肩腱板断裂は無症候性を含めると高齢者の多くの方に認められるとされています。症候性の肩腱板断裂に対応する方はもちろんですが、そうでなくても高齢者に対応する場合はこの肩腱板断裂について理解しておくことは重要です。今回は肩腱板断裂の原因と治療選択について解説していますので、臨床の一助となれば幸いです。

腱板断裂の発生要因

腱板断裂の発生要因

腱板断裂とは、その名の通り腱板の断裂した状態を指し、腱板の機能が破綻することで骨頭を求心位に保つことが困難となり、肩峰下インピンジメントなどの肩関節障害を引き起こす原因となります。

この腱板断裂の発生には、以下二つの要因があります。

  1. 1.外傷性断裂(転倒や脱臼などにより二次的に腱板が断裂する)
  2. 2.非外傷性断裂(日常生活の中で自然に断裂する)

これらの発生要因は治療選択において重要になってきます。

外傷性断裂について

外傷性断裂について

まず、外傷性断裂のような急性断裂の場合、特に若年者においては早期に手術することが勧められています。

急性断裂とは、受傷後2週間~6ヶ月の間を指し1)6ヶ月以内に手術療法を行った場合では、6ヶ月以降に行った場合と比較し治療成績が向上することが報告されています2)

また、外傷後2年以上経過後に手術した症例では、2年以内に手術を行った場合と比べ再断裂率が高かったことも報告されています3)

これらは、修復の遅延が断裂の進行や筋萎縮の進行を引き起こし、手術後の成績を悪化させると考えられているためです。

しかし、外傷性腱板断裂に対する腱板修復が3ヶ月以内の群と3ヶ月以降の群における手術成績に差は見られなかったとする報告もあり4)、一般的に急性断裂に対しては早期の手術が勧められてはいますが、手術時期に関しては今後さらに詳細な研究が必要であると言われています5)

非外傷性断裂について

非外傷性断裂について

非外傷性断裂における治療選択においては様々な報告がありますが、第一選択に保存療法を選択することが推奨されています。

疼痛緩和を目的に、関節内注射や内服、外用などで非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やステロイドなどの薬物を用い、運動療法などのリハビリテーションを行っていきます。

これらの保存的治療を6-12週間行っても改善しない場合、手術適応となります6)。適切な保存療法を実施すれば約80%以上の症例は手術をせず良好な治療成績が得られるとされる報告もある7)一方で、保存療法によって良好な成績が得られても、経過とともに断裂サイズの拡大、脂肪浸潤の増加を認めることも分かっています8)9)10)11)12)

特に、断裂形態(完全断裂か)や断裂サイズ(中断裂)、喫煙といったものは腱板の変性進行における危険因子となります13)

腱板断裂における治療選択のアルゴリズム

腱板断裂における治療選択のアルゴリズム

保存療法において良好な成績が期待されても、症候性に移行する可能性がある事、変性が進行する可能性がある事、といった保存療法におけるデメリットについても説明する必要があります。

これらを踏まえた治療選択について、T Abpelmagd et alは、下図のようなアルゴリズムを提唱しています14)

図1.腱板断裂に対する治療選択のアルゴリズム(T Abpelmagd, et al.2018より改変引用)

まとめ

肩腱板断裂の原因と治療選択について

今回は、腱板断裂における治療選択について述べさせて頂きました。リハビリを行う上で、このような治療方針の決定の背景を知っておく事は重要だと考えています。

腱板断裂患者を担当した際、今回の内容をDrの方々と意見交換や情報共有を行う一助にしていただければ幸いです。

【参考文献】

1) J Pogorzelski, et al. Defnition of the terms “acute” and “traumatic” in rotator cuf injuries: a systematic review and call for standardization in nomenclature. Archives of Orthopaedic and Trauma Surgery. 141:75-91,2021.
2) NS Duncan, et al. Surgery within 6 months of an acute rotator cuff tear significantly improves outcome. Journal of  Shoulder and Elbow Surgery.24(12):1876-1880,2015.
3) M Tan, et al. Trauma versus no trauma: an analysis of the effect of tear mechanism on tendon healing in 1300 consecutive patients after arthroscopic rotator cuff repair. Journal of  Shoulder and Elbow Surgery.25(1):12-21,2016.
4) Hanna C Bjornsson, et al. The influence of age, delay of repair, and tendon involvement in acute rotator cuff tears -Structural and clinical outcomes after repair of 42 shoulders-.Acta orthopedic.82(2);187-192,2011.
5) Ali Abdelwahab, et al. Traumatic rotator cuff tears - Current concepts in diagnosis and management. Journal of Clinical Orthopaedics and Trauma.18;51-55,2021.
6) Wolf BR, Dunn WR, et al.: Indications for repair of full- thickness rotator cuff tears. Am J Sports Med. 35(6): 10071016,2007.
7) 牧内大輔ら.腱板断裂に対する保存療法の効果.肩関節.31(2):341-344,2007.
8) Ranebo MC, et al. Clinical and structural outcome 22 years after acromioplasty without tendon repair in patients with subacromial pain and cuff tears. J Shoulder Elbow Surg. 26(1);1262–1270,2017.
9) Maman E, et al. Outcome of nonoperative treatment of symptomatic rotator cuff tears monitored by magnetic resonance imaging. J Bone Joint Surg Am.91;1898–1906,2009.
10) Kim Y-S, Kim S-E, Bae S-H et al. Tear progression of symptomatic full-thickness and partial-thickness rotator cuff tears as measured by repeated MRI. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc.25;2073–2080,2017.
11) E. Maman, et al.Outcome of nonoperative treatment of symptomatic rotator cuff tears monitored by magnetic resonance imaging. J Bone Joint Surg Am.91;1898-1906.2009.
12) Ranebo MC, et al. Surgery and physiotherapy were both successful in the treatment of small, acute, traumatic rotator cuff tears- a prospective randomized trial. J Shoulder Elbow Surg. 29;459–470,2020.
13) N. Yamamoto, et al. Risk Factors for Tear Progression in Symptomatic Rotator Cuff Tears A Prospective Study of 174 Shoulders. Am J Sports Med. 45(11): 25242531,2017.
14) T Abpelmagd, et al. Rotator cuff tears- pathology and nonsurgical management. Orthopaedics and Trauma. 32(3);159-164,2018.

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