前回までのコラムでは表在感覚・深部感覚(関節・筋・腱)が身体にどのような影響を及ぼすのか、そしてそれらの感覚器はどのような刺激を入れれば興奮が得られるのかを書いていきました。ではその感覚はどこにいくのでしょうか?
これらの感覚は大脳と小脳に上っていきます。そしてこれらの感覚が姿勢や運動にどう関わってくるのか?今回はその部分について数回に分けて解説していきたいと思います。

大脳に昇る感覚の経路は大きく二つ

大脳に昇る感覚の経路は大きくは2種類に分けられます。

▶後索-内側毛帯路(図左) 主に深部感覚や精密な表在感覚を伝える経路です。

脊髄に入った後、同側後索を上行し延髄後索核でニューロンを変えて交差し、内側毛帯となって視床腹後外側核(VPL核)に終わります1)。

▶脊髄視床路(図右) こちらは温痛覚や曖昧な表在感覚を伝える経路になります。

脊髄後角から前交連で交差した後、対側の前側索を上行します。腰部など下位髄節は前側索の背外側を上行し、順次腹内側に繊維が加わっていく構造になり、延髄後角からの繊維が合流した後は橋の尾側付近で背側に向かって視床に進んでいきます2)。

脊髄視床路で重要になるのは痛みの感覚であり脊髄視床路の中でも、外側脊髄視床路は体部位別の痛みが1次体性感覚野で再現し痛みの部位の同定が行われ、2次体性感覚野で痛みの性質が分析されます3)。またこれとは別の内側脊髄視床路と呼ばれる経路では大脳辺縁系(扁桃体・海馬)、前帯状回、島皮質、最終的に前頭前野に情報が伝えられ、痛みの情動的あるいは認知的側面を引き起こす経路とされています3)。

どちらの経路も感覚のフィードバックを担っていますが、最終的にこの体性感覚野に入力された情報が、姿勢制御や運動制御を行う根源となる「身体図式:Body Schema」を形成することになります。

後索-内側毛帯路の障害が起こると?

後索-内側毛帯路は前述の通り、固有感覚や緻密な表在感覚を上行する経路であり判別性感覚(繊細な情報)を伝える経路と言われています4)。

この経路が障害されるとどうなるかを調べた実験として、Ferraroら5)は頸部の後索が両側切断された直後のサルが四肢の自発運動を起こさず前肢を曲げた状態になり、歩行は足の甲で行い、ぶら下がりや咀嚼ができなくなったとしています。

一方でこれらの症状は3〜6ヶ月で次第に回復したと報告しています。Melzack6)らはネコで長さ3m、幅7.6cmの細い棒の両端に餌を置き、棒の上で歩いて餌を食べ向きを変え反対側の餌を食べる訓練をしてから、後索を切断しその後2〜4週間経過を追った実験で、切断後100%棒から足を踏み外すようになったと報告しており、後索-内側毛帯路は意図した運動の行動プログラムの選択に重要な役割を果たすと結論づけています。

慢性疼痛の脳活動

脊髄視床路の内外側では最終的に伝導する場所が違うことを先ほど記載しましたが、痛みの刺激の違いで脳活動が変化するのかどうかを示したシステマティックレビューを紹介します。

Apkarianらのレビュー7)では健常者を対象に侵害需要刺激を加えた場合の脳活動を調べた論文68本では1次体性感覚野や2次体性感覚野、視床などの興奮が多くの研究で確認され、前頭前野の変化はおよそ半数であったとしています。

一方、自発痛などの臨床的疼痛(慢性痛モデル)時の脳活動を研究した論文30本では1次体性感覚野や2次体性感覚野の活動は20%強で確認されなかったのに対し、前頭前野の活動変化が80%を超えていたと報告しています。

ここからわかるのは、急性の痛みと慢性痛では脳活動に違いがあるということになります。筋骨格系に対してアプローチ(徒手療法や運動療法)を行い、痛みを改善するなどは臨床的にはよくありますが、慢性的な痛みが長期間継続している方に対しては生活習慣や痛みの認知面からのアプローチなども考慮する必要があると考えられます。

【参考文献】 1)岩村吉晃: 神経心理学コレクション. タッチ. 医学書院, 2001, pp218 2)小山なつ, 他:痛みの伝導路 -歴史から学ぶ-. 脊髄外科29:287-292. 2015 3)森岡周:リハビリテーションのための脳・神経科学入門 改訂第2版. 共同医書出版社. 2016, pp192-194 4)Mountcastle VB: Central nervous mechanism in mechanoreceptive sensibility. In Brookhart JM, Mountcastle VB et al: Handbook of Physiology, section1, The Nervous system, Vol Ⅲ, Sensory Processes, Part2. pp789-878, American Physiological Society, Bethesda MD, 1984 5)Ferraro A, et al: Effects of experimental lesions of the posterior columns in Macacus rhesus monkeys. Brain 57 : 307-332, 1934 6)Melzak R,et al: Corsal column contributions to motor behavior. Exp Neurol 33: 53-68, 1971 7)Apkarian et al: Human brain mechanism of pain perception and regulationin health and disease. Eur J Pain 9:463-484, 2005

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