脳卒中後上肢麻痺に対するミラーセラピーの今後の展望

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竹林崇 大阪府立大学 教授

本コラムでは、今まで解説してきたミラーセラピーの今後の展望、ミラーセラピーと類似した効果が期待できる電気刺激療法の可能性、視覚誘導性の運動錯覚を用いた介入の可能性について解説する。

ミラーセラピーの可能性

ミラーセラピーは、単独でもある程度エビデンスが確立されているアプローチとされているのが現状である。コクランのシステマティックレビュー¹などの様々な臨床研究を通して有効性が検証されており、米国の心臓/脳卒中学会のガイドライン²や本邦の脳卒中治療ガイドライン³でも推奨されている。しかし、ミラーセラピーの具体的な治療法やメカニズム、さらには対象者の特徴(重症度等)等、未だ明らかにされていないものは多い。

また、近年ミラーセラピーと電気刺激や振動刺激などの併用療法に関して臨床研究が行われている。しかし、サンプルサイズの小ささやバイアスなどにより正確な臨床試験があまりされていないのが現状である。本稿では、ミラーセラピーの発展形である様々な手法の実施とその効果について記載する。

電気刺激療法の可能性

電気刺激療法の一つとして近年注目されているContralaterally Controlled Functional Electrical Stimulation(以下、CCFES)を紹介する。CCFESは、センサー電極を健側に貼り、健側の随意運動をトリガーとして麻痺側の同部位の運動を誘発する電気刺激である(図1参照)。

図1.CCFES

2012年にKnutsonら⁴は、発症後6か月以内の脳卒中患者を対象に無作為化比較試験を実施した。彼らは、上肢機能の向上を目的とした手指の屈曲や伸展による物品の把持・操作・リリースなどを含む練習に加えて、CCFESを実施した群と周期的にNeuromuscular Electrical Stimulation(以下、NMES)を実施した群で比較検討を行った。結果としては、CCFESを実施した群のほうが、手指伸展のActive ROM、FMA、BBT、AMATで有意に向上したと報告した。

さらに、2016年にもKnutsonら⁵は、上記に示したCCFESとNMESの無作為化比較試験⁴を発症後6か月以降の脳卒中患者を対象に実施した。上肢機能の向上を目的とした手指の屈曲や伸展による物品の把持・操作・リリースなどを含む練習に加えて、CCFESを実施した群と周期的にNMESを実施した群で比較検討を行った。結果としては、CCFESを実施した群のほうが、BBTでのみ有意に向上したと報告した。

また、2019年にYuら⁶は、発症後15日以内の脳卒中患者を対象に無作為化比較試験を実施した。彼らは、上記のKnutsonら⁴⁻⁵の研究を参考に、神経筋促通法を中心とした介入に加えてCCFESを実施した群と周期的にNMESを実施した群で比較検討を行った(図2参照)。結果としては、CCFESを実施した群のほうが、BIなどの活動に関する評価、手指伸展のActive ROMとMMT、FMAの合計得点で有意に向上したと報告した。

図2.左図a)のNMESと右図b)のCCFES

以上のように、CCFESによる介入は、手指の随意性や運動機能に関して、より効果があることを示唆している。この点において、ミラーセラピーと類似の効果が期待できると考える。しかし、研究におけるサンプルサイズも小さく、世界的に臨床研究が少ないのが現状である。今後、臨床研究を通してCCFESの効果を明らかにするとともにメカニズムの解明が必要だと考える。

運動錯覚を用いた介入の可能性

視覚誘導性の自己運動錯覚を用いた介入として近年研究されているKiNesthetic illusion indued by visual stimulation(以下、KiNvis)について紹介する。KiNvisは、麻痺側の上部に健側の動作映像を反転再生し、麻痺側の手があたかも動いているように運動錯覚させる装置である(図3参照)。

図3.KiNvis

2019年に金子ら⁷は、従来の上肢機能練習に加えてKiNvisを実施することで、運動機能に影響があるのかを調べるために、慢性期の脳卒中患者11人を対象にケースシリーズ研究を実施した。介入の内容としては、10日間にわたり行われ、KiNvisによる視覚誘導性の運動錯覚の介入を20分間実施し、その後に従来の課題志向型訓練を60分間実施した。また、KiNvisによる20分の介入は、KiNvisと電気刺激療法(NMES)を用いた併用療法を実施した(図4参照)。

図4.KiNvisの介入の様子

結果としては、介入前後で比較して、FMAの合計得点とFMAの肩・肘・前腕の項目、手関節と手指のMAS、ARAT、MALに関して、有意な向上がみられた。KiNvisに関する研究は、世界的に臨床研究が少ないため、今後は無作為化比較試験などを通して効果を明らかにするとともにメカニズムの解明が必要であると考える。

【引用文献】 1)Thieme H, et al: Mirror therapy for improving movement after stroke. Cochrane Datebase Syst Rev, 2012 2)Winstein CJ, et al: guidelines for adult stroke rehabilitation and recovery. A guideline for healthcare professionals from the American Heart Association/ American Stroke Assocciation. Stroke 47: e98-107, 2018 3)日本脳卒中学会脳卒中ガイドライン委員会: 脳卒中治療ガイドライン2015.協和企画, p292. 2015 4)Knutson JS, et al: Contralaterally Controlled Functional Electrical Stimulation for Upper Extremity Hemiplegia: An Early-Phase Randomized Clinical Trial in Subacute Stroke Patients. Neurorehabilitation and Neural Repair 26 239-246. 2012 5)Knutson JS, et al: Contralaterally Controlled Functional Electrical Stimulation Improves Hand Dexterity in Chronic Hemiparesis: A Randomized Trial. Stroke 47: 2596–2602. 2016 6)Yu Zheng, et al: Contralaterally controlled functional electrical stimulation improves wrist dorsiflexion and upper limb function in patients with early-phase stroke: A randomized controlled trial. J Rehabil Med 51 103-108. 2019 7)Fuminari Kaneko, et al: A Case Series Clinical Trial of a Novel Approach Using Augmented Reality That Inspires Self-body Cognition in Patients With Stroke: Effects on Motor Function and Resting-State Brain Functional Connectivity. Frontiers in Systems  Neuroscience 2019

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