身近になった『発達障害』という言葉
『発達障害』という言葉を聞いたことがない人はいないだろう。メディアで取り上げられることも増え、発達障害は一般の方でも聞いたことのある身近な言葉になってきている。
文部科学省の報告では、全国の公立小中学校の通常学級に在籍する児童生徒のうち、「人とうまくコミュニケーションがとれない」などの発達障害の可能性がある小中学生は、6.5%にのぼると報告している1)。
注目度の増加と共に、全国に一定数いるとされる発達障害を呈するお子様への支援と、『グレーゾーン』と表現される発達障害の診断予備群の早期発見に対する社会的ニーズが高まっている。このような状況のなかで、子育てや学校生活への多様な支援が行える作業療法士(OT)の役割は重要である。
小児発達障害領域で働く作業療法士(OT)
小児発達障害領域で働くOTは、どのような場所で活躍しているのか。
OTの職域に関して行われた調査では、発達障害に関わるOTが少ない状況が報告されている。
2018年度の日本作業療法士協会会員対象の調査結果では、全体の中で「精神及び行動の障害」を対象疾患とするOTは14.1% 2)、うち発達障害が含まれる「心理的発達及び小児/青年期に通常発達する行動/情緒の障害」を対象とする人数は717名(全体の1.1%)であることを示している。
また、領域別の会員数でみると児童福祉施設(障害児入所・通所施設)に所属するOTは全体の1.8%、特別支援学校所属は0.2%と報告されている。2017年度の報告と比較すると若干の増加は見られるが、近年のデータからも発達障害に関わるOTの総数が明らかに少ないことが分かる。
発達障害に関わるOTの主な職場としては、病院・クリニック・療育センター・特別支援学校等が挙げられる。しかし、これらの職場で実際に働くOTの雇用枠は少なく、『狭き門』だと表現されることもある。
お子様の生活の場に訪問する作業療法士(OT)
近年では、前述した職場以外にもOTの働く場所が拡大している。
平成24年には、厚生労働省により「保育所等訪問支援」3)が制定され、OT等の専門職が保育園・学校等の外部機関へ訪問することが認められた。
この制度を利用して、療育センターや病院からOTが外部機関へ訪問し、指導を通して報酬を得る働き方が可能となった。
また、訪問を利用した支援に関しては、職員や保護者を対象としたOTによるコンサルテーションが注目されており、実践報告も行われている4)5)。
この他のOTの職場としては、児童発達支援・放課後等デイサービスも含まれる。これらの施設には、専門職の配置による加算制度があり、今後も専門職の需要が期待される。
以上のことから、発達障害に対する作業療法士の働きの場は、ここ数年で増加傾向であることが分かった。
これまで言われてきた「発達領域に進める作業療法士はごく僅か」という定説が崩れてきているとも読み取れる。しかし、その実践の歴史はいまだ浅く、今後の発展に向けてOTとしての価値を示してゆく必要がある。
【共著】
高瀬 駿(川崎協同病院 作業療法士)
【引用文献】
1)文部科学省 通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査(2021年1月30日閲覧)
2)2018年度 日本作業療法士協会会員統計資料(2021年1月30日閲覧)
3) 児童福祉法(昭和 22 年法律第 164 号)第6条の 2 の 2 第5項(2021年1月30日閲覧)
4)仲間ら,et al:保育所等訪問支援における巡回型学校作業療法,作業療法,37巻4号,427-433,2018
5)山口ら,et al:幼稚園・保育園でのコンサルテーション型作業療法の効果検証に向けた試験的研究.作業療法,37巻2号,145-152,2018
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