前十字靭帯 (Anterior Cruciate Ligament: ACL) 損傷において、原因となる動作といえば “knee in” をよく耳にすると思います。

“knee in” とは、膝が内側に変位するといった現象です。では、本当にACL損傷時にknee inが起きているのでしょうか?またknee inのみが原因なのでしょうか?今回は、受傷時の膝関節の動きや各関節角度について少し踏み込んで解説していきます。

今回の記事を見る前に「ACLの機能・解剖」や「ACL損傷のハイリスク因子・受傷形態」についておさらいしたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

前十字靭帯(ACL)の機能・解剖とその役割

前十字靭帯損傷(ACL損傷)の発生とハイリスク因子・受傷形態について

  

ACL受傷時の膝関節について

ACL受傷時の膝関節について

ACL受傷時にknee inは起きているのか?という疑問について、Olsen O E, et al.は、ACL損傷時の動作をビデオ解析し、すべての症例で強制的に外反を行っていたと報告しました。

外反に関しては、その他のACL損傷時の動作分析を行った研究でもよく報告されており、ACL損傷時の受傷姿勢と言えるでしょう。

受傷時の膝関節の角度について。Cochrane J L, et al. Boden B P, et al. らは、ACL受傷時の多くは膝関節伸展30°以下で生じていることを報告しました。

ACLは膝関節伸展30°以下において、脛骨の前方亜脱臼を制御する機能がより大きくなります。そのため、ACL損傷時の膝関節角度が30°以下であったというのは、剪断力のストレスがかかりやすい位置となるため納得できるでしょう。

  

ACL損傷のハイリスク着地

ACL損傷のハイリスク着地

Carlson V R, et al. らは、ACL損傷時のビデオ解析をまとめたsystematic reviewを報告しており、その中では、着地時のACL損傷のハイリスク着地の関節角度として、股関節屈曲の増加、膝関節屈曲の減少、足関節底屈の減少と報告しました (1) 

ハイリスク着地位置 (左図) と安全な着地位置 (右図) (Carlson V R, et al. 2016より引用)

1 ハイリスク着地位置 (左図) と安全な着地位置 (右図) (Carlson V R, et al. 2016より引用)

また、初期接地時の踵での接地や、足底での接地を危険因子とし、前足部での接地することが安全であったと報告しています。ハイリスク着地は、今後のリハビリテーションを行う上でチェックポイントと言えます。

  

ハイリスク姿勢での脛骨大腿関節の位置関係

ハイリスク姿勢での脛骨大腿関節の位置関係

1のハイリスク姿勢である膝関節屈曲角度が浅くなると、脛骨大腿関節の位置関係はどうなっているのか?を詳しく報告したものがあります。

Boden B P, et al. らは、ハイリスク姿勢時の脛骨大腿関節のMRI (Magnetic Resonance Imaging) を用いて解析を実施。その結果、大腿骨に対する脛骨の傾きは、安全な着地姿勢よりもハイリスク姿勢の方が有意に下から上に向かっていたことが分かりました。

また、安全な着地姿勢と比べてハイリスク姿勢は、脛骨大腿関節の接触点が、大腿溝点と大腿外側顆の円形後方部分の最前方点に有意に近づいたことが分かっています (2)

安全な位置 (3-A,3-B) と挑発的な位置 (3-C,3-D)  (Boden B P, et al. 2009 より引用)

安全な位置 (3-A,3-B) と挑発的な位置 (3-C,3-D)  (Boden B P, et al. 2009 より引用)

2 安全な位置 (3-A,3-B) と挑発的な位置 (3-C,3-D)  (Boden B P, et al. 2009 より引用)

Tibial Plateau Line: 脛骨プラトーライン point of contact: PC aspect of the condyle: APC

着地時の膝関節屈曲不足が起こり、大腿骨に対する脛骨の傾きはやや強くなること、脛骨大腿関節での大腿骨に対する脛骨の接触点が前方となることは、ACLへのストレスがかかりやすい位置でもあります。

  

非接触ACL損傷のメカニズム

非接触ACL損傷のメカニズム

Koga H, et al. らは、非接触ACL損傷時の膝関節・股関節の動きについてmodel- based image-matching techniqueを用いて調査を実施。その結果、ACL損傷は初期接地から40ミリ秒後に生じており、また40ミリ秒以内に膝の外反が生じていたと報告しました。

さらに、最初の40ミリ秒は脛骨が内旋しており、その後ACLが断裂した後と思われる外旋が生じたことが発見されました。これらのことより、以下のような仮説を行なっています (4) 

非接触ACL損傷のメカニズム (Koga H、 et al. 2017より引用)

4 非接触ACL損傷のメカニズム (Koga H et al. 2017より引用)

a.無負荷の膝
b.膝に外反力が加わると、MCLが緊張し外側コンパーメントに圧迫力が生じる。
c.この圧縮荷重と、大腿四頭筋の収縮による前方へのベクトルにより、大腿骨が脛骨に対して相対的に変位し、大腿骨外側顆が後方に移動し、脛骨が前方に並進して内旋し、ACL断裂となる。
d.ACLが断裂した後、脛骨の前方への並進に対する第一の拘束力がなくなり、大腿骨内側顆も後方に変位し、脛骨の外旋が生じる。

  

さいごに

さいごに

ACL受傷時の姿勢は、膝関節伸展域でなおかつ外反 “knee in” が多く見られる傾向にあります。また、受傷動作のハイリスク姿勢は、股関節屈曲の増加、膝関節屈曲の減少、足関節底屈の減少と報告されています。

初期接地に関しては、踵での接地、足底での接地がハイリスク姿勢であると考えられます。これらの情報は、ACL損傷の予防トレーニングや、ACL損傷後やACL再建術後のリハビリテーションを考えていく上で有益であり、これらの点に注意して進めていかなければならないと言えるでしょう。

  

【参考文献】

1)Olsen O E, et al. "Injury mechanisms for anterior cruciate ligament injuries in team handball: a systematic video analysis." The American journal of sports medicine 32.4: 1002-1012, 2004.
2)Cochrane J L, et al. "Characteristics of anterior cruciate ligament injuries in Australian football." Journal of science and medicine in sport 10.2: 96-104, 2007.
3)Boden B P, et al. "Mechanisms of anterior cruciate ligament injury." 573-578, 2000.
4)Carlson V R, et al. "Video analysis of anterior cruciate ligament (ACL) injuries: a systematic review." JBJS reviews 4.11: e5, 2016.
5)Boden B P, et al. "Tibiofemoral alignment: contributing factors to noncontact anterior cruciate ligament injury." The Journal of Bone and Joint Surgery. American volume. 91.10: 2381, 2009.
6)Koga H, et al. "Mechanisms for noncontact anterior cruciate ligament injuries: knee joint kinematics in 10 injury situations from female team handball and basketball." The American journal of sports medicine 38.11: 2218-2225, 2010.
7)Koga H, et al. "ACL injury mechanisms: lessons learned from video analysis." Rotatory Knee Instability. Springer,Cham, 27-36, 2017.

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