非侵襲的脳刺激(rTMS・tDCS)は近年リハビリテーション領域で活用されている脳卒中上肢麻痺領域を始めとして幅広い障害の改善に向けて行われている.本稿では幅広い分野で活用されている非侵襲的刺激の効果についてのエビデンスを紹介する.

反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)の効果

欧州の専門家グループは,2014から2018年に発表された論文を元にrTMSのエビデンスについて発表している1).まずその結果を抜粋して表1に示す.今回は,身体障害領域に関係しているものを中心にrTMSの具体的方法について紹介していく.

表1 臨床症状に沿ったrTMSの推奨度(文献1を一部改変) ※Level A:効果がある Level B: おそらく効果がある

疼痛

帯状疱疹後の疼痛,腰部脊柱管狭窄症など神経障害性疼痛に対して奨励されているrTMSの方法としては,刺激の部位は疼痛側と対側の一次運動野の手指領域・疼痛部位を支配する領域に対して高頻度刺激(10Hzから20Hz)を,TMSにより運動が誘発される強度(RMT)の80%で10分から30分,3から10セッション行うことで効果があるとされている.

Yuらは慢性疼痛に対する高頻度rTMSに関するシステマティックレビューにより25の研究でメタ解析を行った.その結果,疼痛の程度(VAS・NRS)をアウトカムとして対照群と比較して全セッション終了後にstandarized mean difference(SMD)で0.86(-1.15 ~ -0.56)rTMS群で疼痛が軽減し,介入終了後1か月後もそれが維持されたとしている.

線維筋痛症に関しては,Boyerら2)は一次運動野に対する高頻度刺激(20Hz)をRMTの80%で20分を1セッションとして2週で10セッション行うことで,QOL特に活力,心の健康,社会生活機能に改善がみられたが,疼痛に関してはコントロール群と比較して違いはなかったとしている.

一方、Mikhailらは線維筋痛症に対するrTMSに関するシステマティックレビューにより6つの研究でメタ解析を行った.その結果,NRSをアウトカムとして,対照群と比較して全セッション終了後にSMDで-1.24(-0.78 ~ -1.71)rTMS群で疼痛が軽減し,終了後1週間から1か月後もその効果が維持されたとしている.

パーキンソン病

パーキンソン病の運動症状に関しては,Kimら3)は一次運動野の下肢領域に対して両側性で高頻度刺激(10Hz)をRMTの90%で20分を1セッションとして5日連続で実施し,1週間後の評価でUPDRS-Ⅲ(運動項目)やすくみ足に改善がみられたことを報告している.また一次運動野の手の領域に対して両側性で高頻度刺激(5Hzや10Hz)をRMTの90%で20分を1セッションとして10セッション実施し,1か月後もUPDRS-Ⅲの改善が一部の被検者で維持されたことが報告4)5)されている.

一方Changxiaらはパーキンソン病の運動機能に対するrTMSによるシステマティックレビューにより3)4)の研究でメタ解析を行った.その結果,UPDRS-Ⅲをアウトカムとして,対照群と比較して全セッション終了後にSMDで0.37(0.24~0.50),そしてその中の1)2)の研究では介入後の経過についてもフォローしておりSMDで0.38(0.11~0.65)rTMS群が良い結果であったとしている.

脳卒中

①急性期 脳卒中の運動麻痺に対するrTMSは多くの取り組みがされている.その中で急性期の脳卒中後の手の麻痺に関しては,rTMSを行うことが奨励(Level A)されている.その中でも非損傷側の一次運動野の手の領域に対して低頻度の刺激が良いとされている.

Zhengら6)は脳卒中急性期患者(平均発症後19日)に対して,非損傷側の一次運動野の手の領域に対して,低頻度刺激(1Hz)をRMTの90%で30分を1セッションとして週6日・4週実施したところ,偽刺激をした群と比較して上肢麻痺の指標であるFMA,運動能力の指標であるWMFT,ADL能力の指標であるmBIでrTMSを実施群が有意に改善したことを報告している.

Duら7)は発症後3~30日の脳卒中患者に対して,非損傷側の一次運動野の手の領域に対して,低頻度刺激(1Hz)をRMTの110~120%で20分を1セッションとして5セッション実施したところ,偽刺激をした群と比較してFMAや上肢MRC,BIで有意な改善があったことを報告している.なお本報告では損傷側に対する高頻度刺激(3Hz)は偽刺激と比較してFMAに関して有意な差はなかったことも報告されている.

Zhangら8)は脳卒中後上肢麻痺に対するrTMSによるシステマティックレビューの中で急性期の対象者に対する9つの研究でメタ解析を行った.その結果,上肢機能や物品操作等をアウトカムとして, 対照群と比較してSMDで0.69(0.41~0.97)rTMS群が良い結果であったとしている.またHsuら9)の報告でも同様に急性期に関して対照群と比較してrTMS群はSMDで0.79(0.42~1.16)であったとしている.

②生活期 慢性期の脳卒中後の手の麻痺に関して,rTMSを行うことは有効である可能性(Level C)1)とされており,効果は一定ではない.Harveyら10)のrTMS群132名と偽刺激群67名を対象とした報告によると,FMA,WMFTに関して両群に有意な差がなかったとされている.

Zhangら8)は脳卒中後上肢麻痺に対するrTMSによるシステマティックレビューの中で生活期の対象者に対する8つの研究でメタ解析を行った.その結果,上肢機能や物品操作等をアウトカムとして,対照群と比較してSMDで0.34(0.00~0.69)rTMS群が良い結果であったとしている.

一方失語症に関しては,特に非流暢性運動失語に関して効果がある(Level B)1)とされており,ブローカ野が位置する左の下前頭回と対側の右の下前頭回に対して低頻度刺激を行うことが良いとされている.Yoonら11)は右の下前頭回に対して,低頻度刺激(1Hz)をRMTの90%で20分間実施し、その後45分間の言語訓練1セッションとして20セッション実施したところ,復唱や物品呼称に有意な改善がみられたとしている.

【共著】 前田 正憲(JA長野厚生連 鹿教湯三才山リハビリテーションセンター 鹿教湯病院)

【引用文献】 1)Lefaucheur JP et al. Corrigendum to "Evidence-based guidelines on the therapeutic use of repetitive transcranial magnetic stimulation (rTMS): An update (2014-2018)" [Clin. Neurophysiol. 131 (2020) 474-528]. Clin Neurophysiol 2020;131(5):1168-9. 2)Boyer L et al. rTMS in fibromyalgia: a randomized trial evaluating QoL and its brain metabolic substrate. Neurology 2014;82(14):1231-8. 3)Kim MS et al. Efficacy of cumulative high-frequency rTMS on freezing of gait in Parkinson's disease. Restor Neurol Neurosci 2015;33(4):521-30. 4)Brys M et al. Multifocal repetitive TMS for motor and mood symptoms of Parkinson disease: A randomized trial. Neurology 2016;87(18):1907-15. 5)Makkos A et al. High-Frequency Repetitive Transcranial Magnetic Stimulation Can Improve Depression in Parkinson's Disease: A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Study. Neuropsychobiology 2016;73(3):169-77. 6)Zheng CJ et al. Effect of combined low-frequency repetitive transcranial magnetic stimulation and virtual reality training on upper limb function in subacute stroke: a double-blind randomized controlled trail. J Huazhong Univ Sci Technolog Med Sci 2015;35(2):248-54. 7)Du J et al. Effects of repetitive transcranial magnetic stimulation on motor recovery and motor cortex excitability in patients with stroke: a randomized controlled trial. Eur J Neurol 2016;23(11):1666-72. 8)Zhang L, et al. Short- and Long-term Effects of Repetitive Transcranial Magnetic Stimulation on Upper Limb Motor Function after Stroke: a Systematic Review and Meta-Analysis. Clin Rehabil 2017;31(9):1137-53. 9)Hsu WY, et al. Effects of repetitive transcranial magnetic stimulation on motor functions in patients with stroke: a meta-analysis. Stroke 2012;43(7):1849-57. 10)Harvey RL et al. Randomized Sham-Controlled Trial of Navigated Repetitive Transcranial Magnetic Stimulation for Motor Recovery in Stroke. Stroke 2018;49(9):2138-46. 11)Yoon TH et al.. Therapeutic effect of repetitive magnetic stimulation combined with speech and language therapy in post-stroke non-fluent aphasia. NeuroRehabilitation 2015;36(1):107-14.

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