インナーマッスルである腱板筋群は,肩関節の安定化を図るとともに動作時の支点を得るという重要な役割を担っており,このインナーマッスルの働きにより円滑な肩関節の動作が可能となります.
今回は,その中でも損傷や断裂の多く見られる棘上筋,棘下筋に関する解剖的知見やそこから推察される機能について解説していきます.

棘上筋(Supraspinatus muscle)と棘下筋(Infraspinatus muscle)の走行と機能

従来の報告では,棘上筋は大結節の上面,棘下筋は大結節の中面に付着すると考えられていましたが,現在では,棘上筋は大結節の前内側に限局して付着し,棘下筋は棘上筋の後方半分を覆うように大結節の前方まで付着する事が明らかにされています1)5)(図1).

棘上筋(Supraspinatus muscle)と棘下筋(Infraspinatus muscle)の走行と機能

(図1:文献1より引用)

また,約20%の症例では,棘上筋の付着部は大結節にとどまらず,結節間溝を跨ぐように小結節の一部にまで達していることもあり2),走行から推察すると,棘上筋は肩関節外旋位では外転作用が,肩関節内旋位では屈曲・内旋作用があることが分かります2)

棘上筋の筋活動を調査した報告でも,肩外旋位,つまりFull can testでは棘上筋の筋活動が高いことが報告されており3),上述した解剖学的な検討からも一致する事が分かっています.

そのため,Full can testは棘上筋の機能を反映していると考えられています.

しかし,棘下筋の筋活動に関して,拡散強調画像を用いた研究では肩内旋位であるEmpty can testにおいて棘下筋の活動性が高かった3)とする報告がある一方,筋電図を用いた研究では,棘下筋はFull can testEmpty can testどちらにおいても高い筋活動を認めなかった4)とする報告もあり,棘下筋の筋活動に関しては一定の見解は得られていません.

  

棘上筋において筋内腱の存在が重要

棘上筋の筋繊維は,筋内腱に向かって斜めに走行する羽状筋の筋形態を呈しています5)

筋繊維の約70%棘上筋の前方にある太い筋内腱に向かって収束しており,筋内腱は筋腹の中央ではなく前1/3に存在しています2)5)(図2).

棘上筋において筋内腱の存在が重要

(図2:文献5より引用)

また,棘上筋は5層構造を呈しており,第2層が最も線維密度が高く太い線維束から成り,この第2層は,筋内腱から連続した腱線維束に相当することが明らかにされています5

筋内腱は構造上,筋線維の付着面積を広げ,かつ付着する筋によって生じた力を1ヵ所に集中させる働きがあるため,棘上筋の中でも,特に前方1/3の筋内腱筋外腱における部位が非常に重要であり,この部位に損傷や断裂が生じた場合には,機能障害が特に大きくなると考えられます5)

この筋内腱の残存が,機能予後に影響することも報告されています.

Tanaka M, et alは,棘下筋の完全断裂を認めた患者118123肩に対し,最低3ヶ月の保存療法を行い,症状の改善を認めた症例と最終的に手術に至った症例を比較したところ,棘上筋の筋内腱の残存,筋萎縮,インピンジメントサイン,外旋角度に有意差を認めた6)と報告しています.

また,夏らは,腱板完全断裂症例のうち,3ヶ月以内に挙上可能な症例と不可能であった症例を調査し,自動挙上の可否には腱板の短縮,肩峰骨頭間距離の短縮に加え,棘上筋筋内腱の走行が重要な因子であった7)と報告しています.

これらのことからも,棘下筋のなかでも,特に筋内腱が非常に重要な解剖学的部位である事が分かります.

  

最後に

今回は,棘上筋と棘下筋の解剖と機能について解説しました.

今後は,腱板断裂における保存療法について,また外科的手術後のリハビリテーションなどについて取り上げていきたいと思います.

  

【参考文献】

1) 二村昭元ら.棘上筋と棘下筋の上腕骨停止部について−Foot Printの計測.肩関節.32(2)229-2322008
2) Mochizuki Tet al. Humeral Insertion of the Supraspinatus and infraspinatusJ Bone Joint Surg90:962-9692008 
3) 落合信靖ら.拡散強調画像を用いた腱板筋機能評価.肩関節.37(2)461-4632013
4) Yasojima T, et al. Differences in EMG Activity in Scapular Plane Abduction under Variable Arm Positions and Loading ConditionsMedicine and Science in Sports and Exercises40(4)716-7212008
5) 皆川洋至ら.腱板を構成する筋の筋内腱-筋外腱移行形態について.肩関節.20:103-1101996
6) Tanaka M, et alFactors related to successful outcome of conservative treatment for rotator cuff tearsUpsala Journal of Medical Sciences115(3)193-2002010 
7) 夏恒治ら.棘上筋筋内腱の走行と肩関節挙上機能に関する短期予後予測.肩関節.40(2)592-5952016

企業への質問

この機能を利用するには、ログインが必要です。未登録の方は会員登録の上、ログインしてご利用ください。

この記事に関連するタグ

興味のあるタグをフォローしておくことで、自身のフィードに関連するセミナーやコラムを優先的に表示させることができます。 (無料会員機能。 登録はこちら )