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  3. ユーススポーツ関連の学術書と資格の紹介

昨年、筆者はAmerican College of Sports Medicine (ACSM, アメリカスポーツ医学会)が出版した「Essentials of Youth Fitness(Faigenbaumら著)」という学術書をベースに子どもの発達・発育や幼少期・思春期の運動処方について学びを深めました。2021年に入ってからは、National Academy of Sports Medicine(NASM, 全米スポーツ医学協会)が発行するYouth Exercise Specialization(NASM-YES)というオンラインの資格コースを受講し、先日修了しました。今回のコラムでは、この学術書と資格についてお伝えしようと思います。

目次

    Essentials of Youth Fitness


    著者のAvery Faigenbaum, Rhodri Lloyd, Jon Oliverの3人は、LTADやユーススポーツ関連の書籍や論文で名前を見ない事はないほど著名な研究者たちであり、出版元のACSMは多くの機関や団体がそのガイドラインを採用しており、世界90か国以上で5万人以上の会員を有する世界的に認知されている組織です。全3部、16チャプターで構成されている448ページの内容は、2000を超える参考文献・研究論文に基づいており、非常に良くまとまっています。

    アスレチックトレーニングを学ぶ人にとってのPrinciples of Athletic Training(Prentice著)、ストレングス&コンディショニングを学ぶ人にとってのEssentials of Strength Training and Conditioning(Haff & Triplett著)のような存在であると言って差支えないと思います。もし筆者が教育機関で「ユーススポーツ入門」のような講義を担当するとしたら、自信を持って指定図書に選ぶ、日本語訳の出版を心から望む一冊です。

    以下は同書籍の目次です。幅広いトピックが網羅されているのが伝わると思います。糖尿病や発達障害を抱えるユースへのエクササイズ処方にも一つのチャプター(15)を使っています。

    パート1:基本コンセプト(Ifundamental Concepts)
    1.身体活動と子どもの健康(Physical Activity and Children’s Health)
    2.子どもの運動科学の原則(principles of Pediatric Exercise Science)
    3.成長・成熟・身体フィットネス(Growth, Maturation, and Physical Fitness)
    4.運動能力の長期的発達(Long-Term Athletic Development)
    5.ユースフィットネス専門家の教育学(Pedagogy for Youth Fitness Specialists)

    パート2:ユースフィットネスの発達(IIYouth Fitness Development)
    6.ユースフィットネスの評価(Assessing Youth Fitness)
    7.ダイナミックウォームアップと柔軟性(Dynamic Warm-Up and Flexibility)
    8.運動技能トレーニング(Motor Skill Training)
    9.筋力・パワートレーニング(Strength and Power Training)
    10.スピード・アジリティートレーニング(Speed and Agility Training)
    11.有酸素・無酸素トレーニング(Aerobic and Anaerobic Training)
    12.統合的なプログラムデザイン(Integrative Program Design)

    パート3:現代の問題(IIIContemporary Issues)
    13.ユースアスリートとスポーツ参加(Young Athletes and Sport Participation)
    14.ユースにおける体重過多と肥満に対する運動(Exercise for Overweight and Obese Youth)
    15.特定の臨床状態にあるユースのための運動(Exercise for Youth With Selected Clinical Conditions)
    16.ユースの栄養(Nutrition for Youth)

    Youth Exercise Specialization by National Academy of Sports Medicine(NASM-YES)


    このコラムでも繰り返し紹介しているLTADモデルやProject Playの活動を通してユーススポーツ環境への関心の高まりを反映してか、アメリカでは複数の団体が幼少期・思春期の運動に特化した資格を発行しています。前述の書籍で学びを深めた著者は、各団体が資格コースで提供している内容の深さと幅に興味を持ちました。

    調べてみると想像を超える数の団体が資格を発行しており、先日修了したNASM-YESの他に
    ・American Council on Exercise のYouth Fitnessコース
    ・International Sports Science AssociationのYouth Fitness Certification
    ・American Fitness Professionals AssociationのYouth Fitness Specialist Certification
    ・National Exercise Trainers AssociationのYouth Fitness Specialty Certification
    ・American Sports & Fitness AssociationのYouth Fitness Training Certification
    ・International Youth Conditioning AssociationのYouth Fitness Specialist
    とその選択肢は多岐に渡りました。

    全てオンライン完結のコースで、料金は199から499ドル(約2万から約5万円)と若干の幅はあれど、各ウェブサイトで確認できる範囲では内容の違いに決め手がありませんでした。そこで、以前(15年ほど前になりますが)他コースを受講したこともあるNASMを選びました。

    NASMは成人を対象としたエクササイズ・トレーニングに関する資格を発行しており、安定性・筋力・パワーの3段階で構成されたOptimum Performance Training(OPT, 最適パフォーマンストレーニング)というモデルを提唱しています。ユースを対象としたエクササイズプログラムにも、このOPTモデルを採用していました。

    全83ページのテキストは下記の12チャプターから構成されており、それぞれのチャプターに対応した数分のサマリー動画があります。チャプター毎のクイズ5問と全チャプター終了後の修了試験60問(共に4択問題)で規定の点数を獲得、資格取得という流れでした。

    1.ユースフィットネストレーニングの理論(Rationale for Youth Fitness Training)
    2.ユースにおける解剖学的・生理学的な考慮(Anatomical and Physiological ConsiderationsforYouth)
    3.ユースにおける心理学的な考慮(Psychological considerations for youth)
    4.ユースにおけるフィットネス評価(Fitness Assessment for Youth)
    5.ユースにおける柔軟性のガイドライン(Youth Flexibility Guidelines)
    6.ユースにおける心肺系のトレーニング(Cardiorespiratory Training For Youth)
    7.ユースにおける体幹・バランストレーニングのガイドライン(Core and Balance Training Guidelines for Youth)
    8.ユースにおけるプライオメトリック・スピード・アジリティー・クイックネス(Plyometric, Speed, Agility, and Quickness Training for Youth)
    9.ユースにおけるレジスタンストレーニング(Resistance Training for Youth)
    10.ユースクライアントのための統合的なプログラムデザイン(Integrated Program Design for Youth Clients)
    11.ユースのための栄養(Nutrition for Youth)
    12.専門家としての成長のために(Professional Development)

    学術書と資格の住み分け


    幼少期・思春期の運動に関する知識を満遍なく・体系立って得ることができるEssentials of Youth Fitnessは、ボリュームと深さがあるので、腰を据えてこのエリアに向かい合う気持ちがある人や、プログラム運営者やユースを指導するコーチをスーパーバイズをする立場にある人には強く勧めたい一冊です。著者は半年以上かけてじっくりと学びました。

    一方、NASMは子どもの発育・発達における基本コンセプトの中心部分を押さえつつ、独自のOPTモデルを採用して現場への応用を重視したHow to的な要素が強いコースで、深い知識を持つスーパーバイザーの元で現場指導をするコーチに向いている印象です。両方とも日本語訳がされていないため、全ての人にアクセスしやすいものではありませんが、Essentials of Youth Fitnessは非常に質の高い学術書であり、またビジネス的な側面を含む資格の存在は、アメリカのユーススポーツへのアプローチを知る上で参考になると思い、紹介しました。

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