本稿では合意形成手法である以下3つの概要について述べていく。
・paternalism:パターナリズム
・informed consent(IC):インフォームドコンセント
・shared dicision making(SDM):共有意思決定

Paternalism

医学の歴史の中で医師の言葉は正しく,完全で,最終的であり,従うべきものとして受け入れられてきた歴史的背景1)がある.

Charlesら2)はこの根底にあるいくつかの仮定として4つ挙げている.

  

1にほとんどの病気について単一の治療法が存在し,医師は一般的に最新かつ有効な臨床的思考に精通していることが挙げられる.

  

2として医師は利用可能な最良の治療法を知っているだけではなく,自分の患者の治療法を選択するときにこの情報を一貫して適用することも考えられている.

  

3に専門知識と経験のために,医師は異なる治療間のトレードオフを評価し,治療の決定を下すのに最適な立場にあること.

  

4に患者の福祉に対する専門的な関心のために,医師は各治療の決定に正当な投資をしていたことを挙げている.

  

上記の概念を示すパターナリズムとはWeiss3)によると患者の利益を理由に正当化される,患者の行動の自由に対する医師による干渉として定義される.

医師の立場が優位であった歴史的背景のため,パターナリズムが適用されていたが,疾患の数が増加するにつれ,最善の治療法が見当たらないことが出来くることがあり,1980年代以降パターナリズムの考え方に対する信頼性が疑問視されることとなる.

  

   

informed consent

医学人体実験が正当化される条件を示したニュルンベルク網領が1947年に発表された.その中でICに発展する同意要件および説明要件のセットが示され,ICの考え方が広まることとなる.

  

インフォームドコンセントとは,医師および患者の間の積極的な協力のプロセスを通じて,患者の自律性と医学的決定の理解を高めることを目指すモデルとされている4)

ICは特に医療倫理4原則として挙げられている(自律性の尊重,無危害,善行,正義)中の自律性の尊重を具現化としたものと考えられている5)

  

またICは医学的な決定を行うための教育としての意味合いも含まれる一方で医療訴訟を防ぐ目的として同意をとる傾向があり,単に同意をとることが目的となってしまうことがある6)

  

ICの5つの要素として自発的な意志,(物事を受け入れる)能力,開示,理解,決定を挙げており7),同意をとることが目的とならないようにICの中に上記5つをふまえて行っていく必要がある.

  

   

shared dicision making

SDM」という概念が研究文献に登場するようになったのは1997年のCharles8)の論文がきっかけとされている9)

  

SDMとは医療者と患者のパートナーシップを背景に,コミュニケーションツールなどを使用して,例えば治療に関連する適切なアプローチを決定することを目的とした両当事者間の相互作用である10)

  

主な特徴としては以下の4つを挙げている8).

1)少なくとも2人の参加者(医師と患者)が関与すること
2)両当事者が情報を共有すること
3)両当事者が望ましい治療法についてのコンセンサンスを構築するための手順を踏むこと
4)実施する治療法について合意に達すること

  

ICとSDMを用いた合意形成の過程におけるそれぞれの違いについて,中山11)I Cでは「同意した・しない」の結果が重視されるのに対し,SDMでは患者と医療者が共有する過程それ自体と両者の関係の構築が重視されると述べている.

   

   

まとめ

本稿では3つの合意形成手法を中心に歴史的背景および概要について簡単に説明した.

これら3つの合意形成手法に関して日々の業務や臨床の中でも誤って用いていることが少なくない.

  

またそれぞれの手法に関しては時と状況によっては使い分ける必要がある.

上記を踏まえた上で臨床の中でその場にあった合意形成を行うことが非常に有用であると考える.

   

  

【共著】

横山 広樹(関西医科大学くずは病院 リハビリテーション科 理学療法士)

  

  

 【引用文献】

1) De M:Towards defining paternalism in medicineVirtual Mentor6(2)55572004
2) Charles C,Gafni Aet alDecision-making in the physicianpatient encounter: revisiting the shared treatment decisionmaking modelSoc Sci Med49(5)651611999
3) Weiss GB: Paternalism modernisedJ Med Ethics11(4)1841871985
4) Ali V.Consent forms as part of the informed consent process: moving away from "medical Miranda"Hastings Law J54(5)1575-912003
5) 岡本珠代:インフォームド・コンセントの50年.人間と科学,県立広島大学保健福祉学部誌.101):1―8,2010. 
6) Brenner LH,Brenner ATet alBeyond informed consent: educating the patient Clin Orthop Relat Res467(2)3483512009
7) del Carmen MG,Joffe Set alInformed consent for medical treatment and researcha reviewOncologist10(8)636412005
8) Charles C,Gafni Aet al Shared decisionmaking in the medical encounterwhat does it mean? (or it takes at least two to tango)Soc Sci Med44(5)681921997
9) Stiggelbout AM, Pieterse AHet alShared decision making:Conceptsevidenceand practice Patient Educ Couns98(10)117292015
10) Hauser K,Koerfer Aet al OutcomeRelevant Effects of Shared Decision MakingDtsch Arztebl Int .112(40)665-712015
11) 中山健夫:エビデンスに基づくリスク・ベネフィットのコミュニケーション:SDM〈共有意思決定に向けて〉,YAKUGAKU ZASSI 1383313342018

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