経頭蓋直流電流(tDCS)は近年リハビリテーション領域で特に注目されている.脳卒中上肢麻痺領域を始めとして幅広い障害の改善に向けて行われている。本稿では幅広い分野で活用されている非侵襲的刺激の効果について身体障碍領域を中心にそのエビデンスを紹介する

tDCS

tDCSは近年特に注目されているものの,エビデンスの蓄積がまだ不十分なため今後期待されている.tDCSの効果について,欧州の専門家グループ1)が2016年にまでに発表された論文を元にエビデンスについて発表しており,その結果を抜粋して表2に示す。今回のコラムでは,は身体障害領域を中心に紹介する.

表2 臨床症状に沿ったtDCSの推奨度(文献1を一部改変) ※Level A:effective Level B:probably effect

疼痛

線維筋痛症に関しては,多くの研究が陽極を左の一次運動野に貼り付け,1~2mAで20分を1セッションとして5~10セッション行う事で,実施前と比較して実施後に14~58%疼痛が軽減し,それが介入終了後1〜2か月後も継続していることが報告1)されている.

Donnaら2)は線維筋痛症へのtDCSの効果に関するシステマティックレビューにより8つの研究でメタ解析を行った.その結果,疼痛の程度(VAS・NRS)をアウトカムとして対照群と比較して全セッション終了後にstandarized mean difference(SMD)で-0.50(-0.87~-0.14)tDCS群で疼痛が軽減したことを報告している.また疼痛全般に対するtDCSについて2018年に出されたCochrane review3ではSMDで-0.43(-0.63~-0.22) )対照群と比較してtDCS群で疼痛が軽減することが報告されている.

不全脊髄損傷

de Araújoら4)は不全脊髄損傷へのtDCSの効果に関するシステマティックレビューにより6つの研究でメタ解析を行った.この研究で抽出された報告は,上肢機能の改善に向けて大脳一次運動野の手の領域に陽極の刺激を行ったのが3つと下肢機能の改善に向けて下肢の領域に陽極刺激を行ったものが3つであった.それを統合して解析したところ,対照群と比較して運動機能に関してSMDで0.26(0~0.53)と小さいが効果が認められたが,筋力に関してはSMDで0.35(-0.21~0.92)と統計的な有意差が認められなかったことが報告されている.

パーキンソン病

Leeら5)はパーキンソン病の歩行能力へのtDCSの効果に関するシステマティックレビューにより18の研究でメタ解析を行った.この研究で抽出された報告では,片側もしくは両側に陽極の刺激を一次運動野や運動前野,背外側前頭前野などに陽極刺激をおおむね20分程度実施することで,歩行能力に関して対照群と比較して全セッション終了後にSMDで0.36(0.15~0.57)であった.しかしフォローアップでは両群間に有意な差はなかったことを報告している.

上肢機能に関しては,Simpsonら6)が行ったシステマティックレビューでは10の研究について調査を行い,刺激の方法等に研究ごとに差があり結果の異質性が大きいものの,Unifed Parkinson’s Disease Rating Scale motor sectionや上肢の運動スピードに関してtDCSは効果的な可能性があるとしている.

脳卒中

脳卒中後の上肢運動機能に関しては,O’Brienら7が行ったシステマティックレビューにより18の研究で急性期1つ,亜急性期4つ,生活期13の研究でtDCSに関するメタ解析を行った.tDCSの刺激に関しては,大脳半球の一次運動野の手の領域に対して刺激を行われているものが多く,結果としては18の研究全体で対照群と比較してSMDで0.31(0.08~0.55)とtDCS群で上肢運動機能が良かったことが報告されている.また刺激の方法としても片側性に刺激を行うよりも,障害側に陽極,非損傷側に陰極刺激を行うほうがより上肢機能改善に効果が得られることを報告している.

ADL面に関しては,Bernhardら8はネットワークメタアナリシスという手法を用いて26の研究を対象にtDCSの刺激法の違いによる(大脳半球一次運動野の損傷側の陽極刺激,非損傷側の陰極刺激,両方法の併用)効果の違いについて報告している.それによると先のO’Brienら7の報告と違い,陽極刺激,両側の刺激に関しては,対照群と比較して有意な効果の違いがみられなかったが,陰極刺激はSMDで0.42(0.15~0.69)と有意な効果の違いがみられたことを報告している.またtDCSの安全性に関する検証もしており,刺激による有害事象が少ないとの結果も報告されている.

歩行機能に関しては,Liら9が行ったシステマティックレビューでは10の研究についてメタ分析を行い,刺激の部位は大脳半球一次運動野の下肢の領域,手の領域等様々であるが,対照群と比較して歩行能力がSMDで0.44(0.01~0.87),下肢筋力がSMDで1.54(0.29~2.78)とtDCS群のほうに効果的があったことを報告している.

【共著】 前田 正憲(JA長野厚生連 鹿教湯三才山リハビリテーションセンター 鹿教湯病院)

【引用文献】 1)Lefaucheur JP, et al. Evidence-based guidelines on the therapeutic use of transcranial direct current stimulation (tDCS). Clin Neurophysiol 2017;128(1):56-92. 2)Lloyd DM, et al. Is transcranial direct current stimulation (tDCS) effective for the treatment of pain in fibromyalgia? A systematic review and meta-analysis. J Pain 2020. 3)O'Connell NE, et al. Non-invasive brain stimulation techniques for chronic pain. Cochrane Database Syst Rev 2018;4:CD008208. 4)de Araújo AVL, et al. Effectiveness of anodal transcranial direct current stimulation to improve muscle strength and motor functionality after incomplete spinal cord injury: a systematic review and meta-analysis. Spinal Cord 2020. 5)Lee HK, Ahn SJ, et al. Does transcranial direct current stimulation improve functional locomotion in people with Parkinson's disease? A systematic review and meta-analysis. J Neuroeng Rehabil 2019;16(1):84. 6)Simpson MW, et al. The effect of transcranial direct current stimulation on upper limb motor performance in Parkinson's disease: a systematic review. J Neurol 2019. 7)O'Brien AT, et al. A. Non-invasive brain stimulation for fine motor improvement after stroke: a meta-analysis. Eur J Neurol 2018;25(8):1017-26. 8)Elsner B, et al.. Transcranial direct current stimulation (tDCS) for improving capacity in activities and arm function after stroke: a network meta-analysis of randomised controlled trials. J Neuroeng Rehabil 2017;14(1):95. 9)Li Y, Fan J, et al.. Effects of transcranial direct current stimulation on walking ability after stroke: A systematic review and meta-analysis. Restor Neurol Neurosci 2018;36(1):59-71.

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