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屈筋腱断裂に対する腱の癒合と腱縫合術について

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竹林崇 大阪府立大学 教授

本コラムでは,屈筋腱断裂術後のハンドセラピィを行っていくうえで必要な手術方法と腱癒合について論述していく.

目次

    はじめに

    屈筋腱断裂術後のハンドセラピィを進めていく上で再断裂が4%程度発生している1)という報告がある.そのため再断裂を予防しつつ,いかに効率的に腱滑走を促すかが求められてくる.それには主治医のみではなくセラピスト側も手術方法について理解し,腱の癒合状態を把握した上でハンドセラピィを展開していくことが必要である.本稿では屈筋腱の縫合と腱の癒合メカニズムについて以下に述べる.

    腱断裂治療の歴史

    20世紀初頭までは腱の修復後にその修復部分が癒合することや腱自体が滑走することの重要性はあまり認識されていなかった.20世紀初めにはLeo Mayorはベルリン大学のBiesalskiと共に腱移植術を多く行い,論文を執筆している.それから1932年頃となるとMeasonにより腱が治癒するのは主としてextrinsic healingによるものと主張している.

    extrinsic healingとは損傷した腱の腱細胞が作り出す腱線維だけでは腱癒合は不十分であり,腱の周囲から結合組織が侵入することで腱は癒合するという考え方である.そのため術後のハンドセラピィでは固定法が主となる.しかし,1960年にLindsayが腱は血行さえ良ければintrinsic healingを主張し,外部からの結合組織がなくても腱に含まれる腱細胞が作り出す膠原線維によって腱断裂部は十分に癒合すると発表した.そのため術後の早期運動療法が推奨され始めてきた. 現在も手術の方法にもよるがinstric healingの考え方が主流となっており,術後のハンドセラピィも早期からの運動療法(早期運動療法)が主流となりつつある.

    しかし,早期からの運動療法を行ったとしても腱損傷部は周囲組織とある程度の癒着が不可避である.これをone would one scar conceptといい,癒着を想定した介入が求められる.Gelberman2)らは屈筋腱の修復に欠かせない要素は牽引張力に耐えうる線維性瘢痕が縫合部に形成されるとともに,縫合部の活動性が獲得されることとしており,これからも十分な縫合が得られていれば早期からの運動療法が必要と考えられている.


    extrinsic healing
    腱は自己治癒能力が不十分であり,腱周囲組織から結合組織が侵入することで腱は癒合する.


    instric healing
    腱には自己治癒能力があり,腱外部から結合組織が侵入しなくても腱に含まれる腱細胞が作り出す膠原組織によって腱縫合部は治癒する.
    図1.腱癒合メカニズムの変遷3)

    腱の治癒過程

    術後の具体的なハンドセラピィは段階的に変更・追加される.その為には腱の癒合状態を把握しておくことが重要である.腱の治癒過程を表1に示す.

    表1 腱の治癒過程4)5)

    屈筋腱断裂に対する腱縫合術

    腱損傷術後のハンドセラピィを行っていく上で前述した通り,腱の治癒過程を把握しておくとともに手術にて縫合された部位のtensile strengthについて把握した上で進めていく必要がある.

    tensile strengthとは縫合術後に縫合部が離解する方向に働く外力に耐えうる強度のことである.縫合術後5日~1週の間にtensile strengthは低下する6)とされており,tensile strengthの経時的変化にも理解しておく必要がある(図2).

    続いて屈筋腱断裂に対する腱縫合術について述べていく.近年,屈筋腱縫合術には様々な方法が存在する(図3).主な種類としては端々縫合に加え,編み込み縫合(interlacing suture),pull out wire法等がある. 端々縫合で用いられるstandとは腱内に入る糸の本数であり,数字は大きい程縫合強度が高いとされているが,腱内に多くの糸が入ることで血流が阻害される可能性があり,腱の血行障害により,腱癒合が遅延する可能性もあるため留意が必要である.

    図2 縫合方法の違いによるtensile strengthの経時的変化6)

    1)端々縫合 A:2-strand           B:4-strand

    C:6-strand                 2)編み込み縫合

    腱移行術や腱移植術等それぞれの腱の太さが異なる際に用いられる.縫合強度は強い.

    3)pull out wire法

    a,d:末節骨に骨孔を作成.深指屈筋腱の断端を末節骨へ固定する.
    図3 様々な腱縫合術7)8)

    【共著】
    中島 薫平(大手町リハビリテーション病院 リハビリテーション科)

    【参考・引用文献】
    1)高柳誠等:我が国における屈筋腱修復の現状.日本手外科学会誌:1992
    2) 日本ハンドセラピィ学会編:ハンドセラピィ6 手指屈筋腱損傷Ⅰ.メディカルプレス:7-45
    3)Gelberman RH,Manske PR et al:Flexor tendon repair.J orthop Res,4:119-128,1986
    4)齋藤慶一郎:リハ実践テクニック ハンドセラピィ.メディカルビュー:116-154
    5)日本ハンドセラピィ学会編:2019年度 基礎研修会「入門セミナー」テキスト:69-86
    6)薄井正道,北川博之:Greenの手の外科 第4版.診断と治療社:2027-2028,2003
    7)草野望ほか:深部組織損傷の治療 腱損傷.手の外科診療ハンドブック:南江堂,100-122,2004
    8)加藤博之:手指腱損傷の治療 up to date.関節外科 基礎と臨床:vol.29,No.8,2010

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