神経発達症(Neuro Developmental Disorders:NDD)には6つの下位分類(詳細なタイプ分け)が存在するが、その内の複数が併存している場合もある。

そのため発達上の問題が疑われる対象者に対してアセスメントを行う場合は、対象者の特性について包括的な評価が求められる。

それぞれの下位分類については、特性を大まかに捉えるスクリーニング検査と、詳細な分析を行う評価が開発されている。

その中でも本コラムでは、自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorders:ASD)への評価について記述する。

ASDの評価の流れ

ASDの評価の流れ

自閉症に関する最初の報告は、Kannerによる11の症例に関する報告であった。1)有病率は、自閉症の定義の変遷や社会的な認知度により、調査された年代によって変化しているが、2013年に改訂されたDSM-5の診断基準による調査では3%と報告されている。2)

発症の危険因子には、遺伝や出生時体重など様々な要因が挙げられているが、全ての症例に共通するようなは因子なく、未だ明確な原因は特定されていない。

自閉症児・者に対して支援プランを建てていくには、まず主な特徴である「社会的コミュニケーションおよび対人相互反応」「限定された興味や行動」について確認する必要がある。

それと同時に発達段階や他のNDDの併存についても確認し、生活環境への適応状況・生得的な特性などについて多様な情報を収集し、総合的に全体像を捉える必要がある。

実際の臨床における評価では、スクリーニング検査の後に必要に応じて、より詳細な評価を行う。スクリーニング検査では、ASDの特性の把握と同時に、他のNDDや発達遅滞の可能性について検討を行う。

次にASDの特性が認められる場合に、より詳細な評価を行っていく。

次章でASDの特性に関するスクリーニング検査と、ゴールドスタンダードとなっている評価について記載する。

  

ASDの特性に関する4つのスクリーニング検査

ASDの特性に関する4つのスクリーニング検査

スクリーニング検査では、対象者の年齢によって適応となる検査は異なる。以下に、日本で主に普及しているスクリーニング検査について記載する。

表1、ASDのスクリーニング検査

診断的アセスメントツール

診断的アセスメントツール

現在ASDの評価のゴールドスタンダードとなっている検査には、ADI-RADOS-2の2つがある。8)ADI-Rでは対象年齢が2歳以上であり、養育者に対して、対象者の乳幼児から現在までを聴取する検査である。

一方、ADOS-212ヶ月から成人を対象とし、対象者本人に対して、いくつかの活動や質問項目によって行動観察を行う検査である。この2つの検査は相補的な関係にあり、両方を実施することで過去から現在までの行動特性について情報収集することができる。

まとめ

今回NDDの評価の大まかな流れと、ASD児の評価について述べた。しかし実際に臨床で支援を行う際には上記の検査のみで十分とはいえない。

ASD児の特徴の1つである感覚の問題や、二次的に発生し得る心理面の問題に関する評価、日常生活場面での困りごとの聴取、実際の関わりの中での行動観察など、様々な情報について整理することが必要である。

それらの情報を通して、対象児を一人の人間として包括的に把握した上で、個別に支援計画を立案していく必要がある。

  

【略語一覧】

M-CHATModified Checklist for Autism in Toddlers(乳幼児期自閉症チェックリスト修正版)

SCQSocial Communication Questionnaire

PARSPervasive Developmental Disorders Autism Society Japan Rating Scale(広汎性発達障害日本自閉症協会評定尺度)

AQJ Autism Spectrum Quotient Japanese Version(自閉症スペクトラム指数日本語版)

ADI-RAutism Diagnostic Interview Revised(自閉スペクトラム症の診断評価のための面接ツール)

ADOS-2Autism Diagnostic Observation Schedule(自閉症スペクトラム評価のための半構造化観察検査)

  

【共著】

籔中 雅之(東浦平成病院 作業療法士)

  

【参考文献】

  1. 1)Kanner L(1943). Autistic disturbances of affective contact. Nervous Child 2.p217-250
  2. 2)Manabu SaitoPrevalence and cumulative incidence of autism spectrum disorders and the patterns of co-occurring neurodevelopmental disorders in a total population sample of 5-year-old children. Molecular Autism.2020 May
  3. 3)国立精神・神経医療研究センター(2020参照):自閉スペクトラム症(ASD)の早期診断へのM-CHATの活用(https://www.ncnp.go.jp/nimh/jidou/aboutus/aboutus.html)
  4. 4)金子房書(2020参照)SCQ日本語版(https://www.kanekoshobo.co.jp/book/b183693.html)
  5. 5)発達障害支援のための評価研究会(2013)PARSテキスト改訂版
  6. 6)若林明雄ほか(2016)AQ日本語版・児童用使用手引(2016).三京房
  7. 7)若林明雄ほか(2016)AQ日本語版・成人用使用手引(2016).三京房
  8. 8)藤野博,東條吉邦ほか(2018):発達科学ハンドブック10自閉スペクトラムの発達科学.新曜社p178-188

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