手術療法や,その後のリハビリテーションの効果を客観的に検証していくためには,上肢機能や手の状態を一定の基準に則って評価していくための尺度が必要となってくる.これらには,関節可動域や握力など医療者が客観的に測定する「医療者側評価」と,日常生活上での手の使用感や満足度を患者自身がアンケート形式で回答して数値化していく「患者立脚型評価」が存在し,両者を総合的に評価することが重要となってくる.今回は,その中でも代表的なものを中心に,橈骨遠位端骨折における評価法の種類と特徴を解説していく.

医療者側評価と患者立脚型評価の特徴

近年,プレート固定の開発や進歩によって橈骨遠位端骨折における治療成績は向上している.また,エビデンスに基づいた介入を展開する上でも多面的な評価の確立は重要となってくる.橈骨遠位端骨折の治療成績や経過に関して,以前までは,関節可動域や握力などの客観的所見,X線写真での形態的評価などといった医療者側評価から総合的に判断されることが多かった.

しかし,これらの医療者側評価は十分な妥当性が検証されておらず,また,患者の日常生活においての生活の質(QOL)や満足度などが捉えきれないといったことが問題点として挙げられるようになってきた.対して,患者立脚型評価は,1990年頃から徐々に普及し始め,医療者側の視点から手の状態を評価するだけでなく,患者自身が日常生活動作上での手の使用感・満足度など,主観的にどのように感じているかといった視点を反映させているところに特徴がある.評価の実施方法は,患者がアンケート形式で回答して数値化するといった流れである.

また,患者立脚型評価の妥当性や信頼性に関して作成の過程で科学的な検証もされてきている.橈骨遠位端骨折診療ガイドライン2017 1)では,ガイドライン作成にあたって2009年~2014年までの論文を調査した結果,最も使用頻度が高かった評価法として,患者立脚型評価ではDisabilities of the arm,shoulder and hand(以下,DASH)スコア,医療者側評価としてはMayo Wrist Scoreであったと述べられており,また,1998年~2009年の調査と比較すると,医療者側評価だけでなく,患者立脚型評価も用いて検証している論文が増えている傾向があるとされている.(表1)

代表的な患者立脚型評価

=DASH= 日常生活における上肢活動の困難さに焦点を当てており,橈骨遠位端骨折における患者立脚型評価として世界的に最も使用されている.2005年には日本語版が使用されている.対象年齢は本来18~65歳である.内容は,30項目の質問があり,それぞれに対して1~5までの5件法によって上肢活動の困難さを評価し,1が障害なし,5が遂行不可能となる.Beaton2)らは,手関節や肩に問題のある対象者200名に対して,介入前と介入から12週後にDASHなどを用いた評価を実施し,この評価法の妥当性や信頼性が認められたと報告している.その一方で,欧米以外の地域では文化の違いや表現などから回答が難しかったり,文章表現が分かりにくいとの指摘もある.

=Hand20= 日常生活動作上の上肢動作の遂行度や疼痛などを20項目の質問で明らかにしていく自記式の質問票である.質問項目が日本人にも分かるように工夫されており,対象者は,評価を行う時点より1週前の上肢の動作能力を想起して回答していく形となる. また,Suzukiら3)が,上肢に障害のある431名の患者を対象に実施した調査でも,絵と短い質問によって高齢者でも回答しやすく,回答欄の欠損による無効例が少なかったと報告されている.

=Patient-rated wrist evaluation(以下,PRWE)= 患者立脚型評価のうち,手関節の機能や疼痛に限定して作成されているのが特徴であり,1998年にMacDermid 4)によって公表された.また,日本手外科学会より日本語版も出されており,橈骨遠位端骨折に対して,DASHよりも鋭敏な評価が可能と考えられる.内容は,5項目の痛みと10項目の機能に対する計15項目の質問で成り立っており,機能の質問の中身は,特定の動作(患肢でドアノブを回す,5㎏の物を運ぶなど)と通常の動作(身の回りの動作,家事など)から構成されている5).痛みと機能の合計100点満点で得点を算出し,点数が低いほど動作の困難さや手関節痛が軽いとされている.

代表的な医療者側評価

=Mayo Wrist Score(Cooneyの評価)およびその改変版= 手関節機能に特化した評価法であり,内容は,疼痛,手関節可動域,握力,仕事復帰を各々4~5段階(一項目につき、25点満点)で評価していく.比較的,臨床現場で簡便に実施することができ,橈骨遠位端骨折の評価としては世界で最も使用頻度が高い.判定基準として,100点満点中の90 点以上は「excellent」を示すのに対し,65点以下は「poor」と見なされる.問題点としては,手関節可動域が掌背屈可動域のみの評価となっているという点が挙げられている6).また,この評価法は改変版などが複数あるが,橈骨遠位端骨折においては1987年のMayo Wrist Scoreが基準となっていることが多いとされている7).

【共著】 堀本 拓究(大阪鉄道病院 作業療法士)

【引用文献】 1)日本整形外科学会診療ガイドライン委員会/橈骨遠位端骨折診療ガイドライン策定委員会(編):橈骨遠位端骨折診療ガイドライン2017(改訂第2版).南江堂:132-134,2017. 2)Beaton DE et al:Measuring the Whole or the Parts? Validity,Reliability,and Responsiveness of the Disabilities of the Arm,Shoulder and Hand Outcome Measure in Different Regions of the Upper Extremity.J Hand Ther 14(2):128-146,2001. 3)Suzuki M et al:Development and validation of an illustrated questionnaire to evaluate disabilities of the upper limb.J Bone Joint Surg 92(7)-B:963-969,2010. 4)MacDermid JC et al:Patient Rating of Wrist Pain and Disability: A Reliable and Valid Measurement Tool.J Orthop Trauma 12(8):577-586,1998. 5)Imaeda T et al:Reliability,validity,and responsiveness of the Japanese version of the Patient-Rated Wrist Evaluation.J Orthop Sci 15(4):509-517,2010. 6)面川庄平:橈骨遠位端骨折に対する評価法.整・災外57:145‐150,2014. 7)安部幸雄:橈骨遠位端骨折を究める‐診療の実践 A to Z.南江堂:170-171,2017.

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