【理学療法士】呼吸器内科での仕事内容とは?呼吸リハビリの魅力を解説

お気に入り数 1
XPERT XPERT 管理者

「理学療法士は呼吸器内科でどんな仕事をするの?」
「呼吸リハビリに携わる魅力って?」
日本生活習慣病予防協会の統計によると、40歳以上の慢性閉塞性肺疾患の患者数は約530万人とされます。
また、健康日本21(第2次)において慢性閉塞性肺疾患は、がん・循環器疾患・糖尿病と並んで対策が必要な生活習慣病の一つに挙げられるほど。
つまり、呼吸器疾患の患者さんが理学療法の対象になることは多く、仕事内容や呼吸リハビリに携わる魅力について気になる人も多いでしょう。
特に呼吸器内科では「投薬」と「呼吸リハビリ」の2つが治療の柱。
そんな2本の柱のうち、理学療法士は「呼吸リハビリ」の中で大きな役割を果たすため、存在意義は大きいと言えます。
そこで本記事では、呼吸器内科で働く理学療法士が対象にする患者さんや評価方法、治療について解説。呼吸リハビリに携わる魅力を紹介します。
呼吸リハビリの分野で働きたいと考えている人はぜひ参考にしてみてください。

理学療法士が行う呼吸リハビリとは?

普段、何気なく使っている「呼吸リハビリ」という言葉ですが、改めて定義と目的の2つを整理しておきましょう。

 
 

呼吸リハビリの定義

日本呼吸ケア・リハビリテーション学会によると、呼吸リハビリは以下のように定義されています。

 

【呼吸リハビリの定義】

呼吸リハビリテーションとは、病気や外傷によって呼吸器に障害が生じた患者さんに対して、可能な限り機能を回復し、あるいは維持することによって、症状を改善し、患者さん自身が自立した日常や社会生活を送れるように継続的に支援する医療です。

医師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、薬剤師など多くの医療専門職がチームを組み、最新の情報を共有しながら一丸となって、呼吸器の障害で悩まれている患者さんのADL(日常生活活動)やQOL(生活の質)の維持・向上を目指しています。

 

「理学療法=リハビリ」とイメージする人もいますが、本来の意味から考えると誤りです。

 

リハビリテーションとは「全人間的復権」と訳され、その人があるべき姿や尊厳を回復するためのプロセスを指します。

 

つまり呼吸リハビリとは呼吸器障害の患者さんに対し、他職種が連携して症状を改善させ、自立した日常や社会生活を送れるように支援することであり、理学療法はそのごく一部なのです。

 

 

呼吸リハビリの目的

呼吸リハビリの目的は、呼吸器に障害を抱えた患者さんに対し他職種が連携して機能を維持・回復して、自立した日常・社会生活を送れるように継続的に支援することです。

他職種が連携して患者さんをサポートするために、呼吸リハビリではチームが構成されます。

代表的な例を挙げると以下の通りです。

例)【呼吸リハビリのチーム|職種別の役割】

 

呼吸リハビリで重要なことは各職種の専門性を活かし患者さんに向き合って、課題を一つ一つ解決していくことでしょう。

 

 

呼吸リハビリの対象となる疾患|呼吸器内科

呼吸器内科では投薬を中心とした内科的治療と並行して、咳や痰、呼吸困難などの症状に対して呼吸リハビリを実施します。主な対象疾患は以下の通りです。

 

【呼吸リハビリの対象】

  • 慢性閉塞性肺疾患(COPD)|慢性気管支炎・肺気腫
  • 間質性肺炎
  • 誤嚥性肺炎
  • 気管支喘息

 

それぞれの疾患について順番に紹介します。

 

 

慢性閉塞性肺疾患(COPD)|慢性気管支炎・肺気腫

慢性閉塞性肺疾患(以下COPD:chronic obstructive pulmonary disease)とは主に喫煙などの生活習慣を原因として、慢性の気管支炎や肺気腫を起こす肺の炎症性疾患です。

 

気管支が狭くなったり肺胞の組織が壊れたりするため、ガス交換が上手くできなくなり、患者さんは慢性的な酸素不足に陥ります。

 

COPDは40歳以上の罹患者数が530万人とも言われ、呼吸リハビリの主要な疾患と言えるでしょう。

 

 

間質性肺炎

間質性肺炎とは肺の「間質」と呼ばれる部分に炎症が起こり、肺胞壁が肥厚・硬化するためガス交換が上手く行えなくなる病気の総称で原因によって以下のように分類されます。

原因によって内科的治療の方法が異なりますが、息切れや咳などの呼吸器症状に対してリハビリを行います。

 

 

誤嚥性肺炎

誤嚥性肺炎は水や食べ物などが肺に誤って入ってしまうことで細菌が増殖して起こります。

特に高齢者が肺炎にかかった場合、70%が誤嚥性肺炎と言われており、発熱・痰・咳などの風邪に似た症状から気がつかずに放置すると命を落としてしまうことも。

 

さらに高齢者の場合は予備能力が少ないため、肺炎の治療で安静や絶食が長引いてしまうと、すぐに日常生活動作能力が低下し、寝たきりになる可能性があります。

従って誤嚥性肺炎では、呼吸器症状だけでなく廃用症候群に対するアプローチも重要です。

 

内科的治療と並行して、理学療法士は呼吸練習や筋力増強運動、日常生活活動練習などを患者さんの病態にあわせて実施します。

 

 

気管支喘息

気管支喘息とはアレルギーが原因の炎症で気管支が狭窄し、喘鳴や咳、呼吸困難などの症状が出現するものです。

 

原因としてハウスダスト・ペットの毛・花粉などが挙げられ、気管支拡張薬や吸入などの投薬治療が中心ですが、重症の場合には呼吸リハビリを実施することがあります。

 

 

呼吸リハビリで必要な評価とは?

呼吸器疾患に関する3学会が合同で制定した呼吸リハビリテーションに関するステートメント(2018)によると、呼吸リハビリで行うべき評価を以下のようにしています。

このように評価項目は多岐にわたるため、次章からは「必須の評価」に絞ってポイントをみていきましょう。

 

 

フィジカルアセスメント

フィジカルアセスメントとは、問診・視診・触診・打診・聴診を通じて患者さんの状態を評価して把握することです。

理学療法士が行う評価の中では最も基礎的なものですが、特に呼吸リハビリにおいては以下のようなポイントに注意して進めると良いでしょう。

 

 

スパイロメトリー

スパイロメーターを用いて肺機能を検査します。特に重要になるのは以下の2つです。

 

【診断に重要なもの】

  1. %肺活量:年齢・身長から予測される肺活量に対する割合
  2. 1秒率:努力肺活量に対する1秒量の割合

 

正常は%肺活量が80%以上かつ1秒率が70%以上の場合。

 

%肺活量が80%未満の場合は肺が上手く拡張せず息が吸いにくい「拘束性障害」と呼ばれ、間質性肺炎・気胸・特発性肺線維症・じん肺症などが疑われます。

 

一方、1秒率が70%未満の場合は気道が狭窄し息が吐き出しにくい「閉塞性障害」で、肺気腫・気管支喘息・COPDの可能性が高いです。

 

さらに%肺活量が80%未満かつ1秒率が70%未満だと両方が混在する「混合性障害」の可能性が考えられます。

 

まとめると以下表の通りです。

【%肺活量と1秒率から診断】

 

 

胸部単純X線写真・心電図

X線写真で肺の炎症や左右差、気管狭窄または拡張、無気肺などの有無を確認し、リスク管理や呼吸リハビリの計画に活かします。

 

また、心疾患の場合でも息切れやぜい鳴などの呼吸器症状が出現することがあり、肺疾患との鑑別のために画像所見や心電図のチェックも重要です。

 

 

呼吸困難

呼吸困難がどの程度の活動で生じるのかを確認します。

 

さまざまな評価手法がありますが、現在最も標準的に使用されているのは「mMRC」と呼ばれる評価尺度で、詳細は以下表の通りです。

 

【mMRC(modified Medical Research Council)】

 

息切れが生じる度合いによって5段階に分類されます。

それぞれどのグレードにあてはまるのか確認してみましょう。

 

 

経皮的酸素飽和度(SpO2)

経皮的酸素飽和度とは動脈血中のヘモグロビンと酸素が結合した割合を示したもので、主にパルスオキシメーターという機材を手指や足指に装着して測定。

 

日本呼吸器学会「よくわかるパルスオキシメーター」によると、SpO2の値は以下のように分類できます。

 

【パルスオキシメーター基準値】

  • 正常: 96〜99%
  • 呼吸不全:90%未満

 

パルスオキシメーターは、血中の酸素飽和度を簡便かつ持続的に測定できることから、多くの施設で採用されています。

 

ただし、末梢循環障害・爪の汚れ・マニキュア・体動による影響を受けることがあり、測定の際には注意しましょう。

 

 

日常生活動作

患者さんの日常生活動作(以下ADL)を確認します。

特に呼吸器疾患の患者さんでは、動作時の呼吸困難が生じるためにADLが制限されていることがほとんどです。

 

ADLがどの程度制限され、呼吸困難がどのくらいの動作で起こるのかを確認しておきましょう。

 

 

フィールド歩行試験

フィールド歩行試験とはある特定条件下の歩行時間を測定し、患者さんがどのくらいまで運動に耐えられるか(=運動耐用能)を検査します。

 

代表的なものに6分間歩行テストやシャトルウォーキングテストがあり、検査結果は患者さんへの運動処方や呼吸リハビリの効果判定に有用です。

 

 

歩数

呼吸リハにおいては身体活動の重要性が指摘されており、歩数計を用いた目標設定や活動量の自己管理が身体活動性を高めるという報告があります。

 

そのため歩数計(万歩計)を患者さんに使用し、1日どれくらい歩行しているのかを確認しておきましょう。

 

歩数を把握することで目標設定を行い、患者さんの身体活動量を少しずつ増やしていく必要があります。

 

 

握力

握力は簡便かつ客観的な数値が測定できる筋力テストです。

全身の筋力と相関が強く、呼吸困難による安静や活動制限でどの程度筋力低下がみられるのかを確認します。

 

 

呼吸リハビリの手段と効果

ここまで呼吸リハビリに必須の評価について解説しました。

本章では理学療法士が呼吸リハビリで実際に行う手段と効果を紹介します。

主なものを挙げると以下の通りです。

 

【呼吸リハビリの手段|理学療法士】

  • 呼吸練習・胸郭可動域運動
  • 排痰法
  • 筋力増強運動
  • 運動療法

 

それぞれ詳しくみていきましょう。

 

 

呼吸練習・胸郭可動域運動

呼吸器疾患の患者さんは多くが首や肩の筋肉を使った「胸式呼吸」となっており、深い呼吸ができません。

そのため1回に取り込む酸素量も少なく息切れがしやすい状態です。

 

そこで理学療法士は呼吸練習として、以下の表のような「口すぼめ呼吸」と「腹式呼吸」を指導し、呼吸困難や息切れを軽減させます。

 

【呼吸リハビリで指導する呼吸法について】

 

また、患者さんの多くは胸郭自体が硬く呼吸がしにくくなっているため、呼吸練習と並行して、胸郭の可動域を拡大するための運動が重要です。

 

 

排痰法

呼吸器疾患で痰がうまく出せない状態になると息切れや感染の原因になるため、以下のような方法で排痰を促します。

 

【痰の排出を促す方法|排痰法】

  • ハフィングと咳
  • 器具を使った自己排痰法
  • 呼吸介助法

 

ハフィングとは深呼吸後に口を「ハ」の形にして声を出さずに息を「ハッ!ハッ!ハッ!」と素早く吐き、喉元に溜まった痰を押し上げる方法です。

痰が喉元まで上がってきたら咳を数回すると排出できます。

 

また「アカペラ」という器具を使った排痰法も。

器具を口にくわえて息を吐くと、中のシーソー式バルブが振動し抵抗が発生し、圧力で気道が拡張して痰が排出しやすくなります。

 

さらに、理学療法士が呼吸介助で排痰を促すことも可能です。

 

具体的には、患者さんが息を吐く時に理学療法士が両手で胸を絞りこむように介助するスクイージングという方法を用います。

 

 

筋力増強運動

患者さんは呼吸障害が続くことで、呼吸筋が弱くなります。

 

そのため、腹部に錘をのせて持ち上げるように呼吸する「腹部重錘負荷法」や器具(パワーブリーズなど)を用いた方法で筋力を強化しなければなりません。

 

筋力が回復すると呼吸がしやすくなり、ADLの改善が図れます。

 

 

運動療法

呼吸器疾患の患者さんでは、全身の身体活動性を高めるための運動療法は非常に重要です。

 

例えば、玉木彰:身体評価に基づいた呼吸理学療法の進歩;理学療法学(45)2018によると、COPD患者では1日に60分以上活動している人は20分未満の人に比べ、再入院のリスクが低いことを紹介。

 

さらに、佐伯覚ら:他動的関節運動が呼吸機能に及ぼす影響について;リハ医学(28)1991によれば、他動的関節運動を行うと分時換気量およびエネルギー代謝の向上がみられたとしています。

つまり積極的な運動が難しい重症患者さんでも、他動的な運動で呼吸機能の改善が図れる可能性があると言えるでしょう。

 

そのため、理学療法士は全身持久力トレーニングや四肢・体幹の筋力増強運動、ストレッチ、関節可動域運動などの運動療法を実施します。

 

さらに、ウォーキングなど患者さんが日常生活の中で取り入れられる全身運動を指導しましょう。

 

 

呼吸器内科で理学療法士として働く魅力とは?

呼吸リハビリに携わる理学療法士には正確な「フィジカルアセスメント」が必要とされます。

 

呼吸器疾患を抱える患者さんの状態を問診・視診・触診・打診・聴診を駆使して把握し、ADLを改善するための適切な運動プログラムを立案します。

 

理学療法士として活躍するフィールドはさまざまですが、呼吸器内科で身に付く「フィジカルアセスメント」の経験は、特に高齢者リハビリやスポーツ分野をはじめとしたあらゆる分野で役立つでしょう。

 

さらに職場での経験を活かして認定資格である「3学会合同呼吸療法認定士」を取得できればスキルアップが図れます。

 

フィジカルアセスメントの経験と3学会合同呼吸療法認定士の資格取得で、理学療法士として基礎的なスキルを伸ばせることが、呼吸器内科で働く魅力の一つと言えるでしょう。

 

 

まとめ|呼吸器内科で働こう

本記事では呼吸器内科で働く理学療法士の仕事内容や魅力を紹介しました。

 

呼吸リハビリでは、医師・看護師・理学療法士・臨床工学技士・薬剤師・管理栄養士などの多職種がそれぞれの専門性を活かし、患者さんの本来あるべき姿や尊厳を回復させます。

 

中でも理学療法士は毎日のように患者さんに直接関わり、ADL改善に向けた支援を行うため、呼吸リハビリにおいて重要な役割を担うと言えるでしょう。

 

また、呼吸器疾患の患者さんをしっかり診ることで、理学療法士の必須評価スキルである「フィジカルアセスメント」が身に付きます。

 

ぜひ本記事の内容を参考に、理学療法士として呼吸器内科で働くことも検討してみてください。

企業への質問

この機能を利用するには、ログインが必要です。未登録の方は会員登録の上、ログインしてご利用ください。

この記事に関連するタグ

興味のあるタグをフォローしておくことで、自身のフィードに関連するセミナーやコラムを優先的に表示させることができます。 (無料会員機能。 登録はこちら )

執筆者の他のコラム