小児領域で用いられる作業療法士(OT)の介入方法(エビデンスを基盤とした解説)

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竹林崇 大阪府立大学 教授

小児領域の作業療法で活用される各介入に関して、現状のエビデンスからみた立ち位置とその説明を行う。

小児作業療法のエビデンス

小児作業療法のエビデンス 小児領域で作業療法士が活用する介入に関するシステマティックレビューをNovakら1)が報告している。対象は『障害のある子ども』と幅広く設定されており、疾患としては自閉症スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、脳性麻痺(CP)、発達性協調運動障害(DCD)などが網羅的に抽出されていた。

この中で129件の研究を対象疾患に合わせて、エビデンスの質ごとに分析した結果が公表された(図1参照)。各報告の研究デザインは様々であり、解釈に注意が必要ではあるが、小児領域で活用される介入についての現状を網羅的に把握した報告である。

次章よりエビデンスの質が『良』と判断されたものと、『不良』と判断されたものに関して、現在本邦で使用されている介入を中心にピックアップして解説してゆく。

OTの有効性を示すバブルチャート OTの有効性を示すバブルチャート 図1.OTの有効性を示すバブルチャート 文献1より引用

CI療法

運動面に関する介入として、エビデンス良と判断される介入の一つが「CP児を対象としたCI療法」である。対照群が設定された介入研究が行われており、両手動作訓練との介入効果比較がなされている2)3)。

上記のシステマティックレビューで採択された研究に関しては、対照群との比較の上での優位な改善は検出されなかったが、手先の器用さや、両手での活動において両群とも介入後の改善が認められたことを報告している。

この他ガイドライン4)での使用の推奨、及びCP児に対するCI療法の有効性を示唆する報告も複数存在している5)6)。

CO-OP

CO-OP CO-OPは「Cognitive Orientation to daily Occupational Performance」の略で、「DCD児への運動面の介入」としてエビデンス良と報告されている。

CO-OPはPolataikoらにより提唱されたアプローチであり、DCD児を中心とした多彩な疾患が対象とされている7)。保護者や指導者の手伝いには重きをおかず、子ども自身に問題解決技法を考える機会を提供するアプローチである。

Novakらのシステマティックレビューにおいても、DCD児の運動機能に対してのアプローチとしてCO-OPの効果が示されている。またCP児を対象とした際にCOPMの改善が得られる可能性も示唆している8)9)。

応用行動分析学(ABA)

行動面への介入としてエビデンスが評価されているのは「ASD児に対するABA」である。スキナーら10)によって提唱された行動分析を基盤とした介入であり、米国精神保健研究所のガイドライン11)にて自閉症児の早期支援での活用が推奨されている。

ABAを用いたアプローチでは、対象の行動の分析とその変化が重要な観点とされている。ABAは本邦においても活用例の報告が増加しており12)、今後の動向が注目される介入である。

感覚統合療法

感覚統合療法 エビデンスが不良と判断されているが、本邦にて広く活用されている介入が感覚統合療法(SI)である。

SIは子どもの感覚に重きを置いており、評価・介入において感覚の及ぼす影響を考察するアプローチである。Aeyersが提唱したSI13)は世界各国で活用されており、日本でも小児作業療法の介入手段の一つとして伝統的に利用されてきた背景がある。

NovakらのシステマティックレビューにおいてもASD・ADHD・DCD各疾患に対して介入効果の検証が行われている。しかし、多くの報告でその介入効果の不明瞭さが指摘されており14-18)、Novakらの報告ではエビデンスの質が不良だと判断されている。

この判断の背景として、各研究の方法論における不備が多く報告されており、「エビデンスが不良だから活用しない方がよい」とは一概に判断できないことが結論づけられている。

システマティックレビューではこの他にも目標指向型の介入や、認知機能面への介入を主体としたCog-Funなど様々な介入が報告されている。小児作業療法においてゴールドスタンダードとされる介入が示されにくい現状が反映された結果が、今回の報告からは読み取れた。

【共著】
高瀬 駿(川崎協同病院 作業療法士)  

【引用文献】
1)Novak I, Honan I. Effectiveness of paediatric occupational therapy for children with disabilities: A systematic review. Aust Occup Ther J. 2019 Jun;66(3):258-273.
2)Sakzewski L, Miller L, Ziviani J, Abbott DF, Rose S, Macdonell RA, Boyd RN. Randomized comparison trial of density and context of upper limb intensive group versus individualized occupational therapy for children with unilateral cerebral palsy. Dev Med Child Neurol. 2015 Jun;57(6):539-47.
3)Tervahauta MH, Girolami GL, Øberg GK. Efficacy of constraint-induced movement therapy compared with bimanual intensive training in children with unilateral cerebral palsy: a systematic review. Clin Rehabil. 2017 Nov;31(11):1445-1456.
4)脳性麻痺リハビリテーションガイドライン第2版
5)Chen YP, Pope S, Tyler D, Warren GL. Effectiveness of constraint-induced movement therapy on upper-extremity function in children with cerebral palsy: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Clin Rehabil. 2014 Oct;28(10):939-53.
6)Dong VA, Tung IH, Siu HW, Fong KN. Studies comparing the efficacy of constraint-induced movement therapy and bimanual training in children with unilateral cerebral palsy: a systematic review. Dev Neurorehabil. 2013;16(2):133-43.
7)塩津 裕康:不器用さが疑われる発達障害児に対するCognitive Orientation to daily Occupational Performance(CO-OP)を用いた実践, 作業療法, 2019, 38 巻, 3 号, p. 344-350, 2019
8)Cameron D, Craig T, Edwards B, Missiuna C, Schwellnus H, Polatajko HJ. Cognitive Orientation to daily Occupational Performance (CO-OP): A New Approach for Children with Cerebral Palsy. Phys Occup Ther Pediatr. 2017 May;37(2):183-198.
9)Jackman M, Novak I, Lannin N, Froude E, Miller L, Galea C. Effectiveness of Cognitive Orientation to daily Occupational Performance over and above functional hand splints for children with cerebral palsy or brain injury: a randomized controlled trial. BMC Pediatr. 2018 Jul 31;18(1):248.
10)Cooper JO,Heron TE,Heward WL(中野 良顯・訳):応用行動分析学 第2版.明石書店,2013.
11)National Research Council. (2001). Educating children with autism. National Academies Press.
12)塩津 裕康, 倉澤 茂樹, 応用行動分析学と作業療法, 作業療法, 2020, 39 巻, 1号, p.17-25
13)Anita CB,Shelly JL,Elizabeth AM(土田玲子,小西紀一・訳):感覚統合とその実践第2版,協同医書出版社,2008
14)Bodison SC, Parham LD. Specific Sensory Techniques and Sensory Environmental Modifications for Children and Youth With Sensory Integration Difficulties: A Systematic Review. Am J Occup Ther. 2018 Jan/Feb;72(1):7201190040p1-7201190040p11.
15)Lang, R., O’Reilly, M., Healy, O., Rispoli, M., Lydon, H., Streusand, W., … & Giesbers, S. (2012). Sensory integration therapy for autism spectrum disorders: A systematic review. Research in Autism Spectrum Disorders, 6(3), 1004-1018.
16)May-Benson TA, Koomar JA. Systematic review of the research evidence examining the effectiveness of interventions using a sensory integrative approach for children. Am J Occup Ther. 2010 May-Jun;64(3):403-14.
17)Schaaf RC, Dumont RL, Arbesman M, May-Benson TA. Efficacy of Occupational Therapy Using Ayres Sensory Integration®: A Systematic Review. Am J Occup Ther. 2018 Jan/Feb;72(1):7201190010p1-7201190010p10.
18)Watling, R., & Hauer, S. (2015). Effectiveness of Ayres Sensory Integration® and sensory-based interventions for people with autism spectrum disorder: A systematic review. American Journal of Occupational Therapy, 69(5), 6905180030p1-6905180030p12.

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