今回は,前十字靭帯再建術 (Anterior Cruciate Ligament Reconstruction: ACLR) 後のジョギングについて紹介していきます.
ACLR後の最初の大きなイベントとしてジョギングがあげられると思います.実際,とても凄く楽しみにしている方や,待ちわびている方も多いですよね.
そこで,ACLR後のジョギングの開始時期はいつが妥当なのか,またジョギングの開始基準 (許可する基準) にはどういった基準が用いられているのかを説明していきます.

ACLR後のジョギングの開始時期

ACLR後のジョギングの開始時期

まずACLR後のジョギングの開始時期について触れたいと思います.

ACLR後の患者さんにとっては,大きなイベントの一つとしてジョギングがあります.

「やっとこの時期がきた!」「やっと走れた」と喜ばれる方も多くいらっしゃいます.

 

Rambaud A JM, et al. scoping reviewにて,初回ACLR後のジョギング開始時期について調査しています.

それによると,ジョギングが開始される期間の中央値は,ACLR12週であったことを報告1) しています(図1)

また,ACLR12週に次いで多いのが,ACLR8週や16週に設定している場合が多いことが分かっています.

図1. ジョギングの開始時期(Rambaud A JM, et al.より引用改変)

図1. ジョギングの開始時期(Rambaud A JM, et al.より引用改変)

 

私が勤務している病院でもACLR12週(術後3ヵ月)の予定にしており,他施設でも術後3ヵ月に設定している施設が多いように感じます.

開始時期が早い施設では術後8週より少しずつ開始し,やや期間にゆとりも持っている施設では術後16週に設定している施設もあるようです.

 

 

ACLR後のジョギングの開始基準

ACLR後のジョギングの開始基準

おおよその開始時期が分かったところで,ジョギングの開始基準について触れていきます.

ACLR12週経過したので,「ではジョギングを開始しましょう!」とはなりません.

 

ジョギングにもある程度の筋力は必要ですし,膝関節の痛みや関節可動域についてもある程度の改善が必要かと思われます.

 

では,開始基準にはどういったことが言われているのでしょうか.

定量的で再現性の高い基準や,一般的な基準を表1にまとめてみました.

表1. ジョギングの開始基準(参考値)

表1. ジョギングの開始基準(参考値)

 

膝関節機能や筋力,痛み,膝関節の腫脹に関する基準は,よく用いられていると思います.

ジョギングを行う上で,このあたりはやはり改善しておかないと,走りにくいと思います.

これらの開始基準は,他の膝疾患でも同じようなことが言えるでしょう.

 

注意点としては,パフォーマス基準にHop Testが入っている点です.

私個人の意見としては,この時期のHop testは少しリスクが高いように思います.Hop Testを用いた先行研究では,この時期での報告は非常に少ないです.

 

パフォーマンスベースであれば,歩行パターンや,早歩きでのパターンに異常が出ないかも重要になってきます.

歩行スピードを上げ早歩きとなると,異常歩行が出てくる場合もしばしば見られます.

 

さらにはその場でのジョギングで左右差がないかをチェックしてみるのも良いかと思われます.

その場でジョギングをすると,健側へ傾くことや,患側下肢の接地がおそるおそる接地していたり,蹴り出し脚が健側と比べて機能していなかったりということも度々見られます.

個人的には,シングルスクワット(屈曲45°まで)で動的なアライメントを見るのも良い指標になるのかと感じています.

 

各施設によるとは思いますが,この中で膝関節筋力のみを基準としている施設もあるでしょうし,膝関節筋力に加えて23つの基準を設けている施設もあると思います.

 

また,あくまでも基準なので,様々な条件によっても変わると思いますし,施設によっても基準値が変わってくることもあると思います.

 

私が勤務している病院では,膝関節筋力は健患比で6070%,動作時の痛みVisual Analog Scale(VAS)<30,運動恐怖VAS30,関節可動域(完全伸展,屈曲120°以上) が改善していること,動作対称性(シングルスクワット動作)などの基準を設けています.

 

仮に術後3ヵ月にて膝関節伸展筋力のみが基準値より少なかった場合は,術後4ヵ月にて膝関節筋力のみ再評価し,基準値をクリアしてジョギングを開始するよう,主治医とコンタクトを取りながら進めています.

 

 

まとめ

まとめ

今回は,ACLR後のジョギングについて解説しました.

ジョギングの開始時期としては,術後3ヵ月(12週)に基準を用いている施設が多いようです.

 

また,加えてジョギングの開始基準には,臨床的基準として,膝関節伸展・屈曲筋力の健患比70%獲得し,痛みが軽度で,腫脹や関節可動域制限がないことが必要と思われます.

 

パフォーマンス基準としては,歩行パターンやその場でのジョギングの正常化が起こっていることが大事のようですね.

今回の内容が少しでもご参考になりましたら幸いです.

 

 

【参考文献】

1) Rambaud A JM, et al. "Criteria for return to running after anterior cruciate ligament reconstruction: a scoping review." British journal of sports medicine 52.22: 1437-1444, 2018.
2)  Yabroudi M A, et al. "Rehabilitation and return to play after anatomic anterior cruciate ligament reconstruction." Clinics in sports medicine 32.1: 165-175, 2013.
3) Hartigan E H, et al. "Time line for noncopers to pass return-to-sports criteria after anterior cruciate ligament reconstruction." journal of orthopaedic & sports physical therapy 40.3: 141-154, 2010.
4) Lentz T A, et al. "Return to preinjury sports participation following anterior cruciate ligament reconstruction: contributions of demographic, knee impairment, and self-report measures." journal of orthopaedic & sports physical therapy 42.11: 893-901, 2012.
5) Czamara A. "Moments of muscular strength of knee joint extensors and flexors during physiotherapeutic procedures following anterior cruciate ligament reconstruction in males." Acta Bioeng Biomech 10.3: 37-44, 2008.
6) Karasel S, et al. "Clinical and functional outcomes and proprioception after a modified accelerated rehabilitation program following anterior cruciate ligament reconstruction with patellar tendon autograft." Acta Orthop Traumatol Turc 44.3: 220-228, 2010.
7) Mark S, et al. "Current concepts on accelerated ACL rehabilitation." Journal of Sport Rehabilitation 3.4: 304-318, 1994.
8) Joreitz R, et al. "Patient-specific and surgery-specific factors that affect return to sport after ACL reconstruction." International journal of sports physical therapy 11.2: 264, 2016.
9) Wilk K E, et al. "Recent advances in the rehabilitation of isolated and combined anterior cruciate ligament injuries." Orthopedic Clinics 34.1: 107-137, 2003.

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