脳卒中後上肢麻痺に対するミラーセラピーのエビデンスについて

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竹林崇 大阪府立大学 教授

近年、脳卒中後上肢麻痺に対して、様々なアプローチのエビデンスが確立されつつある。本コラムでは、ミラーセラピーのエビデンスについて解説する。

ミラーセラピーのエビデンスについて

ミラーセラピーのエビデンスに関して、米国の心臓/脳卒中学会のガイドラインとコクランによるシステマティックレビューをもとに解説する。

(1)米国の心臓/脳卒中学会のガイドライン 2016年に米国の心臓/脳卒中学会が発表したガイドライン¹には、エビデンスレベルA、クラスⅡaで「実施することが好ましい治療」と示している。メンタルプラクティスやミラーセラピーを含む運動イメージの介入は、上肢麻痺のアプローチに対して補助的な役割として効果があると報告している。具体的には、アプローチの最初やリハビリ時間外の自主練習に実施するのが推奨されており、実施時間が長いほど有意な効果があると報告している。

(2)コクランレビュー 2012年にはコクランによるシステマティックレビュー²が行われた。論文の選定は、論文の種類(RCTかcross-over RCT)、対象者(18歳以上の脳卒中患者)、介入方法(実験群はミラーセラピーを実施した群で対照群は無介入群や従来型の介入を実施した群)、アウトカムを基準にバイアスなどを考慮して行われた。選定の結果を以下の表1に示す。 表1 論文の選定結果

結果としては、上肢運動機能、日常生活活動(Activity of Daily Living: ADL)、疼痛、半側空間無視(Unilateral Space Neglect: USN)に対して有意な効果があったことが報告されている。また上肢運動機能に関しては、ミラーセラピーによる介入後から6カ月のフォローアップ時点において、対照群と比較して優位な効果があったことが報告されている。以下に説明する。

上肢運動機能に関しては、選定した研究の特徴から2つの方法で実施された。1つ目は介入後のアウトカムデータを基準に選定した11編の研究で、ミラーセラピー群が234人、対照群が247人含まれていた。2つ目は介入前後の差のアウトカムデータを基準に選定した10編の研究で、ミラーセラピー群が147人、対照群が136人含まれていた。以上2つの方法を用いて、上肢運動機能に関してミラーセラピー群は他の介入と比較して、統計学的な観点から有意な効果があったことが示されている。

具体的な効果としては、1つ目の分析方法では、標準化平均差における95%信頼性が0pointを跨がなかった研究が11本中5本(全体の標準化平均差が0.61、95%信頼区間が0.22から1.0、P値=0.002)、2つ目の分析方法では、10本中5本となっている(全体の標準化平均差が1.04、95%信頼区間が0.57から1.51、P値<0.0001)。

日常生活活動(Activity of Daily Living: ADL)に関しては、4編の研究で、ミラーセラピー群94人、対照群123人含まれていた。ADLに関して、ミラーセラピー群は他の介入と比較して、有意な効果があったことが示されている。

具体的な効果としては、標準化平均差における95%信頼性が0 pointを跨がなかった研究が4本中1本(標準化平均差が0.33、95%信頼区間が0.05から0.60、P値=0.02)であった。また、ただ個人的な見解ではあるが、サンプルサイズが小さい点と統計学的数値の点から、ミラーセラピーが他の介入と比較してADLに有意な効果を示すものの、その効果は小さいと考えた。

また疼痛、USN、ミラーセラピーによる介入後から6カ月のフォローアップ時点において、有意な効果があったことを示しているが、上記ADLと同様の理由からミラーセラピーが他の介入と比較してADLに有意な効果を示すものの、その効果は小さいと考えた。

ミラーセラピーの併用療法に関するエビデンスについて

2020年にLuoら³によって行われたシステマティックレビューでは、ミラーセラピーの併用療法として、筋電図バイオフィードバック療法(EMGBF)、メッシュグローブ(MG)、鍼灸治療(AT)、EMG-ESの4つを挙げて、効果を検討している。

結果としては10編444人の研究が選定された。FMAをアウトカムとして、ミラーセラピーを単独で実施するよりもミラーセラピーと併用療法を実施したほうが、効果があることを報告している。しかし、全体的にサンプルサイズが小さい点や統計学的数値の点から異質性が強く、それぞれ4つの併用療法の機能向上に関しての比較はできなかったと報告している。

【引用文献】 1)Winstein CJ, et al: guidelines for adult stroke rehabilitation and recovery. A guideline for healthcare professionals from the American Heart Association/ American Stroke Assocciation. Stroke 47: e98-107, 2018 2)Thieme H, et al: Mirror therapy for improving movement after stroke. Cochrane Datebase Syst Rev, 2012 3)Luo Z, et al: Synergistic Effect of Combined Mirror Therapy on Upper Extremity in Patients With Stroke: A Systematic Review and Meta-Analysis. Front Neural 2020

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