前回のコラムでは姿勢制御のメカニズムを構成する3つの感覚(視覚・体性感覚・前庭感覚)を紹介し、ごく簡単に解説しました。
今回はその中から体性感覚についてさらに掘り下げていきたいと思います。
大雑把にはわかる方もいらっしゃると思いますが、これらの感覚を拾う受容器にはそれぞれ特徴が見られます。そのあたりを理解することでコンディショニングやリハビリテーションにも工夫を加えることが可能になります。
今回はその中でも表在感覚に着目したコラムになります。

体性感覚は表在感覚と深部感覚に分けられる

上図はごく簡単に感覚を分類分けした図になります。

表在感覚は皮膚感覚とも言われ、皮膚にあるそれぞれの受容器に対しての刺激を感知して、感覚が生まれます。

体性感覚はそれぞれの組織にある受容器が反応することで、感覚を認識します。

この図は実際の皮膚受容器がどの様に配置されているかを表したものです。

こうしてみると、マイスネル小体とメルケル盤は比較的表層で、小さい範囲をカバーしているように見えます。また、ルフィニ終末とパチニ小体は深層広い範囲にわたってカバーしているように見えます。

そしてこの表は実際の皮膚に存在する受容器の詳細になります。

やはりルフィニ終末・パチニ小体がより広範囲をカバーしており、メルケル盤とマイスネル小体は狭い範囲をカバーするということが伺えます。

ルフィニ終末は局所あるいは遠方からの皮膚の引っ張りに応答し、パチニ小体は手のどこに加わった刺激でも応答するほど感度がよく、振動刺激として感知するようになっています1)。

メルケル盤は垂直方向の皮膚変形に反応するとされ、物体の材質・形の感知に優れています。マイスネル小体は接触物のエッジ(角)の鋭さや点字のような小さい起伏の検出などに優れているとされます1)。

表在感覚は姿勢制御にどう関わるのか?

表在感覚も姿勢制御には非常に重要で、バランス感覚に関わることが報告されています2)。

前足部及び足底全体に麻酔薬を用いて表在感覚を減少させた研究では、前足部麻酔での開眼片足立位で平均COP(足圧中心)速度が全方向で約10%増加、かつ閉眼2足立位ではCOP速度とCOP面積が約11%増加し、足底全体麻酔では前後動揺が閉眼2足立位で増加すると報告されています3)。

また年齢別での片脚立位保持時間を調査した研究では、閉眼状態での立位時間は20代から徐々に低下し始めるのに対し、開眼状態での立位時間は 60 代から急速に低下していくと報告されています4)。この研究では足底の二点識別覚距離が計測されており、年齢と二点識別覚距離計測には正の相関があり、二点識別覚距離と片脚立位保持時間との間には負の相関があると報告しています4)。また年齢を5郡に分け二点識別覚距離を群間比較すると加齢ともに有位に増加するとしており4)、以上から加齢と共に表在感覚が低下していく(二点識別覚距離が増大)と、片脚立位保持時間が低下するという事になります。

このことからから、表在感覚が立位姿勢の制御に影響を及ぼすことがわかります。

表在感覚に対しての介入方法

上肢からの介入や、足底にある感覚受容器を刺激することで姿勢制御能力の改善が見込まれるという報告は多くあります。

安定した支持物に右示指の接触(ライトタッチ)を行うことによって左感覚運動皮質領域と左後部頭頂皮質領域で高い脳活動が得られ、立位姿勢の安定化が認められたと報告されています5)。

61歳〜71歳の方を対象にランダムに厚みが違う5種類の正方形ゴム上での10秒間立位保持で、ゴムの硬さを判別するという課題を1日10set10日間実施した研究では、課題後の閉眼時重心動揺が有意に減少しファンクショナルリーチの結果も向上、その変化値もコントロール群と比較して有意に改善したと報告しています6)。

同様の課題を20-27歳に行った研究では、開眼・閉眼時ともに不安定板上での立位動揺が課題後に減少し、立位姿勢の安定化が図られたと報告しています7)。

また脛骨神経領域に対しての皮膚反射を電気刺激で誘発した研究では、ヒラメ筋が踵への刺激で促通、足底前部内側では抑制され、前脛骨筋では逆の傾向を示したという報告もあります8)。

主観的にも、薄いインソールや中足骨パッドを挿入するだけでバランス能力がかなり向上することも経験上よくあり、脳卒中の方で手の感覚入力を行った後で足のプレーシングに大きく変化する経験もあるので、表在感覚が姿勢制御に及ぼす影響は大きいという印象があります。

実際に脳卒中の方に対して3種類のゴムの硬さを判別する課題を10日間行った研究では、開眼・閉眼共に立位時の総軌跡長がコントロール群に比べ減少し、開眼時における変化量も有意に改善していると報告されています。

触れ方や足のつき方でも姿勢が変化する可能性がある

上肢・下肢の表在感覚が姿勢制御に影響する可能性についてここまで触れてきましたが、実際に選手や患者さんに触れる我々のタッチなども、姿勢制御に影響する可能性があります。

トレーニングの際にどこに触れておくかなどは考える必要がありますし、またその際の足底面の環境や、手を置く場所などでも入力される感覚が変化し、姿勢に変化が現れる可能性は大いにあります。 (ポジティブにもネガティブにも)

また足のタコ(胼胝)やむくみなどで足部にかかる圧なども変化しますので、アスリートや内科疾患を合併する人などの運動機能にも影響を及ぼす可能性を頭の片隅に入れておくといいかもしれません。

【参考文献】 1)岩村吉晃: 神経心理学コレクション. タッチ. 医学書院, 2001, pp26-28 2)Hoch MC, et al: Plantar vibrotactical detection deficits in adults with chronic ankle instability. Med Sci Sports Exerc 44: 666-672, 2012 3)Meyer PF, et al: The role of plantar cutaneous sensation in unperturbed stance. Exp Brain Res 156: 505-512, 2004 4)Morioka S, et al: Changes in the Equilibrium of Standing on One Leg Various Life Stages. Curr Gerontol Geriatr Res 2012: Article ID 516283, 2012 5)Ishigaki T, et al: EEG frequancy analysis of cortical brain activities in induced by effect of light touch. Exp Brain Res 234:1429-1440, 2016 6)Morioka S, et al: Effects of plantar hardness discrimination training on standing postural balance in the elderly: a randomized controlled trial. Clinil Rehabil 23: 483–491, 2009 7)Morioka S, et al: Influence of perceptual leraning on standing posture balance: repeated training for hardness discrimination of foot sole. Gait Posture 20: 36-40, 2004 8)中島 剛, 他: 足底面の皮膚感覚情報によるつまずき反応の特徴, デサントスポーツ科学 27: 137-144, 2006 9)Morioka S, et al: Effects of perceptual learning exercises on standing balance using a hardness discrimination task in hemiplegic patients following stroke: a randomized controlled trial. Clinil Rehabil 17: 600–607, 2003

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