前回のコラムでは感覚野から頭頂連合野に情報が集約されるという話を記載しました。
今回からは、姿勢制御の本髄に迫る内容「先行性姿勢制御」の解説になります。
姿勢制御のメカニズムはこれまでに解説した感覚のフィードバック情報が頭頂連合野に集約され、そこから発現するようになっています。
運動指導を行ううえで必ず理解しておいた方がよい知識であり、明日からの臨床や現場に役立つかと思います。

運動前野と補足運動野の役割

随意運動を行うための指令を出すのは運動野(ブロードマンの4野)になりますが、その前方には運動前野と補足運動野(6野)があり、高次運動野とも言われています。

運動野自身は頭頂連合野と直接の連絡はなく、情報源は視床と高次運動野から得ているため1)、自信を取り巻く環境情報や自身の欲求、過去の記憶との照合は行えないことになります。

運動前野の役割は①運動の動作の誘導、②感覚情報と動作の連合、③動作のプランの形成という機能を持つとされています1)。①と②は頭頂葉からの情報を処理して動作の発現と制御に繋げる過程であり、③は前頭前野から送られてくる抽象的な動作プランを変換して、運動野に出力することになります。

以上から、運動前野は運動を行うために動作を外の世界に向かって促すような役割があると考えられます。

補足運動野は姿勢制御の中でもこれから解説する、予測的姿勢調節に大きく関与することが報告されています2)。

先行性姿勢調節(APA)

運動を行う際には、必ずその運動に付随した姿勢をコントロールする機能が必要になります。姿勢をコントロールする機能としては代償性姿勢調整と予測的姿勢調整(antcipatory postural adjustment: APA)があり3)、特に後者は運動の開始や運動中の動作変更に先行して、最適な姿勢コントロールを予測的に行うためのシステムとなっており4)、スポーツ動作はもちろん日常生活動作においても非常に重要になります。

この機能は特に腰椎(下部体幹)にあるコアスタビリティにフォーカスを当てられていることが多く、一例としてはHodgesらは、腕を上に挙げる動作ではどの方向に挙げたとしても腹横筋が主動作筋(この場合は三角筋)に先行して収縮を始めると報告しています5)。これは腰部が骨構造的に不安定で、安定性機能を筋機能に依存していることも考えられます。

詳しくは私が以前記載したコラム「腰椎の安定性について〜運動学と解剖学の視点から考える〜」・「腰椎の安定性について〜神経生理学の視点から考える〜」を見ていたければそのあたりに詳しく記載をしています。

そしてこの先行的な姿勢調整(APA)は6野から橋・網様体を通って体幹や上下肢の中枢にある筋の活動を調整するようになっており、この経路を「皮質橋網様体脊髄路」と呼びます。

この時に注目して欲しいのは運動野から下降していく皮質脊髄路は延髄錐体で90%近くは交差して脊髄の背側索(外側)を通って反対側の上下肢遠位筋の活動を司ります。一方、網様体脊髄路や前庭脊髄路、視蓋脊髄路などの脊柱や四肢近位をコントロールする経路は延髄錐体での交差は行わず、そのまま脊髄の前索・前側索(内側)を通り、同側(あるいは両側)の運動を司ります。

このことから姿勢のコントロールに関わる経路を「内側運動制御系」、随意運動に必要な四肢抹消の筋活動を司る経路を「外側運動制御系」と分けされています6)。

またここで個人的に重要だと思うのは随意運動を行う経路(錐体路)は錐体交差し、APAになど姿勢をコントロールする経路(錐体外路)は錐体交差しないという点にあります。左手のリーチを行うとき、反対側の体幹の姿勢コントロールに錐体外路(内側系)が機能している割合が大きいかもしれないということになります。

実際に随意運動が行われている反対側の腹横筋・内腹斜筋がAPAとして機能しているという報告もあります7)。つまり姿勢コントロールの段階で何なエラーが生じている、体幹機能に問題があるのでは?と考えたときに、体幹ユニットを一つに見るのではなく、左右に分けてみる視点が大事になってきます。

そしてAPAも含めた運動プログラムを組み立てるのは運動前野・補足運動野であり、その情報源となっているのは頭頂連合野で構成された身体図式です。身体図式を組み立てるのは視覚情報や表在感覚・深部感覚、つまり感覚のフィードバック情報がとても重要になります。

次回以降は小脳や前庭機能に関して解説をしていきます。引き続きよろしくお願いいたします。

【参考文献】 1)丹治順:頭頂連合野と運動前野はなにをしているのか?─その機能的役割について─. 理学療法学40 巻 8 号; 641-648. 2013 2)Bolzoni F, et al: Transcranial direct current stimulation of SMA modulates adjustments and their role in movement performance. Front Hum Neurosci 10: 525, 2016 3)Massion J : Postural Control system, Current Opinion in Neurobiology,877-887,1994 4)Brooks VB: Posture and locomotion. In the Neural Basis of Motor Control. Oxford University Press: 140-150, 1986 5)Hodges.PW,et al: Feedforward contraction of transversus abdominis is not influenced by the direction of arm movement. Exp Brain Res 114: 362-370, 1997 6)Kuypers HGJM: Anatomy of the descending pathways. In Brooks VB(ed): Handbook of Physiology, Sect 1, vol 2, Motor Control. Bethesda, American Physiological Society, pp597-666, 1981 7)Anderson EA, et al: Diverging intramuscular activity patterns in back and abdominal muscles during trunk rotation. Spine (Phila Pa1976)27: E152-E160, 2002 8)高草木薫:大脳皮質・脳幹-脊髄による姿勢と歩行の制御機構. 脊髄外科 27;208-215, 2013

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