位:文献1より引用改変
肩甲下筋を選択的にトレーニングするには?
Karen A et al,は,肩甲下筋の選択的トレーニングとして,下垂位内旋,抗重力位での2nd内旋,臥位での2nd内旋,belly-press test,lift-off testの5つの肢位での筋活動を測定しています(図2).
その結果,その他の筋活動を抑え,最も肩甲下筋を選択的にトレーニングできる方法はberry-press testであると報告しています.
これらのことから,肩甲下筋上部線維を選択的にトレーニングしたい場合は,belly-press testのように,下垂位かつより短縮位でのトレーニングを行う事が良いと考えられます.
個人的には,berry-press testのように,腹部に当てたボールを潰す事で肩甲下筋の筋力訓練を行なっています.
a:下垂位内旋, b:抗重力位での2nd内旋, c:臥位での2nd内旋, d:berry-press test, e:lift-off test
(図2)測定肢位とその結果:文献2より引用改変
より肩甲下筋の筋力向上を図るには?
Michael J et al,は肩甲下上部と下部線維に分け検討しています.
①Dynamic hug
②Forward punch
③diagonal
④プッシュアップ(腕立て伏せ動作)
⑤下垂位内旋
⑥屈曲45°での内旋
⑦屈曲90°での内旋
以上7つのタスクでの肩甲下筋上部・下部の筋活動を測定しています(図3).
その結果,肩甲下筋上部・下部どちらにおいても最も筋活動が高かったのはプッシュアップ(腕立て伏せ動作)であったと報告しています.3)
より肩甲下筋の筋力アップを図りたい場合は,腕立て伏せを行う事で肩甲下筋上部・下部線維ともに筋力の向上が図れるのではないでしょうか.
(図3)Dynamic hug,Forward punch,diagonalエクササイズ:文献3より引用改変
今回,肩甲下筋の動きを反映する動き,またトレーニング方法などについてご紹介させていただきました.
肩甲下筋に関しては,まだ分かっていない事が多い筋の一つですが,今回の内容が皆様の臨床の一助になれば幸いです.
【参考文献】
1. 佐原亘ら.肩甲下筋腱の断裂範囲を反映する筋力測定の検討 .JOSKAS 45; 591-595, 2020
2. Karen A, et al. Is subscapularis recruited in a similar manner during shoulder internal rotation exercises and belly press and lift off tests?. Journal of Science and Medicine in Sport. 20(6);566-571, 2017.
3. Michael J, et al. Subscapularis Muscle Activity during Selected Rehabilitation Exercises. THE AMERICAN JOURNAL OF SPORTS MEDICINE 31(1); 126-134, 2003.