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  3. 医療分野におけるAI活用の今

医療分野において、人工知能(Artificial Intelligence;AI)を用いた研究が急増しており、近い将来、医療現場にAIが入ってくることが予想される。しかしながら、AIに対するリテラシーについては十分とは言えない。本項では、人工知能について解説し、医療とAIの取り組みについて紹介する。

目次

    医療分野におけるAI


    医療分野のAIと言っても数多くの分野が存在し、今後、飛躍的に利活用が進んでいくことが予測される。そのため、我々、医療従事者はAIの動向を把握し適切に使用していく必要がある。医療分野におけるAIは、主に機械学習(Machine Learning)という技術を使用していることが多い。機械学習とは、実際のデータを使用して、コンピュータ(機械)が少しずつ学習することを言う。機械学習の方法の一つに、Deep LearningやNeural Networkなどがある。

    機械学習の技術を用いた研究では、AIによる診断精度と医師による診断精度を比較し、どちらの方が正確であるかを調査した報告1)や、各疾患の予後予測において従来の統計モデルとAIのアルゴリズムを用いた予測モデルのどちらが正確であるか2)を検証した論文が多い。画像診断の精度を比較した場合は、AIによる診断と経験豊富な専門医師による診断精度はAIによる診断の方が,精度が高かったという報告もある3)。

    アメリカ食品衛生局は、2018年に眼底画像から糖尿病性網膜症を即座に検出するシステムとして、世界で初めて、AIによる画像診断システムを承認した。このAIは、軽度以上の糖尿病性網膜症を87.4%、軽度以上の糖尿病性網膜症でない人を89.5%の精度で識別できるというものである4)。

    医療AIは、画像診断だけでなく、チャットボットに質問を行うことで医療アドバイスを受ける事ができるAIアプリケーションも存在する。バビロンヘルス社が提供する医療AIアプリである、ドクターは、スマートフォンを使用したチャットを行うことで医療的なアドバイスを24時間365日受けることができる。このAIは診断精度も検証されており、プライマリ・ケア医師の診断精度は64%から94%とばらつきがあるのに対し、AIでは80%と安定した精度を有している5)。

    本邦においても、病院の待合時間などを活用した医療問診のAIがある。株式会社Ubieが提供するAIは、患者の症状ごとに質問(問診票)を最適化し、タブレット端末などを用いて患者に回答してもらうことで、医師が使用する電子カルテ上に症状が自動で記載されているというものである。このAI導入により、問診時間が短縮され、より患者と向き合う時間を確保できる。これらAIは、医療従事者の業務効率化だけでなく、医療費削減の効果も期待されている。

    脳卒中分野におけるAIの活用事例


    脳卒中分野においても多くの研究が報告されており、PubMedで”Stroke” AND ”Machine Learning”と検索した論文数は急増している(図1)。今回は、そのなかでもリハビリテーションに関連したものを紹介する。

    脳卒中患者の転機の予測は治療の意思決定だけでなく、目標設定にも役立つ。Heoら2)は、発症後7日以内の急性期脳卒中患者を対象に、発症3ヶ月後のmodified Rankin Scaleの予測を従来の統計モデル(ロジスティック回帰)と機械学習(Deep Neural Network、Random Forest)の精度を比較した。その結果、Deep Neural Network(DNN)による予測モデルが最も精度が高かったと報告している(図2)。

    また、食事動作や更衣動作、入浴動作などのセルフケア活動に関しても、非線形サポートベクトルマシンという機械学習により予測できるという報告がある6)。脳卒中患者の握力から、Functional Independence Measureのセルフケア項目を予測しており、67%から77%の精度で予測できる。この研究では、全データのうち90%を機械学習のためのデータに使用し、残りの10%をテストデータ(検証用データ)として使用しており、予測精度は、テストデータのものである。

    機械学習の技術を用いた研究は、予後予測だけではなく異常動作の検知をするという報告もある。Caiら7)は、上肢に麻痺のある脳卒中患者を対象に、機械学習を用いて上肢の運動などを解析し、リハビリロボットにより、代償運動に対するフィードバックをリアルタイムに実施している。その結果、視覚的なフィードバックを行うより代償運動が減少する可能性を見出している。

    脳画像に関しても、機械学習を用いた研究が行われている8)9)。脳梗塞などの診断を行う際に使用するCT画像やMRI画像を機械学習により解析し、梗塞巣を視覚的に確認しやすく梗塞巣の領域を切り取る。脳画像を解析するAIの精度は、まだ高いものではないが、今後、病変を確認するだけのAIだけでなく、脳画像から起こりうる症状や確率も提示してくれるようになる可能性がある。これら機械学習を用いたモデルを一般化するためには、アプリケーションやインターネット環境が必要である事が多く、全ての医療現場で即座に使用できるものではない。しかし、さらに研究が進むことで、より精度の高い予後予測や質の高いリハビリテーション治療を行える可能性がある。

    【引用文献】
    1)Nagendran M, Chen Y, et al.: Artificial intelligence versus clinicians: systematic review of design, reporting standards, and claims of deep learning studies. BMJ. 2020, 25;368.
    2)Heo J, Yoon JG, et al.: Machine Learning-Based Model for Prediction of Outcomes in Acute Stroke. Stroke. 2019,50 (5):1263-1265.
    3)Ehteshami Bejnordi B, Veta M, et al.: Diagnostic Assessment of Deep Learning Algorithms for Detection of Lymph Node Metastases in Women With Breast Cancer. JAMA. 2017,12;318:2199-2210
    4)Abràmoff MD, Lou Y, et al.: Improved Automated Detection of Diabetic Retinopathy on a Publicly Available Dataset Through Integration of Deep Learning. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2016, 1;57(13):5200-5206.
    5)バビロンヘルス社ホームページ:https://www.babylonhealth.com/press/press-room (2020年5月2日閲覧)
    6)Suzuki M, Sugimura S, et al.: Machine-learning prediction of self-care activity by grip strengths of both hands in poststroke hemiplegia. Medicine (Baltimore). 2020 ,99(11):9512.
    7)Cai S, Wei X, et al.: Online compensation detecting for real-time reduction of compensatory motions during reaching: a pilot study with stroke survivors. J Neuroeng Rehabil. 2020,28;17(1):58.
    8)Öman O, Mäkelä, et al.: 3D convolutional neural networks applied to CT angiography in the detection of acute ischemic stroke. Eur Radiol Exp. 2019, 13;3(1):8.
    9)Pérez Malla CU, Valdés Hernández MDC, et al: Evaluation of Enhanced Learning Techniques for Segmenting Ischaemic Stroke Lesions in Brain Magnetic Resonance Perfusion Images Using a Convolutional Neural Network Scheme. Front Neuroinform. 2019, 29;13:33.

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