脳卒中後上肢麻痺に対するロボットリハビリテーションのエビデンスと機器の種別・特性

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竹林崇 大阪府立大学 教授

脳卒中後の上肢麻痺に対するロボットリハビリテーションは,エビデンスが確立されたアプローチとして臨床場面でも導入され始めている.本稿では,ロボットリハビリテーションのエビデンスと主に使用されている機器の種別や特性について述べる.

脳卒中後上肢麻痺に対するロボットリハビリテーションの包括的なエビデンス

諸外国では日本に先駆けてロボットリハビリテーション(以下,ロボットリハ)を積極的に導入してきた.その証として,日本での脳卒中リハのガイドラインである「脳卒中治療ガイドライン2015[追補2019対応]」1)でのロボットリハの位置付けは,推奨グレードB(行うよう勧められる)であるが,世界のリハのガイドラインともいえる「American Heart/Stroke Association」2)や「Lancet Neurology」3)おけるロボットリハの位置付けは,エビデンスレベルAであり,実施されることが強く推奨されている.

また2018年のコクランレビュー4)では,従来から行われている介入等と比較して,ロボットリハはFunctional Independence Measure(FIM)の指標を用いた日常生活動作{標準化された平均差(SMD):0.31,95%信頼区間(95%CI):0.09-0.52,P=0.0005,異質性(I2):59%}やFugl-Meyer Assessmentを用いた上肢機能(SMD:0.32,95%CI:0.18-0.46,P<0.0001,I2:36%),Medical Research Council Scoreを用いた上肢筋力(SMD:0.46,95%CI:0.16-0.77,P=0.003,I2:76%)の改善に僅かながら有効であり,有害事象や脱落による安全性の観点(リスク差:0.00,95%CI:-0.02-0.02,P=0.03,I2:0%)や出版バイアスの観点からも質の高いエビデンスを報告している.

一方では,使用する機器の種類や参加者の特性,練習強度(一定の時間に対する反復回数など)は交絡因子として含まれた結果ではないため,単純にロボットリハを実施すれば機能が上がるというわけではない.そのため,実際の臨床においてロボットリハを行う場合は使用する機器の特徴を十分に把握した上で,病期や麻痺の重症度などといった対象者の背景に合わせて,練習量や練習強度を療法士が柔軟に変更する必要がある.  
 

ロボットリハビリテーションで主に使用されている機器とその特性

脳卒中後の上肢練習用のリハロボットは一般に,機械的構造に基づいて,外骨格型とend-effector型に分類されることが多い.外骨格型は「関節軸が人体の解剖学的関節軸と整列し,個々の関節を直接制御する外部構造デバイス」として定義され,end-effector型は「四肢の遠位部分に機械的な力を加えるための単一の装着部分を持つデバイス」として定義されている5).

外骨格型は上肢を全体に渡り機器に装着させて動きを支援するために,複数の関節を同時に制御する必要がある.外骨格型リハロボットの中で,Randomized Controlled Trial(RCT)により有効性が報告されている機器としては,Armeo® Spring[T-WREX]6),Armeo® Power[ARMin]7)等がある.一方でend-effector型は,ロボットアームの先端にあるグリップを握るか,もしくは手部を固定し,画面の表示に合わせて患側上肢でアームを動かす装置である.外骨格型よりも構造が簡単であり,グリップ以外の部分では装置は必ずしも上肢に密着していないので適合も容易である.

現在までに多くの装置が開発・販売されており,RCTにて有効性が報告されている機器としては,InMotion ARMTM[MIT-Manus]8),ReoGoTM/ReoGo-J®9),NeReBot10)等が挙げられる.そして,一部のend-effector型は非麻痺手の運動も同時に行う両手動作型に設計されており,RCTにて有効性が報告されている機器はBi-Manu-Track11),MINE12)が挙げられる.

また,手指の関節運動をターゲットにした機器で,RCTで有効性が示されている機器としてはAmadeo®13),Gloreha14)等があるが,近年のシステマティックレビュー15)においては有効性が低いとの報告もある.

しかし,手指の動きの複雑さゆえに,肩・肘関節の運動をターゲットにした機器よりも開発・販売されている機器が少なく,必然的に報告数も少ないため,今後の発展が期待される分野である.

上肢近位部の機能改善を目的としたロボットリハにおいて,外骨格型とend-effector型のどちらが有効であるかの検討がいくつかなされている.

Veerbeekら13)は,システマティックレビューの中でサブ解析を行い,end-effector型は同量の練習がなされた他の介入と比較して,効果量の上でFugl-Meyer Assessmentの上肢項目(FMA)の有意な改善を示すが{N=670,平均値の差(MD):2.59,95%CI:0.77-4.41,Z=2.79,P=0.005,I2=35%},外骨格型は示さなかったとしている(N=210,MD:1.76,95%CI:-0.29-3.82,Z=1.68,P=0.09,I2=22%).

Leeら14)は,中等度~重度上肢麻痺(FMA30点以下)を呈した生活期(発症から3ヶ月以上経過)の患者38名を外骨格型であるArmeo® Powerを使用する群(n=19)とend-effector型であるInMotionARMTMを使用する群(n=19)に無作為に分類し,それぞれ通常の作業療法30分に加え,30分/日,週5日,4週間の追加練習を行った結果を比較している.

結果として,FMAにおける有意差はなかったものの,上肢の能力障害の程度を示すWolf Motor Function TestやStroke Impact Scaleの中でも上肢機能に関連する社会参加の項目にてend-effector型の方が有意に改善したと報告している.その理由として,外骨格型は関節自由度が高く,複数の関節の協調運動を補助する一方で,重度~中等度麻痺の場合はコントロールが難しい可能性があることを示唆している.

以上に紹介した機器を含め,これまでに多くの機器の有効性が報告されている.コクランレビュー4)での包括基準を満たした報告で複数使用されている機器や,本邦での使用報告がある機器について,販売元のホームページやRCTでの報告を参考に表にまとめたので,参照いただきたい.  
 
【共著】
庵本直矢(名古屋市総合リハビリテーションセンター 作業療法科 作業療法士)  
 
【引用文献】
1) 脳卒中治療ガイドライン.日本脳卒中学会 脳卒中ガイドライン委員会 編.協和企画,2019.
2) Winstein CJ, et al. Guidelines for adult stroke rehabilitation and recovery. A guideline for healthcare professionals from the American heart association/American Stroke Association. Stroke 47:e97-e169,2016.
3) Langhorne P, et al. Stroke rehabilitation. Lancet 377:1693-1702, 2011.
4) Mehrholz J, et al. Electromechanical and robot-assisted arm training for improving generic activities of daily living, arm function, and arm muscle strength after stroke. Cochrane Database Syst Rev, 2018.
5) Loureiro R, et al. Advances in upper limb stroke rehabilitation: a technology push. Med Biol Eng Comput 49:1103-1118, 2011.
6) Housman SJ, et al. A randomized controlled trial of gravity-supported, computer-enhanced arm exercise for individuals with severe hemiparesis. Neurorehabil Neural Repair 23(5):505-514, 2009.
7) Klamroth-Marganska V, et al. Three-dimensional, task-specific robot therapy of the arm after stroke: a multicentre, parallel-group randomised trial. Lancet Neurology 13(2):159-166, 2014.
8) Lo A, et al. Robotic-assisted therapy for long-term upper limb impairment after stroke. N Engl J Med 362:1772-1783, 2010.
9) Takahashi K, et al. The efficacy of upper extremity robotic therapy in subacute post-stroke hemiplegia:an exploratory randomized trial. Stroke 47:1385-1388,2016.
10) Masiero S, et al. Robotic-assisted rehabilitation of the upper limb after acute stroke. Arch Phys Med Rehabil 88:142-149, 2007.
11) Hesse S, et al. Computerized arm training improves the motor control of the severely affected arm after stroke. A single-blinded randomized trial in two centers. Stroke 36:1960-1966, 2005.
12) Lum PS, et al. Robot-assisted movement training compared with conventional therapy techniques for the rehabilitation of upper-limb motoro function after stroke. Arch Phys Med Rehabil 83:952-959 ,2002.
13) Orihuela-Espina F, et al. Robot training for hand motor recovery in subacute stroke patients: A randomized controlled trial. J Hand Ther 29(1):51-57, 2016.
14) Vanoglio F, et al. Feasibility and efficacy of a robotic device for hand rehabilitation in hemiplegic stroke patients: a randomized pilot controlled study. Clin Rehabil 31(3):351-360, 2017.
15)Veerbeek JM, et al. Effects of robot-assisted therapy for the upper limb after stroke. Neurorehabil Neural Repair 31:107-121, 2017.
16)Lee SH, et al. Comparisons between end-effector and exoskeleton rehabilitation robots regarding upper extremity function among chronic stroke patients with moderate-to-severe upper limb impairment. Sci Rep 10, 1806, 2020. [https://doi.org/10.1038/s41598-020-58630-2]
17) Hocoma社ホームページ(参照:2020.05.13)
18) BIONIK LABORATORIESホームページ(参照:2020.5.13)
19) 帝人ファーマ株式会社ホームページ(参照:2020.5.13)
20) Reha stim社ホームページ(2020.5.13参照)
21) 安川電機ホームページ(2020.5.13参照)
22) tyromotion社ホームページ(2020.5.13参照)
23) Idrogenet社ホームページ(2020.5.13参照)
24) Rehab-Robotics社ホームページ(2020.5.13参照)

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