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病態・病期による目標設定介入の実際〜地域〜

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竹林崇 大阪府立大学 教授

前回のコラムでは急性期・回復期における目標設定について解説した。今回は地域領域での目標設定について解説してゆく。

目次

    訪問リハビリにおける目標設定


    訪問リハビリテーションの作業療法に関しては、その訓練内容が問題視されている。平成27年に行われた厚生労働省の調査によると、訪問リハビリの訓練内容は約80%が機能回復訓練や基本動作訓練とされており、活動・参加レベルへの介入不足が報告されている1)。作業療法に限定された報告ではないが、このような結果から地域で行われる訪問リハビリにおいては、身体機能面への介入の偏りが見て取れる。介入内容から考えると目標設定内容においても、機能面への比重の高さが推察される。

    このような地域における作業療法場面での使用が推奨されているのが、生活行為向上マネジメント(Management Tool of Daily Life Performance : MTDLP)である2) 。日本作業療法士協会が作成しており、協会主催の研修会も定期的に開催されている。

    伊藤ら3)は訪問リハビリの作業療法利用者36名に対して、MTDLPを使用した群と対象群(従来の訪問リハビリ利用者)に振り分けた比較研究を行った。MTDLPを使用した群においては、その目標内容が活動・参加レベルが多い傾向を示した。

    MTDLPで使用されている「生活行為聞き取りシート」4)では、生活行為(家事や社会活動など)を目標とする説明文がシート上に記載されている。また目標を思い浮かべる手助けとして「興味関心チェックリスト」の使用を推奨している。シートの構造上、目標内容を必然的に活動・参加レベルに設定しやすい作りになっている。この「生活行為聞き取りシート」及び「興味関心チェックリスト」は日本作業療法士協会がHPにて公開している(文献4参照)。MTDLPの臨床的な効果は検証段階ではあるが、MTDLPに限らず目標設定に関するフレームワークを使用することで、機能訓練に固執しない目標設定を行える可能性が考えられる。

    また訪問リハビリにおける作業療法においては、いかに在宅生活・環境にアプローチできるかに主眼が置かれている報告が多い。これはOBP2.0を用いた訪問での作業療法5)、高齢期における訪問でのCI療法6)など多彩な事例報告にて検討されている。共通しているのは、どれも目標が在宅生活での変化に主軸を置いていること、家族や支援者など周囲の環境を最大限に活用していることである。

    介護老人保健施設・通所施設における目標設定・介入の実際


    厚生労働省は1000名を対象とした介護老人保健施設(入所施設)への調査を行い、機能訓練内容について基本動作訓練と機能回復訓練が過半数を占めるという報告を行っている7)。ほか応用的動作訓練(食事やトイレなどのADL訓練)29%、社会適応練習11.5%など作業療法士が主として関わる介入内容の少なさがみてとれる。

    また利用者の希望ごとの訓練内容の分析も行われている。「家事ができるようになりたい」との利用者の希望に対して行われている訓練内容は1番が関節可動域訓練(45.9%)・2番が筋力向上訓練 (41.9%)であり、実際に家事動作が訓練に取り入れられている割合は0-5.4%であった。利用者の重症度などは不明であるため結果の過大解釈は避けたいが、老健において家事動作などの生活課題に対する介入の頻度は少なかいことが読み取れる。

    平成27年度の報告ではあるが、現状においても近しい環境であることが想定される。同報告にて通所施設についても同様に、身体機能訓練に偏った介入内容である傾向が報告されている。

    では介護老人保健施設・通所施設においては、生活に根差した介入が行えないのか。Nagayamaらは8)介護老人保健施設利用者54名に対して、ADOCを使ったトップダウンアプローチでの介入研究を行っている。詳細は以前のコラム「目標設定介入に活用されるツール:ADOC(Aid for Dicision-making in Occupation Choice)」にて解説しているが、作業療法士の参画が生活に根差した介入を推進する可能性を秘めていることが分かる。

    また猪俣ら9)は介護老人保健施設利用者21名に対してMTDLPを用いた介入を報告している。この中で合意目標から設定した介入内容の多くが活動・参加レベル(70%)となったことを報告している。この他に通所施設においても、作業に根差した実践の報告が散見される10)11)12)。

    活動・参加レベルの介入が多いからよいという安易な解釈は行えない。しかし、以上の報告から作業療法士が介護保険領域で専門性を示すこと、MTDLPなど目標設定のフレームワークを活用することで、機能訓練のみに固執せず目標に広がりをもたらす介入が可能となるのではないかと考える。

    【共著】
    高瀬 駿(川崎協同病院 作業療法士)

    【引用文献】
    1)厚生労働省 社会保障審議会(介護保険給付費分科会).訪問リハビリテーション.第140回参考資料.https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000167241.html (2020年12月24日閲覧)
    2)日本作業療法士協会: 作業療法マニュアル57 生活行為向上マネジメント 改訂第2版
    3)伊藤ら: 訪問リハビリテーションにおける生活行為向上マネジメントを活用した介入効果─ 転倒恐怖感と生活活動の変化に着目して─. 作業療法, 39(6), 664-672, 2020
    4)日本作業療法士協会.MTDLPシートのダウンロード.http://www.jaot.or.jp/administration/mtdlp_sheet_dawnload/ (2020年12月24日閲覧)
    5)髙野ら: 訪問リハビリテーションにおける 「作業に根ざした実践 2.0 (OBP 2.0)」 の臨床有用性について. 作業療法, 38(3), 358-364, 2020
    6)川口ら:訪問リハビリテーションによる Home based constraint-induced movement therapy (HCI 療法) の効果. 作業療法, 36(1), 89-96, 2017
    7)厚生労働省:平成 27 年度介護報酬改定の効果検証及び 調査研究に係る調査(平成 28 年度調査)(1)通所リハ ビリテーション,訪問リハビリテーション等の中重度 者等へのリハビリテーション内容等の実態把握調査 事業報告書. https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000126194.pdf (2020年12月24日閲覧).
    8)Nagayama H,et al:Effectiveness and Cost-Effectiveness of Occupation-Based Occupational Therapy Using the Aid for Decision Making in Occupation Choice (ADOC) for Older Residents: Pilot Cluster Randomized Controlled Trial,PLoS ONE11(3),2016
    9)猪股ら:介護老人保健施設での在宅復帰支援に生活行為向上マネジメントを用いた早期介入. 作業療法, 36(1), 97-104, 2017
    10)能登ら:通所リハにおける「意味のある作業」の費用対効果. 日本作業療法士学会抄録集, 47回 ,2013
    11)上江洲聖:脳卒中リハにおける目標設定-入所、通所におけるリハを進める上での目標設定. 脳卒中リハビリテーション, 1(4), 52-62, 2019
    12)冨永美紀:重度認知症患者デイケアにおける目標設定 (作業療法と目標設定)--(目標設定の実際). 臨床作業療法 nova, 17(2), 106-111, 2020

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