人工透析とリハビリテーション③〜評価指標〜

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竹林崇 大阪府立大学 教授

今回は、血液透析(hemodialysis: HD)患者のリハビリテーションにおける評価指標について解説を進めていく.

身体機能の評価

身体機能の評価はリハビリの効果判定にも用いられるため,正確に測定されることが望ましい.代表的な評価指標のカットオフ値は下記のように定められており,膝伸展筋力や握力などが評価項目として推奨されている(表1)1).
 
運動器疾患のない高齢者を対象とした場合,膝伸展筋力0.40kgf/㎏以上が歩行自立の目安とされており,下回るにつれて歩行自立の割合は低下することが報告されている2).
 
また,外来通院の291名の慢性腎臓病患者(Chronic Kidney Disease:CKD)を対象とした研究では,ステージG5群の80歳代男性の膝伸展筋力は0.40kgf/kgに近似し,ステージG5群の70・80歳代女性では0.40kgf/kgを下回っていた3).
 
以上より,高齢CKD患者は,透析期に移行する前の段階からすでに,歩行自立に必要な筋力の予備能力は低下し始めていることが考えられる.加えて,HD患者を対象とした膝伸展筋力についての調査では,膝伸展筋力40kgf/kgを下回る対象者は,それ以上の対象者と比較して死亡リスクが約3倍増加することが報告されている4).
 
その他評価では,上肢や手指はアミロイド関節症による制限をきたしやすいため,ADL・IADLに必要な関節可動域(range of motion: ROM)の有無を確認することが必要と思われる.
 
また,「人工透析とリハビリテーション②」でも記載したが,透析患者は下腿や足部などの末梢病変を併発するリスクが高く,一度陥るとその治療は難渋し,予後は不良になることが知られている.そのため,末梢動脈疾患や足病変に早期から注意を払う必要がある.後脛骨動脈や足背動脈の触診,足の視診など,簡素なスクリーニングチェックはコメディカルの我々にも可能である.
 
足病変ハイリスク患者の抽出方法には,AAAスコア5)やHansen’s Disease Centerの足病変危険分類6)などの活用も意義深いと思われる.加えて,運動での靴擦れから足潰瘍,足病変へと移行することも少なくないため,対象者の靴や装具の状態,神経障害の確認も勧められる.場合によっては,足のフットケア指導,靴の変更,インソールや装具の調整などの提案も必要となるだろう.
 
表1.身体機能評価と身体機能低下のカットオフ値
 
 

活動量の評価

我が国の透析患患者の高齢化や透析の長期化に伴い,移動能力の低下がない場合でも,将来的な低下を予防するために身体活動量の重要性が謳われている1).活動量の評価には,歩数を計測する方法と,問診を行う方法が推奨されている.
 
歩数に関しては,Matsuzawaらが282人の外来HD患者を対象にした7年間の観察研究を行っている7).彼らは,加速度計を用いて被検者の非透析日(1週間の内の4日間)の歩数を測定し,歩数の増加と死亡率の減少との継続的な関係性を調査した.結果では,1日の歩数が4000歩を下回るHD患者の死亡率は,それ以上の対象者と比較して約2.4倍になることが示唆されており,非透析日の1日の目標歩数は約4000歩と結論付けられている.
 
また,活動評価の際に身体活動の目標設定を行うことも有意義とされており,目標設定は高齢者や慢性疾患を持つ人々の身体活動を促進するための一手法として知られている8)9).移動能力が保たれた対象者においては,活動量を維持することは生命予後や健康づくりという観点から重要と考えられており,定期的な身体活動量の評価やそれを増加させるための動機付けを行うことが重要である.
 
歩数計を用いての評価が難しい場合は問診を行い,臥位や座位で過ごす時間が多くないかを判断する.身体活動量を問診で評価する上では,国際標準化身体活動質問票(International Physical Activity Questionnaire:IPAQ)を用いる方法も良いかもしれない.
 
この評価用紙は65歳以上の健常高齢者に対しても妥当性が示されており10),簡易に1週間の活動時間を算出することができる.ただし,HD患者を対象にした報告は見当たらず,また認知機能の低下が著しい対象者には正確な評価が難しいという側面もある.
 
 
【共著】
吉江 巧(指定訪問看護 アットリハ反町 作業療法士)
 
 
【参考文献】
1)日本腎臓リハビリテーション学会: 腎臓リハビリテーションガイドライン. 南江堂, 2018.
2)山崎裕司 他: 等尺性膝伸展筋力と移乗動作の関連. 運動器疾患のない高齢者を対象として. 総合リハ30: 747-752, 2002.
3)音部雄平 他: 保存期慢性腎臓病患者における筋力値および健常平均値との比較. 理学療法44(6): 401-407, 2007.
4)R. Matsuzawa et al: Relationship Between Lower Extremity Muscle Strength and All-Cause Mortality in Japanese Patients Undergoing Dialysis. Physical Therapy 94(7): 947-956, 2014.
5)一般社団法人 Act Against Amputation: https://aaa-amputation.net/aaa_score/
6)MM. Funnell et al: 糖尿病療養指導のためのコア・カリキュラム. メディカルレビュー社,2002.
7)R. Matsuzawa et al: Physical activity does for hemodialysis patients: where to begin? Results from a prospective cohort study. J Ren Nutr 28(1): 45-53, 2018.
8)McEwan D et al. The effectiveness of multi-component goal setting interventions for changing physical activity behaviour: a systematic review and meta-analysis. Health Psychol Rev. 2016; 10: 67-88.
9) O'Brien N et al. The features of interventions associated with longterm effectiveness of physical activity interventions in adults aged 55–70 years: a systematic review and meta-analysis. Health Psychol Rev. 2015; 9: 417–433.
10)K. Tomioka et al: Reliability and Validity of International Physical Activity Questionnaire (IPAQ) in Elderly Adults: The Fujiwara-kyo Study. J Epidemiol 21(6): 459-465,2011.

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