近年のレビュー論文を中心に、海外でのリハビリテーションの目標設定に関する研究動向について述べる。

海外における領域別の目標設定研究

海外における領域別の目標設定研究

Clinical Rehabilitationでは目標設定関連の論文集をWebサイトにて発表している1)。その中で身体障害、小児、目標設定アウトカムそれぞれのレビュー論文が報告されている。

以前のコラム「目標設定介入に活用されるツール:ADOCAid for Dicision-making in Occupation Choice」にて目標設定介入の効果について述べたため、ここでは各レビュー論文における特徴を中心に解説する。


身体障害領域においては、Smit2)のメタアナリシスが報告されている。14件の介入研究が採択され、目標設定の介入効果について解析されている。

解析結果として、目標設定群と対照群を比較すると、身体機能・QOL・リハビリテーション期間について有意な差が見られなかったこと。各研究のバイアスリスクが高く、質の低いエビデンスと判断されることが結論づけられた。

また、質的研究のレビューをPlant3)が行っており、目標設定を行う上で障壁となる要因と、目標設定が促進される要因をそれぞれまとめている。9件の質的研究を分析し以下のように分類した。

障壁となる要因は目標設定に対する

  • スタッフと対象者の視点の違い
  • 対象者に関連した障害
  • スタッフに関連した障害
  • 組織レベルの障壁

促進される要因は、

  • 個別に調整された目標設定プロセス
  • コミュニケーションと理解を促進するための戦略
  • 失望や非現実的な目標を回避するための戦略

対象者とスタッフの知識" "経験" "スキル" "目標設定への関与"は障壁にも、促進要因にもなりえた。


小児領域においては、Lesley4)がスコーピングレビューを報告している(スコーピングレビューとは近年海外での報告が増加している文献レビュー手法である5)。最新の研究動向や、研究のギャップ(偏りなど)を把握することができる)。

この中で目標設定のプロセスと、使用される理論についての検証が行われたが、目標設定介入における戦略が具体的に明示された文献がわずかであったことを報告している。また各研究の共通点として「家族中心の目標設定」を重視した介入が多く見られたことを報告している。

  

海外における目標設定研究で使用されるアウトカムの傾向

海外における目標設定研究で使用されるアウトカムの傾向

Stevens6)は目標設定で活用される主観的評価尺度のシステマティックレビューを行った。11個の評価尺度に関して長所と短所が分析され、中でも使用が推奨されたものはCOPMGASTalking Mats3つであった。

詳細は以前のコラム「目標設定介入に活用されるツール③~COPMACE」「目標設定介入に活用されるツール④~絵カードを用いたツール~」を参照。

また、Jane7)は目標設定に使用されるアウトカムについてのシステマティックレビューを行った。ここでは「GAS」の使用に関する検討が行われており、信頼性・妥当性の観点から活用が推奨されている。

以上の報告から、本邦で使用されているCOPMGASは使用に関する留意点はあるものの、海外の研究と比較した効果判定を行える評価尺度であることが分かった。

  

最近の目標設定研究の動向

最近の目標設定研究の動向

最後に2020年度に出版された目標設定に関する報告を、レビュー論文を中心に紹介してゆく。

Katri8)は外傷性脳損傷症例に対する目標設定介入のシステマティックレビューをまとめた論文を報告している。

本論文では目標設定介入群において良好な結果が得られやすかった傾向を示し、特に外来利用を行う外傷性脳損傷症例に対して介入を行った際にCOPMの満足度向上がもたらされる可能性を示している。


また、Stubbia9)は目標設定に活用されるテクノロジーについてのスコーピングレビューを報告している。16個のテクノロジー(Webサイト、アプリ、歩数計またはこれらを組み合わせた使用)が抽出され、対象は心疾患、神経疾患、糖尿病、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、統合失調症、がん関連疲労などが挙げられていた。

これらのテクノロジーの特徴として、主に目標設定と自己管理の促進を結びつけて設計されていること、目標設定に加えて意思決定が含まれるものは5つのみと限定的であったことを報告している。

この他に目標設定支援ツールの開発も進んでいる。ElwynらはShared decision making(SDM)の意思決定モデルに則した目標設定支援ツールとして「Goal Board10)を開発し、その効果を検証している。今後も目標設定研究の動向を追い、臨床に落とし込んでゆく必要がある。

1 Goal Board 文献10)より引用

  

【共著】

高瀬 駿(川崎協同病院 作業療法士)

  

【引用文献】

1)Clinical Rehabilitation Goal Setting: Clinical Rehabilitation: SAGE Journals
https://journalssagepubcom/topic/collections-cre/cre-1-goal_setting/cre?ConceptID=137936&pageSize=20&publication=crea&target=topic&startPage=0&sortBy=Ppub
2)Smit, E.B., Bouwstra, H., Hertogh, C.M., et al: Goal-setting in geriatric rehabilitation: a systematic review and meta-analysis. Clinical rehabilitatio, 33(3), 395-407, 2019
3)Plant, S.E., Tyson, S.F., Kirk, S., et al: What are the barriers and facilitators to goal-setting during rehabilitation for stroke and other acquired brain injuries? A systematic review and meta-synthesis. Clinical rehabilitation, 30(9), 921-930, 2016
4)Pritchard-Wiart L, Phelan SK: Goal setting in paediatric rehabilitation for children with motor disabilities: a scoping review. Clin Rehabil. 2018
5)友利 幸之介, 澤田 辰徳, 大野 勘太, 高橋 香代子, 沖田 勇帆: スコーピングレビューのための報告ガイドライン日本語版: PRISMA-ScR. 日本臨床作業療法研究 No.7: 70-76, 2020
6)Stevens A, Beurskens A, Köke A, et al: The use of patient-specific measurement instruments in the process of goal-setting: a systematic review of available instruments and their feasibility. Clin Rehabil. Nov; 27(11): 1005-19. 2013
7)Hurn J, Kneebone I, Cropley M: Goal setting as an outcome measure: A systematic review. Clin Rehabil. Sep; 20(9): 756-72. 2006
8)Knutti K, Björklund Carlstedt A, Clasen R, Green D: Impacts of goal setting on engagement and rehabilitation outcomes following acquired brain injury: a systematic review of reviews. Disabil Rehabil. Nov 19: 1-10. Epub ahead of print, 2020
9)Strubbia C, Levack WMM, Grainger R, Takahashi K, Tomori K: Use of technology in supporting goal setting in rehabilitation for adults: a scoping review. BMJ Open. 2020
10)Elwyn G, Vermunt NPCA: Goal-Based Shared Decision-Making: Developing an Integrated Model. J Patient Exp. Oct; 7(5):688-696, 2020

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