脳卒中後の上肢麻痺に対してのロボット療法で使用するデバイスは,end-effector型と外骨格型に大別される.本稿では,脳卒中後上肢麻痺の近位部の機能改善を目的としたend-effector型のロボットデバイスを使用したロボット療法の有効性について述べる.

InMotion ARMTM[MIT-Manus]の有効性

最新のコクランレビュー1)における,上肢麻痺に対するロボット療法の有効性は前項で述べた通りである.そのレビューでの取り込み基準を満たした44の研究の中で,最も使用されていたロボットデバイスはInMotion ARMTM[MIT-Manus](Interactive Motion Technologies, Inc, USA)であり,8つの研究で使用されていた.表1にそれぞれの研究の概要を示す.InMotion ARMTM[MIT-Manus]は,上肢近位部の機能改善を目指す機器であり,その有効性を報告した研究はロボット療法の運用を検討する上で参考となるものが多いため,いくつか抜粋してその結果を紹介する.

Volpeら2)は,発症から2週間前後の急性期の対象者に対して,通常のリハビリテーション(以下,通常リハ)に加えて,MIT-Manusを使用したロボット療法を積極的に行う介入群と通常のリハに加えて,週1回の非積極的なロボット療法を行う対照群で効果を比較した結果,Fugl-Meyer Assessment上肢項目(以下,FMA)などの機能評価にて介入群の方が有意な改善を示したと報告している.また,Loら3)は生活期の対象者に対して,MIT-Manus を使用したロボット療法を行う介入群と,療法士が高強度の介入を行う高強度対照群,療法士が通常の介入を行う対照群で効果を比較している.

結果,介入群は対照群に比べて,FMAなどの機能評価において良好な回復が得られる傾向があるが,高強度対照群に比べて僅かに機能回復が得られない傾向があった.しかし,それぞれで統計上有意な差は認められなかったと報告している.さらに,Volpeら4)も生活期の対象者に対して,MIT-Manusを使用したロボット療法を提供する介入群と,療法士による高強度の介入を行う対照群で効果を比較した結果,上肢機能の改善に有意差は認めなかったとしている.

以上の報告より,良くも悪くもロボット療法のみでは,療法士による介入以上の結果を導くことができないものの,通常のリハに加えてロボット療法を提供することで,より機能改善を導くことができる可能性があることを示している.

また,Conroyら5)はInMotion ARMTMを使用したロボット療法群と,腕のエルゴメーターを使用した課題や課題指向型アプローチを実施した対照群で効果を比較した結果,群間にFMA上で有意な差は認められなかったものの,FMAが25点以下の対象者では,ロボット療法群の方が良好な結果を示したと報告している.そして,表1に示した報告における対象者の麻痺の程度を鑑みても,InMotion ARMTM[MIT-Manus]を使用したロボット療法は,中等度~重度上肢麻痺に対して有効であるといえる.

一方で,コクランレビュー1)よりも最新の研究において,Rogersら6)は通常リハに加えて,対象者の目標に即した練習を併用する群(Enhance upper limb training:EULT群)とMIT-Manusを使用したロボット療法を提供する群の効果を比較検討している.結果,群間で上肢機能の改善に有意差はなかったものの,費用対効果の面ではEULT群が良好な結果であったことを示している.そのため,中等度~軽度上肢麻痺の場合は,費用対効果も考慮すると,ロボット療法よりも目標指向的なアプローチの方が有益な可能性がある.  
 

ReoGoTM/ReoGo-J®の有効性

本邦の臨床で活用されているロボットデバイスとして,上肢近位部の機能改善を目的としたReoGoTM /ReoGo-J®(Motorika社,イスラエル/帝人ファーマ,日本)がある.コクランレビュー1)では2つの研究が取り込み基準を満たしている.

Yooら7)は,通常のリハ60分に加えて,ReoGoTMを使用した 2・3次元方向へのリーチ動作の反復を30分間提供するロボット療法群と,通常のリハのみ60分間提供する対照群で効果を比較検討している.結果として,Wolf Motor Function TestやBox and block testにおける変化量において,ロボット療法群の方が有意な改善を認めたと報告している.

また,Takahashiら8)は,通常のリハ40分に加えて,ReoGoTMを使用した自主練習を40分提供するロボット療法群と,通常のリハ40分とプレーシングやサンディングといった一般的な自主練習を40分提供する対照群での効果を比較検討している.結果として,ロボット療法群において,FMAにおける屈筋共同パターンの項目や肩肘前腕項目における有意な改善を認めていた.さらには,FMAが30点以上の群と30点未満の群で比較検討をしたところ,30点未満の群において,FMAの肩肘前腕項目の有意な改善を認めていた.

そのため,ReoGoTM を使用した自主練習は,特に中等度~重度上肢麻痺に対して有効であることを明らかにした一方で,麻痺手の日常生活での使用頻度や使いやすさを評価するMotor Activity Log(MAL)における改善に群間差はなかったことから,ロボット療法が麻痺手の行動の変化をもたらす可能性は低いことも明らかにしたといえる.

以上より,上肢近位部の機能改善をターゲットにしたend-effector型ロボットの有効性は明らかにされつつある一方で,麻痺手の行動の改善には寄与しないという短所も明らかにされている.そのため,ロボット療法はあくまでも療法士によるアプローチに対する補完的な役割を担う手法であることを念頭に置き,各々の役割を明確にしたうえで,眼前の対象者に適応させる必要がある.  
 
【共著】
庵本直矢(名古屋市総合リハビリテーションセンター 作業療法科 作業療法士)  
 
【引用文献】
1)Mehrholz J, et al. Electromechanical and robot-assisted arm training for improving generic activities of daily living, arm function, and arm muscle strength after stroke. Cochrane Database Syst Rev, 2018.
2)Volpe BT, et al. A novel approach to stroke rehabilitation: Robot-aided sensorimotor stimulation. Neurology 54:1938-1944, 2000.
3)Lo A, et al. Robotic-assisted therapy for long-term upper limb impairment after stroke. N Engl J Med 362:1772-1783, 2010.
4)Volpe BT, et al. Intensive sensorimotor arm training mediated by therapiest or robot improves hemiparesis in patients with chronic stroke. Neurorehabil Neural repair 22: 305-310,2008.
5)Conroy SS, et al. Effect of gravity on robot-assisted motor training after chronic stroke: A randomized trial. Arch Phys Med Rehabil 92:1754-1761, 2011.
6)Rodgers H, et al. Robot assisted training for the upper limb after stroke(RATULS):a multicenter randomized controlled trial. Lancet 394:51-62,2019.
7)Yoo DH, et al. Effect of three-dimensional robot-assisted therapy on upper limb function of patients with stroke. J Phys Ther Sci 25:407-409, 2013.
8)Takahashi K, et al. The efficacy of upper extremity robotic therapy in subacute post-stroke hemiplegia:an exploratory randomized trial. Stroke 47:1385-1388,2016.
9)Daly JJ, et al. Response to upper-limb robotics and functional neuromuscular stimulation following stroke. Jornal of rehabilitation research & development 42:723-736,2005.
10)McCabe J, et al. Comparison of robotics, functional electrical stimulation, and motor learning methods for treatment of persistent upper extremity dysfunction after stroke: A randomized controlled trial. Arch Phys Med Rehabil 96:981-90,2015.
11)Rabadi M, et al. A pilot study of activity-based therapy in the arm motor recovery post stroke: a randomized controlled trial. Clin Rehabil 22:1071-82, 2008.
12)Sale P, et al. Effects of upper limb robot-assisted therapy on motor recovery in subacute stroke patients. J Neuroeng Rehab 11:104,2014.

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