橈骨遠位端骨折について(疫学と分類)

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竹林崇 大阪府立大学 教授

橈骨遠位端骨折は,作業療法士が臨床現場でも比較的多く遭遇する骨折の一つである.近年では,掌側ロッキングプレート固定などの手術の進歩に伴って,強固な固定と早期からのリハビリテーションが行われている.今回は第1回目として,橈骨遠位端骨折における疫学と分類の概要を解説していく.

橈骨遠位端骨折の発生率

橈骨遠位端骨折は全骨折の1/6を占める.本邦における全年齢を対象とした疫学調査においては,橈骨遠位端骨折における人口1万人当たりの発生率は10.9人~14人(男性:女性=1:3.2)とされている1).また,萩野ら2)は,成人での年齢別による発生率をみると,男性は年齢による発生率に差がないのに対し,女性は閉経後の50歳代から発生率が増加し,人口10万に当たり300~400人程度となって,75歳以上になると発生率の上昇は見られなくなると述べている.これは,加齢に伴って易転倒性や転倒時に手を着いての防御ができなくなることが原因の一つに挙げられており,80歳以降に増加する大腿骨頚部骨折や上腕骨骨折とは異なる特徴である.

橈骨遠位端骨折の受傷機転・発生時期

転倒による骨折の発生が最も多く,全体の半数以上を占めているとされている3).また,転倒などの低エネルギー損傷は女性に多く,交通事故などの高エネルギー損傷は男性に多いという特徴がある4).発生時期は12月や1月などの地面が凍結しやすい冬季に多く,利き手や非利き手での差異はないとされている.

橈骨遠位端骨折の危険因子

骨密度の減少は,脊椎や大腿骨の骨折と同じく大きな危険因子の一つとなる5).橈骨遠位端は,海綿骨が多く,女性ホルモンの影響なども受けやすいといわれており,女性で50歳代からの発生率が増加する要因の一つである.その他にも,高齢,低体重,片足起立時間15秒未満,中手骨における骨皮質の多孔性や橈骨遠位端の骨微細構造の劣化,独居,グルココルチコイド(副腎皮質ホルモンの一つ,ステロイド薬剤に含まれる)の使用歴,血清ビタミンD低値,路面の凍結や低気温などの気象,テストステロン低値などが報告されている6).

橈骨遠位端骨折の骨折型と受傷メカニズム

橈骨遠位端骨折は,関節外骨折が半数以上,その次に関節内完全骨折が約3割,最後に関節内部分骨折が少数である1).ここでは,骨折型と受傷メカニズムを解説する.

▶Colles骨折 フォーク状変形を呈する背側転位型の骨折である.橈骨遠位端骨折全体の80%程度が本骨折である.手関節が背屈位になるような形で地面に着くと,体重による力と地面から橈骨に伝わる力の両方が手関節部に集中した後,橈骨の関節窩背側面に圧縮力を生み,骨折が起こるとされている.

▶Smith骨折 掌屈転位型の骨折である.手関節が掌屈位になるような形で地面に着くと,橈骨の関節窩の掌側に圧縮力が生じ,骨幹端掌側・骨幹端背側が損傷することで起きるとされてきた.しかし,Matsuuraらは7),実際にこのような肢位での受傷によってSmith骨折が起こる確率は低く,実際に多い受傷機転としては,転倒の際に手掌を前方に着くよう肢位が最も多いと述べている.また,他には自転車のハンドルを軽くグリップした状態での手関節軽度掌屈位での受傷などでも起こるとされている.

▶Barton骨折 橈骨遠位端の関節内骨折と橈骨手根関節の亜脱臼を合併する骨折である.骨片が背側へ転移する背側Barton骨折と,掌側へ転移する掌側Barton骨折に分けられる.

橈骨遠位端骨折の分類

治療方針や予後予測を見通すために骨折型分類が用いられるが,ここではAO分類について解説する.

AO分類(図1) 関節外骨折をA,関節内骨折をB,関節内完全骨折をCと大まかに分類し,その中で,さらに3段階に分類していく.橈骨遠位端骨折ガイドライン2017 8)では,ガイドライン作成にあたり,文献5325編を調査した結果,国内外でAO分類の使用が最も多かったと述べられている. 図1 橈骨遠位端骨折AO分類(堀内行雄:MB Orthop 2000;13(6):1-12;図5)

【共著】 堀本 拓究(大阪鉄道病院 作業療法士)

【引用文献】 1)今谷潤也:橈骨遠位端骨折の最新知見.整形外科71(1):59-65,2020. 2)萩野浩:橈骨遠位端骨折の疫学と予防.整形・災害外科 57(2):121-128,2014. 3)Sigurdardottir K et al:Epidemiology and treatment of distal radius fractures in Reykjavik, Iceland,in 2004.Comparison with an Icelandic study from 1985.Acta Ortop 82:494-498,2011. 4)Diamantopoulos AP et al:The Epidemiology of Low-and High-Energy Distal Radius Fracture in Middle-Aged and Elderly Men and Women in Southern Norway.PLoS One 7:e43367,2012. 5)Hui SL,Slemenda CW,Johnston CC Jr:Age and bone mass as predictors of fracture in a prospective study.J Clin Invest 81:1804-1809,1988. 6)日本整形外科学会診療ガイドライン委員会/橈骨遠位端骨折診療ガイドライン策定委員会(編):橈骨遠位端骨折診療ガイドライン2017(改訂第2版).南江堂:12-13,2017. 7)Matsuura Y et al:Smith's fracture generally occurs after falling on the palm of the hand.JOrthop Res 35:2435-2441,2017. 8)日本整形外科学会診療ガイドライン委員会/橈骨遠位端骨折診療ガイドライン策定委員会(編):橈骨遠位端骨折診療ガイドライン2017(改訂第2版).南江堂:18-19,2017.

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