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脳卒中後上肢麻痺に対するミラーセラピーのメカニズムについて

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竹林崇 大阪府立大学 教授

前回のコラム『脳卒中後上肢麻痺に対するミラーセラピーの概要』では、ミラーセラピーの概要および実際のアプローチについて示した。本コラムでは、ミラーセラピーのメカニズムについて解説する。

目次

    【参考記事】
    脳卒中後上肢麻痺に対するミラーセラピーの概要

    ミラーセラピーのメカニズムについて

    神経生理学的な観点からメカニズムについて考察する。2018年にZengら¹によって報告されたメタ分析の中には、メカニズムに関してはいまだに明確にはされていないものの、(1)損傷側の一次運動野の賦活²、(2)ミラーニューロンシステムの関連性³、(3)上側頭回と上後頭回の関連性⁴、(4)楔前部と後帯状皮質の関連性⁵などの見解があると述べている。それぞれ論文を通して以下に解説する。

    (1)損傷側の一次運動野の賦活について
    Garryら²が、健常者を対象に運動誘発電位(MEP)を指標として表1、図1に示す4つの条件の中で、ミラーセラピーを実施した際に一次運動野が賦活することを報告している(図2参照)。


    表1. 4つの条件


    図1. 4つの条件

    灰色:動かしている上肢。白色:動かさない上肢で運動誘発電位を測定する。AciveとInactiveの図の黒色:木製の箱を設置し被験者から見えないようにしている。Central/Restの図の黒色:正方形のテープを設置。


    図2. 条件下における運動誘発電位
    縦軸:運動誘発電位(MEP)、横軸:それぞれの条件。Mirrorの条件は他の条件と比較して優位に賦活した

    表1, 図1, 2は文献2を参考

    また本邦においては、2012年に野嶌ら⁶が健常者を対象に研究を実施し,運動同側一次運動野(損傷した一次運動野を研究内では想定)の興奮性増大と非運動側の運動機能向上が同時に認められ,continuous Theta Brust Stimulationによる抑制刺激を運動同側の一次運動野に与える事で,運動機能の低下が認められた.これにより,同側一次運動野の興奮性増大と運動機能向上に関する因果関係の可能性を示唆した.

    (2)ミラーニューロンシステムの関連性³
    ミラーニューロンシステムとは、様々な感覚情報から得られた他者の動きを自らの行為のように変換して活性化する神経細胞群の働きのことである。ミラーニューロンの領域に関しては、サルの前頭葉F5領域(運動前野腹側部)で発見され、ヒトにおいては一次運動野、ブローカ野、下頭頂小葉、上側頭回が関係している⁷と考えられている。

    2007年には田平ら⁸が健常者を対象に運動誘発電位(MEP)を用いた研究で、視覚的に自己の動作を観察した群とミラーセラピーを実施した群の両群ともに一次運動野と一次感覚野の賦活がみられたことを報告した。このことから、他者の動作の観察時だけでなく自己の動作の観察時においてもミラーニューロンシステムが活動している可能性、およびミラーセラピーを実施中にミラーニューロンシステムが活動し感覚入力と運動出力の中枢を賦活させていることを示唆している。ただし、これらが直接的に麻痺手の機能改善に関わっているどうかについては不明な点が多い。

    (3)上側頭回と上後頭回の関連性⁴
    Matthysら⁴が、健常者を対象にfMRIを用いた研究で、対照群と比較してミラーセラピーを用いた群において、上側頭回と上後頭回の賦活がみられたことを報告した。上側頭回は、視覚的な刺激を処理する高次の領域であり、動きを観察する際に賦活すると述べている。上後頭回は、背側視覚路に関与している。また、本研究の結果からは、前項で触れた通り、ミラーセラピーとミラーニューロンシステムとの関係性は、発見できなかったと報告している。

    (4)楔前部と後帯状皮質の関連性⁵
    Michielsenら⁵が、脳卒中患者にfMRIを用いた研究で、対照群と比較してミラーセラピーを用いた群において、楔前部と後帯状皮質の賦活がみられたことを報告した。楔前部と後帯状皮質は、自己身体の認識や視空間の注意に関与しており、学習性不使用に関しても効果があると報告している。また、本研究の結果からも、前項で触れた通り、ミラーニューロンシステムとミラーセラピーの関係性は、発見できなかったと報告している。

    ミラーセラピーのメカニズムの可能性

    以上のようにメカニズムに関して述べてきたが、いまだに明確にされていないことが多い。ミラーセラピーとミラーニューロンシステムの関係性については、肯定的な意見、否定的な意見、様々な議論が行われているのが現状である。神経生理学的なメカニズムが明確になることは、併用療法の有無、介入時期や時間、環境設定などアプローチにおける効果的な方法の決定に大きくつながると考える。

    【引用文献】
    1)Zeng W, et al: Mirror therapy for motor function of the upper extremity in patients with stroke: A meta-analysis. J Rehabil Med 2018 Jan
    2)Garry M.I, et al: Mirror, mirror on the wall: viewing a mirror reflection of unilateral hand movements facilitates ipsilateral M1 excitability. Experimental Brain Research volume 163, pages118-122(2005)
    3)Luigi Cattaneo, et al: The Mirror Neuron System: Arch Neurol 2009; 66: 557-560.
    4)Matthys K, et al: Mirror-induced visual illusion of hand movements: a functional magnetic resonance imaging study. Arch Phys Med Rehabil. 2009 Apr;90(4):675-81.
    5)Michielsen ME, et al: The neuronal correlates of mirror therapy: an fMRI study on mirror induced visual illusions in patients with stroke. J Neurol Neurosurg Psychiatry 2011; 82 :393-398
    6)野嶌一平, et al:ミラーセラピー運動学習におけるヒト一次運動野機能の役割:理学療法学 第39号第2巻2012
    7)Nishitani N, et al: Viewing lip forms :Cortical dynamics. Neuron 36: 1211-1220, 2002
    8)田平隆行, et al: Mirror Box課題における運動野および体性感覚野の興奮性の変化:長崎大学大学院医歯薬学総合研究科保健学専攻 保健学研究. 2007, 20(1), p. 9-15

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