前回は先行性姿勢調整(APA’s)について説明し、それらはさまざまな感覚のフィードバック情報から形成されると記載しました。今回は小脳にトピックを当てていきたいと思います。小脳といえば「運動学習」の役割についてよく講義がされていますが、APA’sに対しても間接的に影響を与えることがあります。

4つの脊髄小脳路

脊髄小脳路は4つに分けられており、上下肢の深部感覚を小脳へ伝える役割があります。

脊髄視床路や内側毛帯など視床へといく経路が「意識に登る」感覚情報を伝えるのに対して、脊髄小脳路は「意識に上らない」感覚を小脳へ伝えていきます。

小脳中部へ連絡するものとして、

・前脊髄小脳路:下肢からの深部感覚を、上小脳脚を通って対側の小脳虫部の皮質に伝える(交叉性)

・吻側脊髄小脳路:上肢からの深部感覚を、上・下小脳脚の両方(主に上小脳脚)を通り1)、同側の小脳虫部の皮質に伝える(非交叉性)

の2つがあります。

また小脳中間部に連絡するものには

・後脊髄小脳路:下肢からの深部感覚を、下小脳脚を通って小脳中間部の皮質に伝える(非交叉性)

・楔状束小脳路:上肢からの深部感覚を、下小脳脚を通って小脳中間部の皮質に伝える(非交叉性)

の2つがあります。

小脳虫部と小脳中間部の役割

小脳中間部・虫部は前述の通り、脊髄からの四肢・ 体幹の固有受容器情報入力が大部分を占めます。そのため、小脳中間部と小脳虫部皮質と室頂核は脊髄小脳と言われます。

また系統発生学的には、鳥類や人間以外の哺乳類で発達が見られており古小脳とも分類されることもあります。

小脳中間部のプルキンエ細胞は中位核へ出力され、そこから赤核細胞→赤核脊髄路へと繋がっていきます。

赤核脊髄路と筋の機能的シナプス結合を定量評価した研究においては屈筋への結合の方が伸筋よりも優勢であることが報告されており2)、ネコが障害物を乗り越えるとき3)や、歩行時の遊脚相の振り出し運動を大きくしたような運動で活動性が上がるというような報告4)もあります。

以上のことから赤核脊髄路は四肢屈筋群のコントロールに関わっていると考えられます。

ただ、赤核脊髄路の研究は動物を用いたものが多いため、ヒトにもそれが当てはまるかどうかは少し疑問が残ると言われています5)。

また中間部から上小脳脚を介して視床腹外側核へと連絡し、そこから運動野・前頭連合野へと連絡する経路もあります。

次に小脳虫部は室頂核と連絡があり、そこから下小脳脚を通過して同側の橋・延髄網様路及び前庭神経核へと連絡されます。

網様体脊髄路は前回のコラムでも記載した通り、先行性姿勢調整に関わり、また前庭脊髄路も身体の伸展においで重要な役割を果たします。

したがって、小脳への感覚入力は四肢運動の巧緻性並びに、姿勢制御に非常に重要な役割を果たすことが考えられます。

※運動に関わる脊髄小脳からの出力経路

以上から小脳も感覚のフィードバックから姿勢や運動の調整に大きな役割と果たすことがわかります。

タッチングや運動・トレーニングなどで人間の脳に及ぼす影響は非常に大きいですので、トレーナーやセラピスト、治療家は責任重大です。

次回は姿勢制御における前庭機能の役割について記載します。

【参考文献】

1)Heimer.L: The Human Brain and Spinal Cord. Springer, 1995, pp370

2)Cheney PD,et al: Effects on wrist an digit muscle activity from micro stimuli applied at the sites of rubro-motoneuronal cells in primates. J Neurophysiol 66: 1978-1992, 1991

3)Zelenin PV, et al: Activity of Red Nucleus Neurons in the Cat during Postural Corrections J Neurosci 30: 14533–14542, 2010 

4)S. Lavoie, et al: Discharge characteristics of neurons in the red nucleus during voluntary gait modifications: a comparison with the motor cortex. J Neurophysiol 88: 1971-1814, 2002

5)大屋知徹ほか:中脳赤核と運動機能 ―系統発生的観点から―. 脊髄外科 28: 258-263, 2014

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